【ノーサイドの精神】パリパラリンピックの第6日(2日=日本時間3日未明)に快挙だ。車いすラグビーで初の決勝に臨んだ日本代表は米国代表に48-41で快勝し、金メダルを獲得した。22歳の橋本勝也(日興アセットマネジメント)は今大会チーム最多の79得点と、エースへ成長し、貢献した。「勝利の瞬間、手が震えた。このチームで勝ちきることができてほっとしている」と屈託のない笑みを浮かべた。
福島・三春町出身。先天性の四肢欠損で、「子供の頃は自分の体が恥ずかしくて引きこもりがちだった」。そんな少年を変えたのが車いすラグビー。中2の冬に競技を始め、わずか2年の2018年に代表に初招集された。当時、福島県立田村高1年生だった。スピードと思い切りの良さを武器に代表に定着した。
21年東京大会、日本は16年リオデジャネイロに続く2大会連続の銅メダルだった。橋本は「東京パラリンピックで悔しい思いをして勝ちたいよりも負けたくない気持ちの方が強くなった」と鍛錬を続けた。「世界一の選手になるために何が必要なのか、何をすべきなのか、一つ一つ課題をクリアにしていったことで今の結果があると思う。自分一人の力ではここまでこれなかった」と周囲への感謝を口にした。
橋本にとって、主将の池透暢(44)=日興アセットマネジメント、池崎大輔(46)=三菱商事、島川慎一(49)=バークレイズ証券=の存在も大きい。プレーはもちろん、高校生のときは代表合宿で先輩たちに学校での勉強について相談することもあった。今大会、池と池崎は「二枚看板」として引っ張り、競技歴25年でパラ6大会連続出場の島川は精神的支柱としてチームを鼓舞し続けてきた。
日本は6度目のパラ出場で初の金メダル。思いが結実した瞬間だった。(石井文敏)