ロシアによるウクライナ侵略が始まってから3年。兵員不足に悩むロシアは北朝鮮が派遣した1万人超の兵士の多くを戦線に投入し、約4千人が死傷したとみられる。彼らは最期に何を思い、異国の地で倒れたのか。ウクライナ当局や元北朝鮮兵の協力を得て、戦場に残された数々の遺留品を分析した。 日本経済新聞はウクライナ特殊作戦軍から戦死した兵士らの手記やメモの写真の一部を入手した。北朝鮮文化に詳しい韓国人翻訳者の協力を得て解読したところ、極限の精神状態や朝鮮労働党への忠誠、かすかな希望が読み取れた。 メモをのこしたのは「ジョン・ギョンホン」と名乗る男性兵士。ウクライナに国境を接するロシアのクルスク州で遺体で見つかった。 祖国に凱旋し「母なる党」への入党を請願する――。自己批判を重ねたメモの最後をこう結んだ。 「党員資格は何よりも大事だ。北朝鮮社会を生き抜くために欠かせない」。取材に応じた元北朝鮮兵のイ・ヒョンス