「ストライクとボールの見極めができていないと感じる。ボール球を振らされてカウントを悪くし、さらにボール球を打たされる。自分のペースに相手バッテリーを誘えず、逆に相手バッテリーの揺さぶりに翻弄されているように見える。バットに当てればボールは飛んでくれるのだから、もっと狙い球を絞って、打席に入ってほしい」とは阪神OBの言葉です。
どうも同じようなことをこのコラムで書いた覚えがあります。あれは春季キャンプ中の2月18日でした。紅白戦で畠から豪快な右翼越えの本塁打を放った後、対外試合の2試合で6打数4三振。佐藤輝の打撃を見ていた阪神OBは「打撃の始動からインパクトまでに間がない。長くボールを見られていないから打てる確率は上がらない」と指摘しました。昨季までの4シーズン、打率は・238→・264→・263→・268。三振数は173→137→139→133でした。豪快な本塁打を放つ半面で安定感に欠ける、スランプの時期が長い打撃は今年の春季キャンプの段階でも改善していない…という指摘でした。
3月30日の広島3戦目の九回、見逃し三振に倒れた阪神・佐藤輝明こうした状況が3番抜擢で、どのように化学変化するのか、が注目だったはずです。地位やポストは人をつくると言います。藤川監督が3番に抜擢した理由は、きっと森下、大山を背後に据えて、相手バッテリーも佐藤輝と勝負に来るだろう、甘いボールが増えるはず…という読みだったと思います。開幕戦の先制2ランは読み通りの一撃だったはずです。しかし、そこから10打数ノーヒット、7三振はボールを追いかけて、姿勢を崩される悪循環の結末ですね。
ロバート・ルイス・スティーヴンソンが1886年に書いたイギリスの怪奇小説「ジキル博士とハイド氏」は人間の二面性を題材にしています。まさに開幕3試合の佐藤輝は「ジキルとハイド」のような両極端な姿を見せていました。まだシーズンは140試合残っています。とにかく打撃内容を改善して、1打席でも多く、頼れる3番の姿を見せてほしいです。
新3番が躍動すれば、阪神打線の得点能力は飛躍的に向上し、投手陣の負担も軽減されるはずです。また、3番の打撃内容の波が大きいままであるならば、指揮官はどこまで開幕オーダーを我慢できますかね。そこも大きなポイントとして今後、浮上するタイミングが来るかもしれません。
40年前の1985年、吉田阪神はバースを3番に据えて21年ぶりのリーグ優勝、球団創設初の日本一に輝きました。その時の並木打撃コーチはバース3番について「チームで一番いい打者が3番に入るべき」と3番打者最強説を唱えました。佐藤輝への期待感は当時のバースと並ぶほどでしょう。頑張ってもらいたいですね。
■植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。