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改めて確認できた現在地2023年のブロックチェーンに関する振り返りをするとき、多くの記事は「暗号資産の冬」から始まる。続いて、米国における証券取引委員会(SEC)などの規制当局の動向や、日本におけるロビイングの話題、冬にかけて少しばかり上昇した暗号資産と既存通貨との交換レート(これを称して「雪解け」という人もいるようだが、かぎられた人の内輪のやり取りにおける交換レートの変動と、暗号資産やブロックチェーンが失っている信用にどれほどの相関があるかは筆者にはわからない)が、語られていたのではないかと思う。 米国当局だけでなく、国際的な規制組織、たとえば金融安定理事会(FSB)、国際通貨基金(IMF)、証券監督者国際機構(IOSCO)を始めとして、多くの組織が、暗号資産、ブロックチェーン、分散型金融に関する分析と規制のあり方についての詳細な報告書を発行している。これらの報告書は、長年の詳細な研究に
誠実さの不足からの帰結昨年(2021年)の年末の総括の記事で、ブロックチェーンとWebの未来に関する喧騒の中で、「看板と中身を一致させる誠実さ」の必要性について述べた。今年、ブロックチェーンとその応用を取り巻く環境は、熱狂から「冬」と称される状況に大きく変化した。個人的には、この状況を「冬」と呼んでしまうこと自体、やや誠実さに欠けるのではないかと思う。太陽系の動きによって自動的に季節が巡るのと同じように、時間がこの状況を解決してくれるような淡い期待が込められているように感じられるからだ。現在の状況は、昨年の記事で指摘した状況がそのまま発生し、下限のストッパーが見えないままだ。もちろん、その時の暗号資産とフィアット通貨の交換レート(これを価格と呼ぶ人もいるようだし、それを元に時価総額とかTotal Value Locked(TVL)などの誤解を生む用語も出てくるが)が、現実世界の金融引き締め
夢と応用の概念が膨張したブロックチェーンの2021年2021年は、ブロックチェーンに関係する概念や言葉が、改めて注目を集めた年だったのではないだろうか。2008年に公開されたSatoshi Nakamotoによる未査読の論文によってビットコインが誕生し、その後ビットコインの基盤的機構をブロックチェーンという形で抜き出し、さまざまな応用への検討がなされたが、一方でブロックチェーンを利用する必然性を持った応用が見つけられない状況が続いていた。しかし、2021年になって、必ずしも新しい言葉や概念ではないものの、ビットコインが目指している方向である「正しい運用を仮定できるサーバを不要とする」という概念に基づく様々な言葉と、その言葉に関係する技術開発やプロジェクトが登場した。その多くは、プラットフォーマーによる独占からの解放、社会的な活動の民主化、陽が当たらなかった人へのインセンティブづけ、金融包摂
人間の営みのオンライン化COVID-19の感染拡大は我々の生活のあり方を大きく変え、これまで物理的に行なっていた営みを、できうる限りオンライン上で行えるようにするという動きを加速している。投票や選挙も、その有力なユースケースとして話題になっている。一方で、投票や選挙のような、民主主義の根幹であり、一方で悪意や攻撃が常に存在しうるユースケースのセキュリティがどのような性質を満たすべきであり、それがインターネット上のプロトコルだけで実現できるのかについて深く考えないと、社会の営みのどこがオンライン化できるのか、という疑問には答えられれない。そこで、本稿では、投票や選挙というユースケースで、物理的な投票ブースがいかに素晴らしい役割を果たしているのかを紐解きながら、ごく一部のセキュリティ要件においても、これが簡単な問題ではないことを述べる。 日本における電子投票の歴史インターネットを通じた電子投票
(第三者)検証可能な形で情報の非改ざんを保証することブロックチェーン技術の登場により、「情報が改ざんされずに検証できる形で残る」という機能が注目を集めている。しかし、ブロックチェーン技術の文脈でこの機能との関係を考える時に、多くの議論において技術史を踏まえない曖昧な議論が散見され、これが様々な場面で無用なディベートを生み出しているように見られる。そこで、この機能についての歴史を紐解きながら、「いわゆるブロックチェーン」をどう理解したらいいのかを述べたい。 この節のタイトルのように、第三者検証可能な形で情報の非改ざんを保証すること、という要請はもちろん古くから存在する。その多くは、信頼される第三者機関が、ある時点で文書が存在したことを証明するというもので、日本では法務省が所轄する公証制度が存在する[1]。[1]では、公証制度のことを以下のように書いている。 公証制度とは,国民の私的な法律紛争
~ Scaling Bitcoin 2018 Tokyo Kaizenを振り返って ~Scaling Bitcoinとは2018年10月6日と7日、慶應義塾大学の三田キャンパスにおいて、第5回目のScaling Bitcoinワークショップが開催された。この会議は、2015年の9月に第1回がカナダのモントリオールで開かれ、その後、香港、ミラノ、スタンフォードと開催されている。この会議が企画された背景としては当時からBitcoinのスケーラビリティ問題(現実世界の支払い処理の全てを処理する性能を達成できない問題)があり、その解決方法を巡り政治的、技術的対立が存在したことを解決するために、エンジニアとアカデミアが協力して、中立で冷静な議論を行い、その結果をBitcoinの技術仕様に反映することを目的として作られた。当初は、いわゆるブロックサイズの問題が話題の中心ではあったが、エンジニアとアカデ
このブログポストの目的このブログポストは、現在、私がブロックチェーン技術の研究開発について携わっていること、そしてこれから取り組もうとしていることについて、改めてその狙いと立場を明確するために書いたものである。 このブログポストのサマリーは以下の通りである。 -現在のブロックチェーン技術の成熟度に関する私なりの現状認識 -「セキュアでユニバーサルなインフラ」としてのブロックチェーンがなぜ必要か - ISOにおけるブロックチェーンと仮想通貨のセキュリティの標準化、仮想通貨交換取引のセキュリティ向上のために広くブロックチェーン事業者とISOにおけるセキュリティの文書に基づいて中立性を保ちつつ連携していくこと - その最初の例としてコインチェックを100%子会社としてもつマネックスへのアドバイスを行う狙い ブロックチェーン技術にまつわる現状認識これまで多くのブログポスト、Web上の記事、書籍で書
2度のインシデントが示す安全なシステムへの理解不足勤勉な国民性を持ち、システムの運用を行わせれば確実に仕事をこなすことで世界的にも知られている日本において、Mt. Gox事件に続く、2回目の取引所における大きなインシデントが発生した。筆者は、以前より、日経IT Proの連載「ブロックチェーンは本当に世界を変えるのか」(大幅加筆をして書籍『ブロックチェーン技術の未解決問題』として出版)において、ブロックチェーンを用いたシステムにおけるセキュリティ確保の難しさを解説し、スタンフォード大学で行われたブロックチェーンのセキュリティに関するトップの会議であるBlockchain Protocol Analysis and Security Engineering 2017 (BPASE 2017)、IEEE Security & Pricvacy on the Blockhcain(IEEE S&B
中立なインターネットを使って調べる限り、他の国でそのような例の証拠を見つけることはできなかったが、日本には「電話加入権」と呼ばれるものがある。これは、電気通信事業法や、日本電信電話株式会社法に基づいて、電話のサービスを受ける権利のことで、電話を提供する会社との契約に基づくものだ。この権利を持っていれば、電話機を設置する場所を移転したり、利用の休止ができる。また、この権利を相続したり、他人に譲渡することもできる。NTTにおいては、電話回線を新しく申し込むときに「施設設置負担金」を支払うことになっていて、この施設設置負担金を払って契約を結ぶと、電話加入権を手に入れることができた。この電話加入権に相当する権利が発生したのは戦前の1897年で、当時必要な費用は加入登記料の15円だった。これが、時代を経るとともその費用の名称も代わり、一番高い時で8万円、現在は36,000円である。また、ライトプラン
Joi Itoが、ブロックチェーンに対する過剰な投資と技術自体の未熟さのアンバランスに関する洞察とThe DAOに関する懸念をポストした数日後に、The DAOのプログラムコードの脆弱性を利用した大きなインシデントが発生した。これはマーフィーの法則の実例の1つだ。ぼくたちは、現時点では、どんなブロックチェーンプロトコルについても厳密なセキュリティ評価結果を共有しているわけではない。これは、現実のアタックの可能性を否定できないことを意味し、The DAOに起きたケースは「失敗する余地があるなら、失敗する」という法則の1つの実例となった。 ブロックチェーンは暗号処理と通信の組み合わせである暗号プロトコルの一種で、暗号プロトコルをセキュアにしようという努力には長い歴史がある。暗号プロトコルをセキュアにするのは、AES、ECDSA、RSA、そしてSHA-2のような暗号プリミティブ(注:基礎的な暗号
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