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大相撲PRESSBACK NUMBER
「あの鎧のような筋肉は…」千代の富士が“相撲入門を拒否”した最強中学生時代…元NHK名物アナが語る“伝説の横綱”誕生秘話「親方は“飛行機に乗れる”と」
posted2025/04/04 17:00

1975年5月、19歳の千代の富士
text by

藤井康生Yasuo Fujii
photograph by
KYODO
40年にわたって大相撲中継の実況を担ってきた元NHK・藤井康生アナウンサー。“相撲中継の生き字引”とも評される名物アナが大相撲史をまとめた著書『大相撲中継アナしか語れない 土俵の魅力と秘話』(東京ニュース通信社、2025年3月発行/発売元:講談社)から、全5回に分けて選りすぐりのエピソードを抜粋掲載します。まずは、“筋肉の鎧”をまとったスーパーヒーロー「千代の富士」のストーリーです。【千代の富士編・全2回/後編も公開中 ※朝青龍vs白鵬の名勝負編は後日公開】
」「・『大相撲中継アナしか語れない 土俵の魅力と秘話』(著・藤井康生/東京ニュース通信社)。名勝負から中継の舞台裏まで昭和・平成・令和の大相撲の歴史を詰め込んたファン必読の一冊
NHK大相撲中継の最高視聴率は昭和56(1981)年一月場所の千秋楽です。52.2%、瞬間視聴率は65.3%(いずれもビデオリサーチ調べ)という驚異的な数字でした。そこには千代の富士というスーパーヒーローの出現があります。
前の年、昭和55(1980)年の秋にはプロ野球でも時代が変わろうとしていました。巨人の長嶋茂雄監督が10月に退任、翌11月には王貞治選手が引退と、歴史は大きく動いていました。
噂になっていた“有望な中学生”
千代の富士は昭和30(1955)年6月1日、北海道松前郡福島町で生まれました。小学生の頃から父の漁業を手伝い、船に乗ることで足腰は存分に鍛えられました。運動神経は抜群で、陸上部に所属した中学時代は、とくに短距離と跳躍種目で「数年後にはオリンピック代表候補」とも期待されていました。
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「故郷に秋元貢という有望な中学生がいる」と聞いた福島町出身の九重親方(第41代横綱千代の山)が、貢少年の実家まで勧誘に赴きました。ところが、本人は大相撲に全く興味がなく、両親にも断られてしまいます。九重親方の最後の手段は「飛行機」でした。「飛行機に乗って東京に行ってみよう。相撲はそれから考えればいい」