虎党にすれば見どころ満載といえる今季最初の「伝統の一戦」だったはず。開幕投手・村上頌樹がいきなり1失点したものの、危なげなく7回まで巨人打線を抑えた。打っては3番・佐藤輝明から始まる今季の新クリーンアップも安打、打点でそろい踏みだ。

特に大山悠輔は走塁を含め「FA残留」をあらためて虎党から歓迎されるプレーを見せたと思う。そのあたりは阪神担当の記事でじっくり読んでいただきたいところだが、指揮官・藤川球児に鬼気迫るガッツポーズも飛び出す快勝だったことは間違いない。

殊勲者が数多く出たそんな試合で、個人的に「しぶい」と思ったのは坂本誠志郎の存在だった。開幕戦に続いて村上を好リード。3回には3点目の適時打をマークした。2回にも安打を放っており、これで打率3割8分5厘。捕手複数制で打席数の関係はあるけれど現在「阪神でもっとも打っている男」だ。

思い出すのは昨オフ、ある球団行事が行われた席でのこと。こちらがボーッと座っていると坂本が神妙な顔でやってきた。そこで言ったのはこんなことだ。

「阪神に残って頑張ることにしました。またよろしくお願いします」。国内FA権を行使せずに残留を決め、しばらくしてからのことだった。神妙な様子に思わず「こちらこそ」と返したのだが、特に親密なわけでもない当方にきっちりあいさつする律義さ、さすがに幹部候補生といわれるだけのことはある…と思ったのである。

そして当たり前ではあるけれど、複数年契約を結んだからといって慢心しない様子もいい。キャンプ中、球児が栄枝裕貴を宜野座組にしたとき「第3の捕手づくりかな」と坂本に何げなく話した。すると「第3の捕手って、だれが第1の捕手かも分かりませんよ」とニヤリ。緊張感を継続していることを示したものだ。

今回の巨人戦はカード前からそういう意味でも面白いと感じている。巨人のスタメンマスクは甲斐拓也。言うまでもない、昨オフのFA捕手の目玉。坂本が手を上げていたらひょっとしてFA事情もまた変わっていたかもしれないが、甲斐は移籍を選び、坂本は静かに残留した。

その2人の“初対決”となったこの試合。ともに2安打、打点も上げたが、捕手としては巨人打線を2得点に抑えた坂本に軍配が上がったのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 3回表阪神2死満塁、左前適時打を放つ坂本。投手戸郷(撮影・河田真司)
巨人対阪神 3回表阪神2死満塁、左前適時打を放つ坂本。投手戸郷(撮影・河田真司)