エスカレーターを利用するとき、立ち止まって利用する人(「止まる派」と呼ぼう)と、エスカレーターが動いている上をさらに歩くという人(「歩く派」と呼ぼう)がいるのである。エスカレーター自体が動いているのだから、その上を歩くということに必然性はないわけだが、エレベーターの中を歩くきまわるのとはまたわけが違うのも事実。階段が動いている上を更に進むことになるから、結果は足し算となる。即ち、目的地により素早く到達することができる。 古くから我が国には、止まる派・歩く派の双方が存在しており、エスカレーター上では、止まる派が進行方向に向かって左側に固まり、空いた右側を歩く派が闊歩するというかたちでもって共存が図られてきた。しかしいま、この関係が揺らいでいるのである。 最初に断っておくと、私は止まる派の人間だ。しかしながら、本稿は、止まる派の主張を強化するために書かれるものではなく、ましてや歩く派を弾劾する
