プロ野球は開幕3カード目に入った。今年もシーズン初安打を巡ってのドラマがあった。阪神・中野拓夢内野手(28)もその一人。初安打は4月1日のDeNA戦(京セラ)。開幕4試合目&15打席目だった。
「(打てなくて)めちゃくちゃ気にしていました。オープン戦の状態がよかっただけに、開幕に入って、こうなるってあまり思っていなかった」
三回1死一塁から快音を響かせて右前に運ぶと、一塁ベース上で笑顔。八回にも右前打でマルチ安打を放ち、チームが敗れた中、個人的には安どの表情を浮かべていた。
3月30日の広島戦(マツダ)の試合後、中野はレギュラー陣でただ一人、開幕カードで無安打だったことに「調子? わからない」と首をかしげた。次の試合へ気持ちを切り替えるか-と問われると「それしかないでしょう」と眉間にシワをよせた。
勝っても負けても、打っても打てなくても、取材に真摯(しんし)に応じてくれる虎の選手会長。今回は違った。4年目の昨季、自己ワーストの打率・232に終わり、オフは一昨年までの下半身主導の打撃フォームに修正。オープン戦は12試合で打率・342(38打数13安打)。規定打席に到達した12球団の選手の中で2位だった。「公式戦に向けていい形」と話していただけに、よもやのスタートに戸惑いを隠せなかった。
オープン戦で打ちまくり、開幕に入ったとたんに三振の山…。新外国人にはよくある。オープン戦で相手球団から研究され、公式戦に入ると厳しいコースを攻められて打てなくなるパターンだ。中野は実績のある選手。そこで思い出したのは宜野座キャンプ中に中野をマンツーマンで指導していた和田豊1・2軍打撃巡回コーディネーターが現役時代に話していた〝開幕ベスト〟に持っていく方法だ。
「僕はレギュラーを取ってからは3月上旬にピークに持っていって『今年も和田は大丈夫』と思わせてから、いったん調子を落として、そこから開幕に向けて徐々に状態を上げていった」
長期にわたって「二塁」のレギュラーを務めた。現役通算1739安打を放った選手の言葉だけに説得力がある。中野は開幕2カード目のDeNA3連戦(京セラ)でマルチ安打(ともに2安打)を2度、4日の巨人戦(東京ドーム)でも2安打を記録。もう大丈夫。これからヒットを量産していくはずだ。(三木建次)