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移民の議論になると、右派の側でも左派の側でも、たくさんの不正確で誤解に基づいた主張が飛び交う。この記事では、実証研究が実際に何を示しているのかを紹介しよう。 移民は2016年の最重要テーマだったが、2017年も重要なテーマであり続けるだろう。だが移民というのは、議論が加熱していると同時にきちんと理解されていないテーマでもある。いわゆるヨーロッパの「難民危機」、移民でパンパンに詰まったボートが地中海岸に到来するというよくあるイメージは、移民はコントロール不可能な脅威であり、大量の移民流入を制限するにはラディカルな政策が必要だ、という印象を与える。大量移民の恐怖は、ヨーロッパ中で極右のナショナリスト政党の台頭を促し、アメリカ大統領選ではドナルド・トランプの勝利に貢献した。 厳しい移民政策を求める声が上がっているのと同時に、別の意見も、やや声は小さいが出てきている。財界、人権団体や宗教組織、左派
Screen cap from a video by Noah Smith, Yoyogi Park, 2023 そして,キミの国もきっとそうするだろう理由 日本論に関するノアの第一法則「アメリカでなにかの論議がしばらく続くと,そのうち誰かが自説の論拠に日本を持ち出してくる」 日本論に関するノアの第二法則「そういう論拠の8割は間違っている」 どちらの法則も,高技能移民の受け入れをめぐる最近の論戦で大いに発動してる.テック系右派は,(正しく)こう指摘した――「技能のある移民の流入は,アメリカがハイテク産業で競争優位を維持するのに欠かせない.」 他方,移民排斥論をとる右派のなかには,こんな主張を試みる人たちもいた――「インドからの移民流入を禁止してもアメリカはいまと変わらずうまくやっていける.STEM系従業員の訓練にもっとリソースを振り向ければいい.」 これが馬鹿げた言い分なのが明らかになると
ヨーロッパ時間月曜朝4時、我々はアメリカの集団的脳出血としか言いようのない、決して夢などではない、破壊的な金融的帰結を目撃した。 はっきりさせておきたいのは、これはマクロ経済のファンダメンタルズや外的ショックによって引き起こされた危機などではないということだ。人為的な災害である。そして張本人はドナルド・J・トランプである。 アメリカ時間日曜夜、トランプは「株価の下落は望まないが、薬を飲まなければならない時もある」と宣言し、燃え盛る炎にガソリンを注ぎ込んだ。つまり、トランプは、経済を破壊する貿易戦争政策に頑なにしがみついている。 市場の反応は、即座かつ苛烈なものだった。 アジアの株式市場は完全なメルトダウンモードに突入し、日本市場は一夜にして8%下落し、香港株は10%急落した。欧米市場が今日開けば、世界的な売り込みの発生を確実に見ることができるだろう。 しかし、これはもはや株式市場だけの問題
トランプ政権は現在、DEI(Diversity, Equity, and Inclusion: 多様性、公平性、包摂)プログラムを連邦政府機構から追い出そうとしている。これを受け、DEIとは実のところなんであるか(あったか)を巡って、大きな混乱が存在することが明らかとなった。こうした混乱は、DEIの提唱者たちが自身の主張を、1960年代の公民権運動を突き動かした思想やアイデアの直接の延長線上にあると論じがちなために生じている部分がある。実際には、DEIの主張の多くは公民権運動のそれよりはるかに論争的だ。目下生じている本格的な攻撃に抵抗できる望みがあるとすれば、より擁護しやすい言説体系の構築を視野に入れつつ、DEIの主張を再検討することから始めるべきだろう。 大規模な官僚制組織で働いている人の多くと同様、私も過去十年、いくつかの多様性セミナーや勉強会に出席する機会があった。さらに、子どもの高
ドナルド・トランプ大統領は、「解放の日」と銘打ち、アメリカの輸出に対する貿易相手国の関税、非関税障壁、通貨障壁を相殺するめに慎重に調整されたとする輸入関税の導入を宣言した。しかし米国通商代表部(USTR)の公表した計算の詳細によると、この関税の実際の効果は、アメリカに最大の利益をもたらす貿易分野を最も的確に縮小することになるだろうことを示している。関税による貿易縮小の結果、アメリカの消費者と企業は直撃を被るだろう。株式市場が急落するのも当然だ。 この関税計画は、そもそも国家の貿易の根源的な仕組みについて基礎的な誤解を示している。国家(アメリカ)は貿易を行うことで、一部の貿易相手国との間に貿易赤字(2国間赤字)を計上し、他の国との間で貿易黒字(2国間黒字)を計上することになる。この仕組みは、比較優位の作用を反映したものである。例えば、アメリカはアルミニウムを最も効率的に生産できる国からアルミ
今週はメディアに登場する機会が2回ほどあった。1つ目の記事はポリシー・オプション誌に寄稿した記事で、〔カナダでの〕選挙改革に反対するものだ。2つ目はTVO(TVオンタリオ)の「アジェンダ(The Agenda)」という番組でのドナルド・トランプに関するパネル・ディスカッションだ。実は両者は繋がっているのだが、テレビ番組ではそのことを説明するのに十分な時間がなかった。というわけで、この記事で説明しよう。 まず選挙改革について。私が選挙改革に関する議論で常に指摘しようと努めているのは、次のような論点だ(理解が難しく誤解は避けられないのだが)。「民主的」と広く認められるような投票制度はいくつかあり、その全てが長所と短所を持っているが、他の候補と比べ本質的により民主的であり公正である投票制度などというものは存在しない。研究者のほとんどが、種々の投票制度のメリットに関する議論になると、非常にプラグマ
あなたは特定の道徳的価値にコミットしており、その価値に資するような特定の政策が実現してほしいと考えているとしよう。さらに、その道徳的価値には異論を持つ人もいるため、そうした政策が実現すれば反発が生じるとする。最後に、そうした政策を実現するには様々なやり方があり、自身の価値観に照らせばそれらの手段に対して良し悪しをつけられるが、自身のコミットする価値に資する手段ほど、反対派からのバックラッシュを生む可能性が高く、そのため政策が実行されなくなる可能性が高まる、としよう。ここで興味深い問題は、そうした政策目的を達成する上で、どの程度の妥協をする心構えを持っておくべきか、である。純粋に自分が最良と考えるやり方を貫くべきだろうか? 自身の立場を穏健化させて、バックラッシュのリスクを避けるべきだろうか? これは全く思弁的な問題というわけでもない。多くの人が気づいているように、アメリカのリベラルや進歩派
中華帝国はメリトクラシー(実力主義)だった。これは、長年語られてきた物語であり、何世代にもわたって中国という国家の理解を形作ってきた。中国では、千年以上にわたって、官吏を目指す者は、過酷な何段階もの試験(科挙)を受け、成績上位者は王朝役人の地位を手に入れた。生まれによって人の将来が決まっていた世界では、この中華帝国のシステムは、革命的で近代的に見えた。血統ではなく、才能によって統治が行われていたからだ。 これは深い示唆を持っていた。ヨーロッパの君主は貴族家系や議会と争うことが多かったが、中華帝国では、家柄ではなく教育によって選別された階級――専門的な官僚階級に権力が集中していた。このシステムによって、中国は世襲エリートや、代議機関を必要とせずに、強力で中央集権的な国家を築くことができたと学者らは論じてきた。 この思想は、中国を超えて広く共鳴された。ヴォルテールのような啓蒙思想家は、中国のメ
大学は新聞の衰退から何か教訓を学べるだろうか? 最初に答えを言ってしまうと、学ぶべき重要な教訓があると私は考えている。それは、研究大学の基本的なビジネスモデルが、伝統的な新聞のビジネスモデルと似通っているからだ。どちらのビジネスモデルも、公共財と私的財の2つの財を集めて、「抱き合わせ(bundle)」にして売ることで成り立っている。このビジネスモデルは、消費者が一方〔公共財の方〕を買わずに他方〔私的財の方〕を得る方法を見つけたとき、終わりを迎える。インターネットは新聞の各「欄」を分解することで、伝統的な新聞を殺した。大学にとって問題は、「抱き合わせ」をこれまで通り維持できるのか、それとも2つの財は繋がりを解かれる運命にあるのか、である。 これがどういうことかを説明してみたい。ある種の「財」は便益が極度に分散しており、消費者に料金を支払わせるのが難しい。天気予報が良い例だ。正確な天気予報を行
近代史の大半において、テクノロジーの進歩は労働負担を軽減すると期待されてきた。ケインズ(1930)は、生産性の向上によって2030年までに週15時間働くだけでよくなるだろうと予測した。人口知能(AI)が職場に統合されていく渦中、初期の証拠からは逆説(パラドックス)が示されている。AIを備えるようになった労働者の多くは、仕事量を減らしておらず、かつてないほど忙しくなっている。AIによる自動化と業務委託によって、労働者は以前と同じタスクを効率的にこなせるようになった一方で、労働時間は長くなり、社交や余暇に費やす時間を減らす可能性が高くなっている。 2022年のChatGPTの登場に象徴されるAIの急速な普及は、雇用への影響についての懸念を再燃させた。AIはどのように一部の職務を代行するようになるのか、あるいは別の職務を増やしているのか――つまりは雇用の外延的マージン(雇用規模の変化)について多
19世紀後半、アメリカの経済学者ヘンリー・ジョージの思想は英語圏で広く支持を集めていた。彼の代表作『進歩と貧困』は、経済における土地の重要性を分析し、「地価(land value)」に対する最大限の課税を行うことを提唱した。この書籍は数百万部を売り上げ、その時代におけるベストセラーの一つとなった。 ジョージの考えが広まる一方で、大西洋を挟んだイギリスでは、富裕な地主層が政治を支配し、主に保守党を支持していた。これに対抗する形で、自由党やアイルランドの民族主義者は、借地人の抗議運動を政治的な支持基盤として活用し、土地課税への支持を獲得していった。 ジョージの主張は、エドワード朝時代の左派にとっては最大の好機であった。というのも、新規のインフラ整備により人々が都市中心部を離れて移動するようになり、地方自治体は法的義務の増大による予算の負担増加による危機に直面していた。従来の固定資産税(prop
たくさんの人がジョージ主義(ジョージズム)に関心を持っているようで、私としては大変喜ばしい。知らない人のために言っておくと、ジョージ主義というのは19世紀のアメリカの経済学者、ヘンリー・ジョージの思想に基づく経済哲学だ。彼は『進歩と貧困』“Progress and Poverty”という本を著しており、その基本的なアイデアはこうだ。人類の生み出す富が増えるほど、地価やレントが増大することで土地所有者がその富を吸い取ってしまい、たくさんの人が貧困状態に置かれたままとなる。この問題に対してジョージが提示する解決策は、現在私たちが「LVT(land value tax:土地課税)」と呼ぶものだ。これは、土地の価値それ自体に課税し、土地の上に人々が築く有益なもの(建物や工場など)には課税しない、というものである。 ラーズ・ドーセット(Lars Doucet)がスコット・アレクサンダー(Scott
現スタンフォード大学教授のフランシス・フクヤマは、国家権力の構築過程やその利用と濫用を論じてきた研究者として、最も鋭い議論を行っている人物の1人である。これは特に彼の著書、『政治の起源』および『政治の衰退』によく表れている。今年〔2023年〕の初め、フクヤマはアメリカ行政学会のドナルド・ストーン講義(Donald Stone lecture)を行い、その原稿がAsia Pacific Journal of Public Administrationに掲載されている。ジャーナルのエディターであるジェームズ・ペリー教授、およびフクヤマの許可に基づき、この講義の抜粋を以下に掲載する [1]訳注:元の原稿を確認したところ、省略されているのは主に「官僚の行き過ぎ(Bureaucratic … Continue reading 。講演のタイトルは「ディープ・ステートを擁護する(In Defense o
テクノ楽観主義者を自負しているくせに,「現代世界のいろんな問題のけっこうな割合が,スマホに人類が適応できないせいで生じている」と考えてるなんて,ちょっと皮肉なことではある.スマホが鬱や政治的騒動を引き起こしてるという話は,これまでにたくさんしてきた〔日本語記事〕.さて,豊かな国々で進んでいる認知スキル低下が,不快なまでにスマホ普及と並行していることを示すデータを,ジョン・バーン=マードックがまとめている.下記のグラフは,アメリカで認知スキル低下が2012年頃から始まったのを示している: 「推理・問題解決テストの成績は低下中」(高所得諸国における,さまざまな領域での評価スコアの平均.ティーンエイジャーと成人では,使用尺度が異なる)/ Source: John Burn-Murdoch そして,こちらのグラフからは,認知スキル低下が世界規模の現象らしいことがうかがえる: 「情報を処理するのに困
「暴君たる封建制という概念は完全に廃位を宣言されるべきであり、中世史家への影響力も最終的には終わらせねばならない」(エリザベス・ブラウン 1974年) 歴史・政治・経済学(Historical Political Economy:HPE)の目標は、社会科学者と歴史学者の間に繋がりを築くことだ。しかし、この称賛に値する目標は、実際には非常な困難さを伴っている。学際的〔学問分野をまたいだ〕研究の困難さは増していっており、学問の専門家が進む中、学際性は価値を喪失していっている。また、一般的な経済学や軽量社会科学の新しい技術を習得するために必要な集中的なメソッドトレーニングは、他分野の読書や訓練を妨げてしまう。 お気に入りの歴史・政治・経済学の論文の一つに、リサ・ブレイデスとエリック・チェイニーによる2013年にAmerican Political Science Reviewに掲載された『封建制
私は長い間リバタリアン「ムーブメント」を追ってきたが、今やリバタリアニズムが(少なくとも流入者の点で)ほとんど空洞化してしまったと考えるようになった。一部の人々はロン・ポール主義やオルタナ右翼の方向に向かい、また別の、よりインテリな人々は同じ場所に留まって活動しているが、新しい支持者を惹きつけられていない。1つの理由は、旧式のリバタリアニズムでは多くの大問題(特に気候変動)が解決できない、あるいは首尾よく対処することすらできないと思われるからだ。もう1つの理由は、賢い人々はインターネットにいるが、インターネットは、少なくとも賢く好奇心旺盛な人々にとって、総合的で折衷的な見解を促すように働くだろうからだ。1970年代の大衆文化と違って、インターネットは「大文字のリバタリアニズム」を広げていく傾向にない。そしてなにより、狭い意味でのリバタリアン的見解からの流出は深刻だ。そのほとんどは、教育を受
そして,実際に懸念すべきことはこういうことじゃないか 第二次ドナルド・トランプ政権の混沌がアメリカに到来している.そのなかでも,政府効率化省こと DOGE の混沌は他に比肩するものがない.トランプは,既存の政府機関のデジタルサービス局のミッションをとてつもなく広く解釈したうえで転用し,管理権をイーロン・マスクに委ねた.トランプ政権の承認を得て,DOGE はアメリカ連邦政府のありとあらゆる部門を調査して,とりやめるべき支払いや,停止すべきプログラム,解雇・休職させるべき職員を捜し回っている. この2週間にDOGE がとった動きはあまりに迅速で,しかも隠し立てしつつ進められている.そのため,いったいなにが進行中なのか誰もいまひとつつかめていないように思える.全体像は混沌の霧に包まれていて,「これは違法だ」「いや違う」といった違法性をめぐる告発と反論が飛び交っている.そうしたことを全部追いかける
Last Week Tonight〔ジョン・オリバーが司会を務めるアメリカの諷刺系ニュース番組〕は政策の解説が非常に上手い。昨年、同番組はスケジュールF(公務員の政治化計画)を深く掘り下げていた。数週間前、私はこの番組のプロデューサーたちと、トランプによる政府への攻撃に関して議論したので、その回のエピソードが配信されるのを見るのを楽しみにしていた。このエピソードでは、私がこれまで書いてきた中核的な問題のいくつかが、簡潔かつ誰にでも分かるように説明されている。喜んでシェアしたい。 Trump 2.0: Last Week Tonight with John Oliver (HBO) – Youtube そういうわけで、私がJournal of Policy Analysis and Managementに載せた論説をシェアするのも言い訳が立つだろう(この記事で簡単にまとめている)。 トランプ
昨日(3月17日)、テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州選出)は、イーロン・マスクとのポッドキャスト対談の切り抜きをSNSでシェアした。クルーズはこれを「完全なる爆弾発言」と表現した。この切り抜き動画が瞬く間に拡散したのは、マスクが自ら率いる「愉快な潜入チーム」(DOGE=政府効率化省)が驚くべき発見をしたと主張したからだ。それは、連邦政府には「マジック・マネー・コンピューター(マネーを生み出す魔法のコンピューター)」が存在する、というものだった。正確には14台存在している。 マスク曰く、これらの「マジック・マネー・コンピューター」は「まさに何もないところからマネーを生み出すことができる」という。DOGEのボスは本気で驚愕しているようだった。「政府はただ支払い手段を発行するだけだ。」「何もないところからマネーを送っているんだ」と。 さあ、「帽子をつかんで真珠を握りしめたまえ(心の準
(日経BPより3月21日刊行) 新著『ウィーブが日本を救う』刊行を控えて、著者のノア・スミス氏からのメッセージを掲載します。 日本のみなさん、こんにちは! みなさんに本書を楽しんでいただけたら幸いです。さらに言えば、日本経済をよりよくしようと尽力しているすべての人々にとって、本書がささやかなかたちで役立ってくれることを願っています。 かつて日本に数年暮らし、いまも頻繁に日本を訪れている人物として、日本という国にもその社会にもたくさんの強みがあるのを知っています――安全で、清潔で、愉快で、便利で、他の多くの国々よりもはるかに安定しています。世界中の人たちが日本を愛好しているのには、もっともな理由があります。ただ、日本では、低成長・低生産性・低賃金といった経済面の問題が長らく続いています。そのため、日本で働く人々や日本に暮らす家庭には、重荷がのしかかり続けています。私としては、心から願わずにい
最近、Blueskyでマーク・キューバン〔アメリカの実業家〕が次のような質問を投稿していた。 マーク・キューバン:これは仮定の質問だけど、みんながどう考えているか気になる。DOGEが、連邦プログラムで節約できた総額の半分を適格受給者への給付の増額に回すという前提で動くとしたら、詳細はどんな感じになるだろう? 余談だが、これはBlueskyの成熟の良い面だ。有名な人物が、賢い人からの筋の通った回答を求めて、真摯な質問をしているからだ。マスクに買収される前のTwitterが素晴らしかったのはこういうところである。 以下は、キューバンの質問に対する私からの回答だ。この記事では、連邦政府の職員や支出の構成に関する、実に基本的な事実のいくつかにも触れる。こうした事実を考慮すれば、次のことが示唆される。(a) DOGEが約束しているような規模の政府の縮小は実現しないだろう、そして、(b) 節約されたお
Vaiz Ha, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons こんな男を侮ったら我が身を危うくしてしまう もっと長文の記事を書いてて,かれこれ2日もかかってる.そこで,合間に別の話をしよう.このところ見かけたバカげた発言のひとつに,こんなのがあった: セス・エイブラムソン: イーロン・マスクの伝記作家として言うと,彼の IQ は 100から 110 の間だと見ている.もっと IQ が高いという証拠は,彼の半生にはまったく見つからない. 「数字の打ち間違いかな」と思う人がいたらいけないので,繰り返しておきたい. マスクの半生には,IQ110 以上を示す証拠はゼロだ. もちろん,この発言はまちがってる.伝記作家のウォルター・アイザクソンによれば,イーロンは1980年代に二度目の SAT 受験で 1,400点をとってる.SAT スコアは IQ と高い相関を示す.見つかるかぎ
ぼくにとってどんな意義があって,どうしてぼくはこれを支持してるのか By Cory Doctorow from Beautiful Downtown Burbank, USA – The Sphere as Mars, view from my hotel room at Harrah’s, Las Vegas, Nevada, USA, CC BY-SA 2.0, 「いやはや,とんだ大間違いだ!門を開けろ!」 ――ミュンヒハウゼン男爵 今週のいろんなネタをまとめたときに,マーク・アンドリーセンの「テクノ楽観主義マニフェスト」に賛成の意を表しておいた.2つほど意見がちがう点も書き添えたけれど,全体として,技術発展の加速を支持する主張をこういう風に妥協なしにぶっぱなすことこそ,陰気な2010年代の停滞した空気から脱出するのに必要だ. ただ,マークのマニフェストでは,ぼくがテクノ楽観主義につい
ノア・スミス「アメリカは指導者たちによって売り払われようとしている:メッテルニヒ=リンドバーグか,逆キッシンジャーか」(2025年2月21日) 「中国・ロシアと右派大同盟を結集できる」とトランプとイーロンが思ってるなら,その先に待ってるのはまた別の厄介ごとだ. By Jan Jacobsen, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons ちょっと想像してみよう.中国・ロシア連合に対してアメリカが大規模戦争に負けたら,どうなるだろう.勝利した中露連合は,降伏条件として,いったいアメリカにどんなことを強制するだろう? ぼくには確かなことはわからないけれど,第一次世界大戦の講和条件から考えてみると,アメリカ側が譲歩を強いられる項目は,こんな具合になるかもしれない: 撤退:中国/ロシアの覇権に抵抗を試みている国々への支援を一方的に取りやめるのをアメリカは強いられるだろう
Photo by Indian Ministry of Defence, via Wikimedia Commons (喫緊の内容を加えて再掲) 再掲の前置き 1994年,ウクライナは核兵器を放棄した.アメリカとロシアがウクライナの国境と主権を尊重するという約束との引き換えだった. 2022年に,ロシアはその合意をたがえて,不当にウクライナ国境に侵攻して領土の一部を要求した.2025年に,アメリカ大統領ドナルド・トランプはロシア首脳部と会談を行った.報道によれば,ウクライナが戦争を始めたと虚偽にもとづいて同国を非難し,ロシアによるウクライナ領土の征服を容認する「和平合意」を提案したという. これを,北朝鮮の経験と対比してみよう.2006年に,北朝鮮は初の核兵器実験を行った.いま,同国は約50の核兵器を保有していると見られている.北朝鮮は貧困に喘ぎ,敵対的な大国たちと信用しがたい同盟国たちに
これまで一貫して「混沌」という単語を使っていま第二次トランプ政権がやっていることを言い表してきた.混沌こそ彼らがやっていることなんだと,じょじょにアメリカ人も気づきはじめている: ハリー・エンテン(CNNのホストで政治分野のデータ分析ジャーナリスト): 「アメリカ人はこれを見て,ドナルド・トランプは『サウスパーク』のバターズみたいな存在だと考えています.トランプは「プロフェッサー・カオス」というわけです」 アメリカ人による Google 検索で「トランプ」と「混沌」の検索件数が記録的な水準に達している.56% が「トランプは性急すぎる」と回答している.アメリカ人は,アメフトコーチのヴィンス・ロンバルディよろしく,「いったいなにがどうなってやがる?」と言っている. いま,ネイト・シルバーはいろんな世論調査を集約してトランプの支持率を計測している.それによると,支持率は着実に下がってきている:
昔から「良いポピュラー経済学本のリストを教えてよ」と求められることがある。方程式でいっぱいの教科書じゃなくて、素人でも読める本を教えてほしいということだ。これはもっともな質問だが、私は長年答えるのをサボってきた。だが今回こそは答えよう。理由は2つある。 まず、数週間後に日本語での本『ウィーブが日本を救うーー日本大好きエコノミストの経済論』の出版が控えている 。これは日本経済をテーマにした本だ(日本語版に続いて英語版も出る予定)。 それと、現在私は英語での最初の単著に取り掛かっている。これはマクロ経済学がテーマになりそうだ。そういうわけで、既に出ているポピュラー経済学本を見てみて、どうすれば自分がそこに付加価値を加えられるか考えた方がいいと思ったのだ。 もう1つの理由は、サム・エンライト(Sam Enright)の面白い発言を見かけたからだ。 思うに、「アンチ・リーディング」リストの方が価値
(これは,日本に関する連続記事の第4弾だ.第1弾,第2弾,第3弾は,日本の経済問題を取り上げた.今回の記事では,趣向を変えて日本の文化的な勝利について語ろう.) 日本の創造力が世界を変えた2つの物語 90年代以降の日本の物語を語るなら,基本的な筋はこうなる.「経済は弱いけれど,文化面での影響力は強い.」 バブル崩壊から十年後,日本は富の追求から方向転換して,創造的な表現に多くの力を振り向けた.その結果は,目を見張るばかりの文化の花ざかりだった.もはや 90年代や00年代ほどの高みにいたることはないかもしれないけれど,日本の文化的な繁栄は今日まで続いている.それに,90年代や00年代序盤はたまたまインターネットの発展期と重なっていたおかげで,日本の文化が爆発的に開花したタイミングは,世界を席巻するのにこのうえなく合っていた. 日本についてまるっきり間違っている奇妙なステレオタイプが根強く残っ
ときおり、最近のアメリカの社会問題についてどう考えているか尋ねられることがある。私は大抵、「その仕事は私には役不足ですよ」と言ってコメントを控える。「結局のところ、アメリカの何が問題か突き止めるのに批判理論の博士号は必要ありませんから」と。実際私は批判理論で博士号をとっているから、アメリカの欠陥を見つけることなど朝飯前だ。あらゆる問題に関して、答えは明白である。多すぎる銃、時代遅れの憲法、勝者総取り方式の選挙、政府への不信、多すぎる拒否権、などなど。 というのは本音ではなく、そういう質問があまりにも多いので、会話から抜け出すための方便として言っているだけである。実際の見解を述べると、アメリカの批判理論は、他のほぼ全ての西洋諸国に比べてはるかに難しい。これはアメリカの社会問題のほぼあらゆるケースで現れるパターンのためだ。アメリカで現れている問題のどれについても、明白な解決策が存在する。だがそ
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