第12節の東京SG戦で、終了間際の劇的な逆転勝ちに大喜びする神戸の選手たち=3月16日、秩父宮ラグビー場 【ノーサイドの精神】今季のリーグワンがおもしろい。ゲーム内容だけでなく、1部はプレーオフ(PO)に進出できるのが昨季までの上位4チームから6位までに変更となり、6位をめぐる争い、さらに下位2チームが出場する2部との入れ替え戦回避をめぐる争いと最後まで激しい戦いが楽しめそうなのだ。
第13節終了時点(3月30日)での6位争いは横浜と東京SGが勝ち点26、勝利数5で並び、直接対決で勝っている横浜が6位、東京SGが7位。勝ち点は上位2敗(最低0点)、下位2勝(最高10点)で9点差までひっくり返せることを考えると、勝ち点22で8位・相模原と9位・BR東京はもちろん、同20で10位のトヨタも射程圏内。同18で11位の三重も可能性があるかもしれない。
こうしたPO進出をめぐる争いの中、第10節終了時点(3月2日)では7位・東京SGと勝ち点差3の24で6位だった神戸は第11節からの3連勝で勝ち点を37まで伸ばし、5位に浮上。6位以下に11点差以上をつけ、一歩抜け出した感がある。
第10節までの神戸は4勝6敗と黒星が先行。6敗のうち4試合が7点差以内でボーナス点1を獲得しているものの、接戦で勝ち切れないというイメージの方が強かった。
だが、第12節の東京SG戦(同23日)は4点のリードを後半35分に逆転されながら同40分に相手ラインアウトのスチールから鮮やかなパス回しでトライを決め、39-37で逆転サヨナラ勝ち。第13節のBR東京戦(同30日)は続けて2人のシンビン(一時退場)を出し、一時13人となる窮地に追い込まれながらも27-24でしぶとく競り勝った。この2戦とも勝負強さが光った。
そんな神戸の復調を予感させるプレーがあった。
第11節の三重戦(同15日、○47-5)の後半32分、背後に蹴り込まれたボールを自陣5メートル付近でWTB松永貫汰がキャッチ。CTB李承信にパスすると、李は蹴り出すのではなく、クロスに走り込んできたWTBアタアタ・モエアキオラにパス。さらに左サイドを細かくパスをつないでWTBイノケ・ブルアが大きくゲインすると、ここから3つのラックを作り、右、右、左へとすばやく展開。最後は松永が相手防御をかわして約35メートルを走り切り、インゴールに飛び込んだ。
結果的には一連のプレーの中で反則があり、トライは取り消しとなったのだが、自陣深くから95メートルを延べ18人の手を経てボールを相手インゴールまで運んだプレーは、神戸の前身であり、奔放にパスをつないで攻め続け、相手を圧倒した日本選手権7連覇時代(1989-95年)の神戸製鋼をほうふつさせた。
このプレーには、普段は辛口のデイブ・レニー・ヘッドコーチも「(選手たちが)前を見ながらチャンスを見つけてのプレーで、すばらしかった」と評価。元日本代表FBでV7時代の神戸製鋼の主将も務め、現在は独自の視点でラグビーを語る動画『ラグビール』をユーチューブで配信中の細川隆弘氏は「僕らのときはセットプレーからのサインプレー以外に決め事はなく、『こいつはどう動くのかな』と予測し、すべて瞬間、瞬間の個々の判断でゲームを作っていた。今の神戸の選手たちも個々の判断能力が上がってきたのかな」との見方を示した。
実際に松永は「コミュニケーションを取ってスペースを攻めた」と話しており、その都度の状況を瞬間的に判断した選手の声に他のメンバーが反応し、攻める意識を持ち続けた結果だったようだ。
神戸製鋼がV7を達成した1995年1月15日、その2日後の阪神淡路大震災の発生から30年。神戸の遺伝子が詰まった〝幻のトライ〟を「特別な年」と位置付ける今季の躍進のきっかけにしたい。(月僧正弥)