ペンギンの島にもトランプ政権の関税が 「どこも逃れられない」と豪首相

南極で撮影されたペンギン(資料写真)

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オッティリー・ミッチェル記者、ティファニー・ターンブル記者(シドニー)

ペンギンやアザラシが生息する南極の小さな遠隔地が、トランプ米政権の新しい関税の対象となった。

オーストラリアから南西4000キロ沖に位置する同国領ハード島とマクドナルド諸島は、パースから7日間の船旅でしかたどり着くことができず、ほぼ10年間、人が訪れていない。

ドナルド・トランプ米大統領は2日、アメリカ製品に対する不公平な貿易障壁に対抗するとして、広範な「相互関税」を発表した。

他にも、いくつかのオーストラリア領のほか、ノルウェーのスヴァールバル諸島、英領フォークランド諸島、イギリス領インド洋地域(BIOT)などが、新しい関税の対象となった。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は3日、「これはつまり、地球上のどこだろうと(関税から)逃れられないと示す事例」だと述べた。

オーストラリア本土と同様、ハード島とマクドナルド諸島、ココス(キーリング)諸島、クリスマス島も、10%の関税の対象となった。同じくオーストラリア領で人口2200人のノーフォーク島には、29%の関税が課された。

しかし、ハード島は荒涼として氷に覆われた、完全に無人の島だ。オーストラリア最大で唯一の活火山「ビッグ・ベン」があり、ほとんどが氷河に覆われている。

人間が最後にハード島に足を踏み入れたのは、2016年だと考えられている。この時は、アマチュア無線愛好家グループがオーストラリア政府の許可を得て、この島から放送を行った。

科学研究のために周辺海域を7回訪れたことがある豪タスマニア大学のマイク・コフィン教授は、ハード島からアメリカへの主要な輸出品が果たしてあるだろうかと首をかしげる。

「あそこには何もない」と、コフィン教授はBBCに話した。

コフィン教授の知る限り、マゼランアイナメ(メロ)とコオリカマスを捕獲し輸出しているオーストラリア企業は2社しかない。

しかし、島には独特で壮観な自然が豊かにあふれている。

島の岸壁に大量のペンギンが群れをなしている

画像提供, Richard Arculus

画像説明, この地域には大量のペンギンが生息している

これらの島々は、外来の植物や動物、人間の影響を受けていない希少な生態系の例として、ユネスコ世界遺産に登録されている。

「ペンギンやゾウアザラシ、さまざまな海鳥が大量に生息している」と、島の海底地形を研究するコフィン教授は語る。

遠くから島を観察して砂浜だと思った場所が、実は「おそらく数十万羽のペンギン」だったこともあるという。

「船がそこに行って観察するたびに、ビッグ・ベンの側面から溶岩が流れ落ち、氷を覆い、蒸気を上げている」

船のへさきと島の写真

画像提供, Richard Arculus

画像説明, 遠く離れたハード島とマクドナルド諸島にはほぼ10年間、人間が訪れていない。

ハード島とマクドナルド諸島とアメリカの貿易関係は、明確には把握しにくい。

世界銀行の輸出データによると、これらの島々は過去数年間、アメリカに少量の製品を輸出してきた。

しかし、2022年にはアメリカがこの地域から140万ドル(約2億円)相当の製品を輸入したことになっており、そのほとんどが製品名の記載のない「機械および電気製品」だった。

BBCは、米商務省の国際貿易局とオーストラリア外務・貿易省にコメントを求めている。

世界中の多くの政府と同様、トランプ政権の関税にオーストラリア首脳は困惑している。アルバニージー首相は「全く正当性がない」、「友人の行為ではない」と述べた。