サイバートラックが物議を醸す存在だというのは控えめな表現だ。2024年に華々しく登場したこのくさび型のステンレス製フル電動ピックアップは、同社が描いていた高い期待には遠く及んでいない。約200万件の予約があったとされる一方、最近全モデルを対象としたリコール通知により、テスラがこれまでに販売したサイバートラックはわずか4万6000台にとどまることが明らかになった。
テスラは現在、2億ドル(約293億円)相当の「革新的」なサイバートラックの在庫を抱えていると伝えられているが、買い手がつかない理由の1つとして、繰り返されるリコールが挙げられる。最新のリコールでは、走行中に外装パネルが突然外れる問題が指摘されている。また、CEOのイーロン・マスクがドナルド・トランプ大統領政権下で連邦省庁施策と雇用削減を進める「DOGEイニシアチブ」で発言力のある中心人物となっていることへの反発も、テスラのブランドイメージ低下を加速させているとみられている。
販売が落ち込む中、複数の情報筋によれば、テスラのディーラーは中古のサイバートラックを下取りや買い取りで受け付けることを停止しているという。販売店には新車が山積みになり、融資の利息だけが膨らんでいる状態だ。他メーカーのディーラーも同様に下取りを嫌がる傾向があり、下取りを行なう場合でも将来的なリスクを最小化するため、極めて低い査定額しか提示しないという。一部のオーナーはレモン法(欠陥車保護法)を利用し、テスラに買い戻しを求めているという報告もある。
エコノミック・タイムズによれば、サイバートラックの取引価格は過去1年間で55%下落し、直近3カ月だけでも13%下がっているとのことだ。中古車履歴サービスのCarfaxのリストでは、シカゴ地域のディーラーが引き続き8万〜9万ドル(約1180万〜1320万円)前後の価格帯で中古モデルを掲載しており、ベースモデルの最低価格は約7万6000ドル(約1120万円)、ほとんど走行していない「サイバービースト」が14万ドル(約2060万円)となるケースもある。もっとも、実際の交渉後の価格はさらに低くなる可能性が高い。