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日本人F1ドライバーはなぜ勝てない? 国別ドライバー輩出数では歴代10位も、いまだ未勝利の理由をあらためて検証する
posted2025/02/21 17:00

1987年のロータス・ホンダを駆る中嶋悟。日本人として初めてF1にフル参戦し、レースでの最高位は4位だった
text by

尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
2月18日、イギリス・ロンドンでF1史上初となる全10チームが一堂に会する開幕イベント「F1 75」が開催された。F1創立75周年を記念してのイベントには約2万人の観衆が詰めかけ、会場には全ドライバーが集結。その中に、今年5年目のシーズンを迎える角田裕毅の姿もあった。
選ばれし20人のF1ドライバーたちの国籍を見ると、最も多いのはイギリスで、その数は4人。イギリスは歴代のF1ドライバーの数でも最多となる161人を送り出しており、そのうち10人がチャンピオンに輝き、21人の勝者を生んでいる。
これに対し、日本人ドライバーは角田を含めて21人がF1にチャレンジしてきた。数だけを見れば国別でトップ10に入る多さで、18人のオーストラリアや16人のオランダ、15人のスペイン、9人のフィンランドを凌ぐ。
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だが、それらの国が勝者のみならずチャンピオンを輩出しているのに対して、日本はチャンピオンどころかいまだ表彰台の頂点にも立っていない。国別のF1ドライバー数トップ20の中で1勝も挙げていないのは日本だけだ。
なぜ、日本人はF1で勝てないのか。これは日本のモータースポーツ関係者の間で長年、論じられてきた難解なテーマだ。
問題点はどこにあるのか
優勝未経験国は日本だけではない。デンマーク、アイルランド、ポルトガル、ロシアも未勝利だ。だが、それらの国に世界的な自動車メーカーはなく、F1ドライバー自体も5人以下にとどまっている。これに対して日本は自動車大国で、ホンダやトヨタが国内外でモータースポーツ活動を行い、ドライバーをサポートしている。
そのため、ほかの国に比べてF1への門戸が広くなっている反面、世界で戦うレベルに達していない段階でF1へステップアップしてしまうことが問題だと指摘する声もある。
あるいは、F1はヨーロッパのスポーツだから日本人は差別を受けていると主張する者もいる。さらには、そもそもこれまでの日本人の中でF1で優勝できるドライバーはいなかったという辛辣な意見すらある。
どの言説にも明らかな瑕疵は見当たらない。ただし、日本人がF1で勝てない理由はほかにあり、それこそが最大の原因だと指摘する者もいる。それは、勝てるマシンに乗るチャンスが与えられなかったというものだ。
日本人として初めてF1にエントリーした鮒子田寛がドライブしたのは、日本のF1コンストラクターであるマキだった。70年代に参戦したドライバーたちが所属したチームはコジマ、ティレル、サーティース、ウイリアムズだが、当時はいずれもトップチームではなかった。