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「労働市場の未来推計 2035」パネルディスカッション(全2記事)

2025.04.04

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企業と働き手のミスマッチを解消する鍵は「第三のプレイヤー」 労働市場を変える“代理人”の可能性

提供:株式会社パーソル総合研究所

労働力不足が深刻化する日本。問題を解決できるのは、企業と個人の間で橋渡しする「第三のプレイヤー」の存在かもしれません。株式会社パーソル総合研究所の「Think Forward 2025 春」で行われたセッションの後半では、採用のミスマッチを解消する「代理人」の必要性を、「現場のモチベーション」や「ジョブマッチの多様化」など、さまざまな側面から解き明かします。

新しい技術によって生まれる新しいタスク

井上亮太郎氏(以下、井上):おもしろくて聞き入ってしまいましたけどね。パネルディスカッションなので、ここからディスカッションしていきましょうか。

村上さんに、マクロの話から、一企業としての人事やHRに関わる私たちへの示唆までを言及していただいたわけですけども。まずはこの教育訓練や、企業との接続多様化のあたりからのお話を、もう少し掘り下げていきましょうか。

全部を咀嚼できるわけじゃないとは思うけれども、中俣さんは、村上さんの今の話を聞いて、どんな考えを持ちましたか。

中俣良太氏(以下、中俣):いや、もう本当に勉強になるなぁと思って、すごく話に聞き入っていました。

ここにはちょっとない視点かもしれませんけど、やはり教育訓練や人への投資というのは、今後もう避けられないのかなと個人的には思っていて。その背景として、こちらのスライドに示すものも含んでいると思うんですが、もう1つが新しい技術がどんどん台頭してきているところも大きいかなぁと思うんです。


最近の経済学の知見に基づくと、生成AIなどの新しい技術は、既存のタスクを代替したり省力化したりする効果を持っている一方で、また新しいタスクが生まれてくると。それにどう対応していくかが、生産性を今後高める上で重要なんじゃないか、という話ですよね。

なので、既存のタスクから新しいタスクに移り変わる上で、そこにどう対応するか。そのためのスキルをどうやって身につけさせるかという意味でも、やはり人への投資というのは正規・非正規に関係なく身につけていくべきものなのかなと思いました。

労働市場には代理人マーケットが必要

井上:村上さん、どうですか。スキルの話と、あと生産性についても出てきたので、どちらの切り口でもいいんですけども。

村上敬亮氏(以下、村上):うん。スキルの話が出ると、すぐ資格ビジネスが前に出てくるんですけど、あれは間違いですね。

井上:だと思いますね。

村上:エッセンシャルワーカーだったら良いかもしれませんが、例えば、高校生が何を勉強するのかを変えようと思ったら、東大入試に突っ込むのが一番早い。例えば、東大が共テ(大学入学共通テスト)で情報を採用すると言えば、みんな情報の勉強を始めます。

マーケットの原則は、あくまでもマーケットリーダーになる人が、どんな人が欲しいのかという需要を明確に言語化し、メッセージとして出すことが大切です。教育訓練側が作った資格を、「資格を取ってみたけどだからなんだったんだ?」と言うことになりかねないとわかっていても、やはり、一生懸命に資格を取りに来ちゃう人はたくさんいる。

もう少し早い段階でキャリアパスを多様化してもいい。20歳くらいになって、やっと大人になり始めて。あらためて自分の人生ってなんなんだっけと考え始めて、勉強したいと思う頃にはもう教育期間が終わっている。今の日本の社会はそういう設計になっているように感じます。

それはさておき、やはり、こういう人材が求められているんだということを、労働市場がもっと積極的に言語化をすること。それを仲立ちして、届かない人に伝えてくれる代理人マーケットがもっと出てこないと。

正規か非正規か、スポットワークかそうでないかは、柔軟な就業形態の一環として、いろいろなバリエーションがあるということでいい。とにかく、デマンド(需要)をはっきりさせることが、教育訓練の内容に齟齬を起こさないために一番重要なことなんじゃないかと思います。

労働者個人に寄り添うサービスとは

井上:そうですね。私は、ミドルシニアのリスキリング、学び直しの調査をやっていたんですけど、彼らが何を学びだと思っているかというと、資格取得なんです。だから、学び直しということの概念がすごく狭いと。

村上:そうですね。

井上:机にしがみついて、カリカリやる。これが勉強だという認識がすごく強いんですね。でも本来、学びって、もっと広いわけじゃないですか。小林の話にもありましたけど、何が仕事に結びついてくるかなんてますますわからない。だからそこは我々が、本当に捉え直していかなきゃいけない部分だと思ったのが1つありました。

あとはスキルの話がありました。海外のHRトレンドについて、毎年、機関誌を出しているんですけど。

3年ぐらい前に、スキルファースト(個人のスキルに焦点を当てたアプローチ)。当時はスキルベースオーガニゼーションという言葉で紹介させていただきました。今だとスキルファーストって耳にされますよね。

「うちは3万のスキルを管理してるんだよ」と言ってくる外資の企業なんかもありました。ただ、どうやってスキルを切り分けていくのかというと、我々はジョブディスクリプションも書けていない部分があるので。今後いろいろと海外からも話を聞きながらトライしていくところなのかなと思いました。

この話は尽きないと思うので、2つめのところに行ってもいいですか。

村上:はい。

中俣:お願いします。

井上:話の流れにもありましたけど、仮説2の労働者個人に寄り添うサービスについて、もう少しお話を聞かせてもらえたらと思ったんですけど。

村上:いろんな言い方ができるんですが、会社の人事労務管理負担を軽くしましょうということです。デジタル化でもっとできるはずなんです。

労働行政って、実は、企業の労務管理にものすごく依存しているんです。就業の保険の届け出だなんだって、みんな個人がやればいいものも、かなり多くの手続きが雇用者側に依存している。

確かに、アナログの時代は、個人にすべての手続き書類をバラバラに持ってこられたって、労基署だってさばきようがなかった。山のような手続きや紙の書類も含めて、実は全部、企業の労務管理にまとめてもらっているんです。労働行政と企業の人事部はほぼ一体に近い。もちろん社労士のみなさんなどの士業の方の尽力もあってですけれど。

労務管理の書類作業のほとんどは自動化できる

村上:デジタルの時代になると、例えば今、就労証明などの一部の手続きは、個人がマイナポータルを使って出せるようになっています。労務管理でやっている書類作業の多くは、基礎的なデータがあれば自動化できるのではないでしょうか。であれば、手続き代行屋としてのキャリアコンサル・エージェントが、可能なものについては、個人の労務手続きまで面倒見てもよいのではないかと。

大雑把に、人件費は、被雇用者に渡している年収と同じくらいの金額が、保険料も含めていろんなコストとしてかかっていると思います。しかし、そのうちの1割か2割は人事労務コストだと思うので、それをどう置き換えていくかを考えれば良いのではないかと思います。

できれば、そうした労務手続きを、人事部としてアウトソースするんじゃなくて、「そもそも会社として何もしません。勝手にやっておいてください。その手続きに関する責任は私は取りませんよ」と言って会社ではやらず、必要なデータだけを連携・共有して、個人のエージェントにやってもらう。そんな業態ができれば良いなと感じています。

そこで活躍できるのがマイナンバーカード。申請だけでなく、社内で業務をする段階から、マイナンバーカードによる認証を使ってシステム作っていただくと、ほとんどの人事管理情報は他人に漏れることなくきちっと管理ができます。そこから先はシステムの作り方で、労基署に自動で送達することもボタン1つでもできますので、どんどん自動化を進めましょうと。

逆に言うと、そのマーケット自体を人事部のアウトソースカンパニーにするだけではなく、労働者個人に寄り添うサービスが「ついでにそこもやってあげるよ」というかたちにすればいいんじゃないかって。

現場社員のモチベーションが下がる要因

村上:ハイクラスのヘッドハントをしている方々は、1件あたりもらえる手数料が数百万円に及ぶので、相当コストをかけて勉強しておられます。お話を伺っていると、やはり会社の文化の違いや、こういう人はここに向かない、ということをよく知っておられるんですよ。

あの手の情報は、もうちょっとマーケットにオープンにしていいように思います。採用する企業にとっても、まったく同じ業種でも、会社Aと会社Bではカルチャーがまったく違う。それは見る人が見たらわかっている話で、それが広く知られていれば、ミスマッチもずいぶん減るような気がします。

採用の時って、スキル、スキルと言います。確かに半分くらいはスキルを見ますけど、もう半分は、うちの会社に合うかどうか、文化的な整合性を見ているように思います。ところが、現状、その点に関するマーケット・インフォメーションがゼロなんです。会ってみないとわからない。しかも中途採用だと2回ぐらいの面接で一気に勝負をかけにいかなきゃいけない。

しかも、それなりに人手不足の中で取りにいくと、すごい高い単価の契約を打つこともある。それなのに、出来の良い平均的社員の1.5倍の年収で採った人を現場に入れてみたら、既存の社員と比べて出来がめちゃくちゃ悪かったりして、すごく文句を言われることもある。

そもそも、妙な年収でヒトを雇えば、現場でがんばっている社員がディスモチベートされちゃう。なので、それくらい、きちっとした情報のインターミディエイター(つなぎ役となる人)が採用を手伝うマーケットを、真剣に育てにいかねばなりません。

特に今は人手不足ですから、企業に転職する瞬間の給与が、(本来のその)人のスキルよりもものすごく高めに出る傾向がある。なんでこの年収で雇ったんだって思うような人を採ってしまうことがあるのですが、現実には、それだけの年収を提示しないと誰も採れないんですよ。

しかし、もっと安い給料で健気に働いている従来からの社員が、それを運悪く知ってしまって一挙にやる気を失うことがある。やはり、合う・合わないやスキルの評価は、真剣にコストをかけて向き合わなくてはならない。

エントリーレベルは別ですけどね。もう中位クラスになってきたら、プロジェクトのスケールと責任性、複雑性、特性。この4つで全部アビリティ(能力)は定義できますんで。

結局、スキルって仕事の実績なんですよ。あとはその実績をあげてきたプロジェクトを聞くと「だいたいこういう性格の人だな」ということや、どこにはめられるかはわかるんです。このマッチングは正直に言って、プロじゃなきゃ無理です。

多様な労働条件や文化の開示が必要

村上:そういう意味でも、僕はこの代理人市場がリッチに育っていって、人材マッチに社会的にコストをかける。派遣業にうなるように積み上がっている人材産業の売上を、こういうところにシフトさせようよということを構造的にやったらいいんじゃないかなぁって思います。

井上:中俣さんとしてはどうですか。今の話を聞きながらでもいいですけどね。

中俣:そうですね。私が見えている全体像は、たぶん村上さんと比べて小粒だなぁと思って聞いてたんですけど。個人に寄り添うサービスと聞いた時に、思ったことが2つあります。1つは単純な話で、働ける人が働けるような環境が大事だと思いました。

労働力を増加させようという試算の中でも、やはり一定数のパートタイマーやシニアは働くことを希望している割合が高いのかな、というところはデータでも見られていました。そういう人たちが働けるような環境作りが大事だなとシンプルに思ったのが1つ。

もう1つは、最近は価値観が多様化しているところは、みなさんもご存じだと思うんですけど。法規制よりも先に、個人のニーズが先行して生まれたサービスが、ここに挙げていたようなスポットワークやスキマバイトなのかなと思っていて。

私もスポットワークなどの調査をやっていたので、そういった新しいサービスに対して、法規制的な問題はあるのかなと調べたんです。いろいろ課題はあると思うんですが、いかに正しく実力を見極めてそれをどう自社に導入していくかという視点も重要だと思います。ちょっとずれてる話かなぁとは思うんですけど。

井上:はい。ありがとうございます。村上さんの話や中俣さんの話を聞きながら、企業が多様性を求めているという話もありましたが、私はその中で労働条件や文化なども多様であっていいんだと思うんです。

ただ、情報をちゃんと開示できていれば、20代はバリバリ働きたい・稼ぎた人はそういう会社に行きやすくなるわけですし。競争は嫌なんだよな、余裕を持って働きたいんだよなと思ったら、そういう会社に自然と目がいくわけじゃないですか。

そういうかたちで情報をきちんと開示して広めていくことが大事なんだろうなと思って聞いていました。

「簡単な話だよ」副社長が語った本音

井上:では、時間も差し迫ってきましたので、(仮説の)3つめのジョブマッチの多様化について聞いていきたいんですけども。副業なども含めてお考えでしたか?

村上:別のところで使っていた内容をそのまま流用しているので、いろいろなコンテキストが混ざっているのですが。今の流れに即して言うと、まず大原則として、もう1回原点に戻ったほうがいいのではと思っています。

今、正規は新卒、非正規が随時、明確な役割分担ができちゃっているんですけれど。どの企業も求めてる人材が似ている時は、新卒の同時期に「いっせーのせ」で取り合ったほうが合理的なんです。

しかし多様になってきている時に同じタイミングで取り合いをするって効率が悪いんです。採用の時期自体が通年化していくのは、論理的に自然だと思います。デジタル庁もそうなっています。

もちろん新卒も採らないわけにはいかないから、ある時期に一斉に新卒を採るという手続きは必要なんですけど。でもその新卒だって、学卒の瞬間に「さあ就職戦線だ! 始まったぞ」「さあおいで」と。あのタイミングで採ると、簡単に言うと、要領が良くておしゃべり上手な学生のバイアスが取れないんですよね。

そういうタイプも必要なんですが、でも会社で20人を採るとしたら、そういうタイプはせいぜい3〜4人でいい。もっと多いところもあるかもしれませんが。もっといろんなタイプを採らないと組織はダメになるし、その中で誰が役員になっていくかは時代が決めることです。(バイアスに囚われることで)やはり採る側も損していると思います。

それからもう1つ、日本の優れたエンジニアが、海を挟んでお隣の国に3倍以上の給与でとられていく。「これはなんなんですかね」と言った時に、ある会社の副社長が本音を語ってくれたんです。

「村上さん、我々は必要人数の3倍とってるんだから、給与が3分の1になるのは自然な話だ」と。「なんで3倍になるんですか」と聞いたら、「優秀な学生を他の会社にとられたくないからだよ」「あ、そういうことなんですか」って。

さまざまな採用パスを検討すべき

村上:だから、研究室に採用の根を下ろして、良い学生を他社に採らせないために囲い込んでしまう。だとすれば、極論すれば、最初から3分の1の採用数でいいのかもしれない。絞っていいとなればエンジニアの給料を3倍出せる。

だけど、事務職との公平だとかいろいろなことを考えて、その辺でバランスがとれている。こうした調整の結果、市場的には2,500万円の給料を出せる人を、日本企業の場合、構造的に1,000万円以下で雇うことになっちゃっている。しかも、その下りている根っこの先が研究室なんですよ。

最近はようやっとインターンシップベースになってきましたけど、インターンシップも採用活動の長期戦化みたいなもの。文化的に合わない人を排除する効果はあると思いますが、いたずらに就職活動時期を延ばしているという見方もあると思います。

でも複数の企業でインターンできるわけでもないし、コストもかかります。企業もそれだけの選択肢の学生たちを見られているかというと、必ずしもそんなこともない。

例えば、ソーシャルのプロジェクトや地域貢献活動の現場を人事採用の現場だと思えばいいんです。そう考えれば、根を下ろす先は、特定の研究室以外にもたくさんある。

インターンシップも1つだけれど、ソーシャルのプロジェクトやCSR活動をやりながら良い人を探してもいいし、副業状態でやらせておいた上で「よければこっちを正職にしないか?」と引き上げるでもいいし。たぶん、正規社員、コアの社員として雇う上でのパスって、現状以外にもいろいろなものがあるはずなんですよね。

もう1つは、現場に必要なスキルや欲しいジョブをちゃんとディスクリプト(記述)させることです。それに加えて、「この人は会社の文化に合うかな?」のようなところも含めて、見極めに時間がかかるので、もっと着地する先が、研究室と会社の関係以外にもたくさんあるはず? ……それもいいんですよ。実際に共同研究をやったら一番わかるから、確かな方向の1つなんですけど。

介護業界に見る「代理人市場」の実例

村上:文理の別ってそろそろなくなっていくと思います。現在の整理で言うところの文化系の、企業が採りたい人と出会うファーストエンカウンター(最初の出会い)の局面って、もっといろいろなバリエーションがあるんじゃないか。それはたぶん、人事部だけじゃ無理なんだと思います。

人事部だとどうしても、部内の人手で回せる範囲内で、「大学に行って出張講師をやりましょうか? 事業部の人、講師で来てください」と、どうしても人手にかまけられちゃう。もっと会社全体として人の接点を増やして、その中からきっちりと持っている欲しいスキルとカルチャーに合う人を、随時リクルートをかけていく。そうだとするなら、代理人市場(の必要性の話)に帰っていくんですよ。

一番典型的でうまくできているなと思ったのが、自分も経験させていただきました、社会福祉法人の施設のエージェントです。要介護の人を受け入れてくれるホームはどこやねん、それはどういう条件やねんって。これは、自分の親をどこへ入れるのかということで利用したんですけど、成約したホームの側が料金を払うんです。本人からは取らないんですよね。

だから、同じ系列でも、用賀の施設だとこうって全部が頭に入っていて、よくご存じなんです。しかもその人が、「入居候補者を見にいかないか? 今いる病院からそろそろ退院するけど、たぶん良くなるはずだから」って言うと、ちゃんとホームの人が入院中の親のところまで見に来てくれる。それはなぜかというと、ホームにとってもだめな人を採ったら、経営危機に関わる大問題になっちゃうから。真剣にやるんですよね。

採用のためにどれくらいのフィーを払っているのか、正確には知らないことになっていますけれど、やはり大事さがわかっているので……とすると、フリーのエージェントの人たちに成約ベースで払うわけです。

大企業とそれ以外で二極化する「労働力不足」

村上:その人たちは、いろいろなホームの事情を一生懸命に調べて、下手すると、「あそこのセンター長さんは、こういう人だから、ここなら採ってくれるよ」と、そこまでやってくれるんです。なのに本人からは一銭も取らないし、それでも、ちゃんと課業として成立しているという。

たくさんいるわけじゃないんですけどね。でも、こういうマーケットって作れるんだと思うし、なぜこれの普通の人材市場版ができないのか。僕はやはり、ジョブマッチの多様化も含めて、(雇いたい企業と雇われる人とそれをアシストする)第三のプレイヤーを考えないと、なかなかクオリティを上げていくのは難しいんじゃないかなと思います。以上です。

井上:ありがとうございました。1つの深い例え話から、今後の人材市場、ジョブマッチに対するビジネスのあり方まで話が広がりそうでしたけれども。中俣さんにも聞いてみましょうか。中俣さんは、村上さんに寄らなくてもいいんですけども、ジョブマッチの多様化という観点でどういったことをお考えになるか。

中俣:村上さんのお話を聞いて、単純に感想なんですけど。先ほど、人材を余分に採っているという話がありましたが、労働力不足って、大企業とそれ以外で二極化が起きていると思っています。中小・中堅ですごく深刻化していると言われているんです。

人材を獲得できる企業は獲得できて、それ以外の企業はうまく獲得できない。そういった意味でギャップが広がっているのかなと思います。

もう1つは、ジョブマッチに限らずの視点かもしれませんが、ジョブのミスマッチもあると思うんですけど、地域間のミスマッチも重要だと思っています。そのあたりはお二人のほうが詳しいかもしれませんが。

労働力が東京だけにあればいいというシンプルな話ではないですよね。満遍なく正しい労働需要であることが必要で、そこに対して労働供給がマッチできているかが重要かなと思うので。ちょっとジョブマッチからは離れますけど、どこにいても地域の労働力として貢献できる、どこでも働ける環境作りが重要なのかなとも思いました。

労働市場は供給側も需要側も減少している

井上:ありがとうございます。今時計を見たら、もうまとめに入らなきゃいけない時間になっていたんですよ。せっかく村上さんも来られているので、質問の時間を長く取りたいと思います。

最後にまとめとして、お一人ずつ、今後の労働力不足が予見されるこの社会において、こう展望を持って進めていけると良いんじゃないか、とメッセージをいただけたらと思うんですけども。村上さんからいかがですか?

村上:たくさん論点がありすぎてなんとも言いようがないんですが。1つだけあるとすると、「もっと採用にコストをかけよう」。やはり人を簡単に採れると経営者は思いすぎですよね。もっと丁寧に採用しないと。

労働市場は供給側も需要側も両方減っているんですから。実はマッチングコストがかかるのは労働市場だけじゃないんです。人口が増えている時はお客に「バス停で待っていろ」と言えばいいけど、減っている時はオンデマンドで迎えに行かなきゃいけない。

先生の数も生徒の数も増えている時は、「どこか小学校に6年間ちゃんと入れ。そこそこの先生もいるから」って言えたからいいけど(笑)、教師の数も生徒の数も減っている中では、散らばりとばらつきが激しいので、その中で多様な教育とか言っても無理なんですよね。

需給両方が増えている時のマーケットマッチの効率と、両方が減っている時の効率は、ぜんぜん違います。デジタルも使うし、あらゆるもののマーケットにおけるマッチングコストが上がっているということを前提に議論しないといけない。

だけど、今までと同じように採れると思っちゃっているから、「今までと同じパーヘッド(一人当たり)のコストの中で良い人材だけ採ってこい」となってしまう。

叩いたり、引き上げたりしなきゃいけないのは、年収じゃなくて、丁寧に探すということじゃないか。もうちょっと投資してもらって、採用の着地先を広げるために、こういう代理人が要るんじゃないか。僕はそう感じています。

未来を変えるために何ができるか

村上:やはり、経営者がそこにもっと気がついてくれないと。人事に「あれもやれ、これもやれ」と言われたって、需給が両方とも減っていて当たりの確率が悪くなっている時に、「変なやつを採ってきやがって」と文句だけ言われたって、どうしようもないよっていう。

どうやって風を吹かせるかということを、なかなか当事者は経営者に言えないかもしれませんけど、やっていく必要があるんじゃないですかね。そんな話で締めてみました。

井上:ありがとうございます。中俣さんはどうですか?

中俣:私は先ほど講演したので、繰り返しかもしれないですけど、労働力不足が約2倍ぐらい深刻化していくというところで、「本当か?」と驚いた人もいるかもしれません。

私たちの推計から言えることは、このまま今の働き方や制度のままでいくと、ああいった未来になるという話です。今回の話をきっかけにして、みなさんはどう動くべきか。意識も含めて、きっかけになればと願っています。以上です。

井上:ありがとうございます。

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