今から1977年に打ち上げられ、現在太陽系から遠く離れた約250億キロメートルの彼方を飛行中の宇宙探査船ボイジャー1号には、地球の生命や人類の文化を伝える音声や画像を収録したゴールデンレコードが搭載されている。そのなかには27曲の音楽も含まれているが、SFファンには宇宙の音楽といえばコレ! という『美しき青きドナウ』が入っていない。これは由々しきことだと考えたウィーン市観光局と欧州宇宙機関(ESA)は、ヨハン・シュトラウス2世生誕200周年を機に、雪辱を果たすためのプロジェクトを立ち上げた。

『美しき青きドナウ』は、スタンリー・キューブリック監督のSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』で、シャトルが宇宙ステーションにドッキングするシーンで使われ、クラシック映画ファンには宇宙のテーマ曲と言ってもいい。それがゴールデンレコードに入らなかったのは残念だ、ということで、ウィーン市観光局とESAは、ウィーン交響楽団による『美しき青きドナウ』の生演奏を電波に乗せ、ボイジャー1号に向けて送信するイベント「ワルツ・イントゥ・スペース」(ワルツを宇宙に)を開催することにした。

イベントは5月31日(日本時間6月1日)に開催される。当日、ウィーン交響楽団はオーストリア応用美術館で『美しき青きドナウ』を演奏する。その音声をスペインのセブレロスにあるESA地球局の深宇宙アンテナからボイジャー1号の方向に向けて発射する。信号は、23時間3分後にボイジャー1号に到達する予定だ。

信号はそのままボイジャー1号を通り越してさらに先の宇宙へ飛んで行く。もしかしたら、宇宙人が最初に聴く地球の音楽は、ゴールデンレコードの27曲ではなく『美しき青いドナウ』になるかもしれない。

イベントの様子はESAの特設サイトまたはInstagramで生配信される予定だ。また特設サイトで、『美しき青きドナウ』を構成する1万3743個の音符からひとつを選んで名前とメールアドレスを登録するとイベントに協力できる。登録すると「SpaceNoteアンバサダー」に認定され、メールで証明書が送られてくる。参加は無料。ただし、音符は1万3743個しかないので、すべてが選ばれた時点で終了となる。