葬祭司会と葬儀スタッフ教育、終活サポートに取り組むプロ
内野順子
Mybestpro Interview
葬祭司会と葬儀スタッフ教育、終活サポートに取り組むプロ
内野順子
#chapter1
人生最後のステージとなるお葬式。天命を全うした故人を、その人らしい花道で見送ってあげたいと思う家族は多いでしょう。「MCユニット ランコントル」代表の内野順子さんは、年間200~230件の葬儀を20年以上手掛ける葬祭司会のプロ。温かみのある司会進行は、事前に指名が入るほど厚い信頼を集めています。
「かけがえのない方を亡くしたご家族は混乱したり、感情が揺れ動いて敏感になったりするものです。当方はご家族の心情に配慮しながら、お気持ちに寄り添う対応に努めています」
ナレーションを作成する際は、家族に故人の生い立ちや生き方、人柄などを聞き取って反映しています。
「ご家族が落ち着いてお話ができそうな状況であれば、故人さまの生前の様子を詳しくお伺いします。ご参列の皆さまが在りし日の姿をしのべるよう丁寧に作文します」
大事にしているのは、その人らしさ。「破天荒なお父さんだった」「わがままだったよね」といった家族のリアルな声を取り入れることも。
「ありのままの姿を描きつつ、『不器用なりに家族を愛していた』『うそがないあなたのことがみんな大好きだった』と前向きな表現でまとめるようにしています」
ありきたりでない、その人だけのオリジナルは家族に好評。「原稿が欲しい」と要望があった際は清書して贈ることもあります。ある高齢男性の葬儀で司会を務めた2年後に、妻の追悼を託されたこともあるそうです。
「娘さんから『司会はぜひ内野さんに、と母が遺言を残していたんですよ』とお聞きしました。司会者冥利に尽きると深く感じ入りましたね」
#chapter2
日本葬祭コーディネーター協会の認定講師でもある内野さんは、葬儀社の社員教育にも取り組んでいます。
「2カ月に1度のペースで、1年かけて葬祭接遇を教示いたします。実践を重視した指導法『安部メソッド』を用いてアドバイスしますので、効果的にスキルアップを目指すことができます」
高齢化社会を背景に葬儀社が増加傾向にありますが、人材育成が追いついていない現状があると指摘します。
「どの現場も忙しく、惰性で作業しているような場面も見受けられます。お葬式は故人にとってたった一度きりの大切な場。スタッフの何げない所作がクレームとなり、SNSを通じて会社のイメージダウンにつながる恐れもあります」
同メソッドはテキストや座学を使わず、各社の実情に合わせた接遇をレクチャーできるのが特徴だそう。
「例えばお辞儀ですが、一律の角度を求めても、スタッフの年齢や体力によってどこまで体を傾けられるかはまちまちです。バラバラのお辞儀よりも、角度が多少浅くても全員で統一することを目指します」
内野さんは各社の状況に合わせ、真心が伝わる立ち振る舞いを手ほどきします。
「ベテランの社員さんのなかには、この仕事を長くやってきたという自負があるため、『なぜいまさら研修を』と思う方もいらっしゃるかもしれません。葬祭スタッフの役割は、悲しみに暮れるご家族に代わって会葬者をもてなすこと。原点に立ち返り、心構えを再認識することがホスピタリティーの向上につながります」
#chapter3
終活カウンセラーの資格を持ち、中高年者らの終活サポートにも力を入れる内野さん。意外と知られていないのが、家族葬の実態だと言います。
「一般葬に比べてこぢんまりと執り行える利点があり、希望する方が増えていますが、かえって負担が増すケースがあるので注意が必要です」
直前まで現役で働いていた人や、高齢でも仕事を持っていた人、サークル活動などをしていた人は交友関係が広く、結局は自宅に多数の弔問客が訪れるからだそうです。
「家族は心身ともに疲れている中、家の中を掃除したり、お茶菓子や香典返しを用意したり。1年近く弔問客が続いた例もあり、お葬式で弔っていただくのがよい場合もあります」
内野さんは講演や講座を通じて、葬儀の在り方や相続手続きなど、いざというときに慌てないためのポイントを伝授。2022年には著書「また、いつか。葬儀司会者が見た人生・愛・終活」(花乱社)を出版。全国の図書館に収蔵され、読者から感動の声が寄せられているそうです。
「多くの旅立ちに関わる中で見てきた、ご家族やごきょうだい、ご友人による心温まるエピソードをまとめました。お別れをするのは忍びないですが、お葬式は人と人が触れ合い、心を寄せ合うすてきな場であることも広く伝えていきたいです」
就活や葬儀は奥が深く、まだまだ勉強中と語る内野さん。「生きることの尊さや素晴らしさが感じられるよう、一人一人のエンディングを真摯(しんし)にお手伝いしていきます」と結びました。
(取材年月:2025年2月)
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Profile
葬祭司会と葬儀スタッフ教育、終活サポートに取り組むプロ
内野順子プロ
司会業
MCユニット ランコントル
20年間で約5000件の葬祭司会を務め、家族に寄り添った温かみのある司会進行に定評があります。認定講師として葬儀社の社員教育に取り組むほか、終活カウンセラーとして講演や講座にも対応しています。
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