北の富士さんは日本相撲協会を定年より10年も早く、55歳で退職した。約1カ月半後の1998年春場所からNHK専属解説者に転身。関係者によると、協会を去る前に話が決まっていたのではなく、絶妙な話術を知っていたNHKサイドが退職直後に要請した。以来、体調不良による長期離脱が始まる2023年春場所まで、辛口にユーモア、優しさに粋、昔話に博学と、多面体のような語り口調が老若男女のファンに親しまれた。 その存在を放送席で一層際立たせたのがNHKのアナウンサーだ。北の富士さんと数多くコンビを組み、テレビやラジオの大相撲中継を長く盛り上げてきた看板アナに故人への思慕を聞くと、逸話があふれ出てきた。 ▽藤井アナが明かした上京物語は「1冊の本になる」 元NHKアナの藤井康生さん(68)は1985年春場所から大相撲を実況し、北の富士さんとは25年間で通算300回近くも共演しているという。2人の呼吸は見事なまで
