政府が備蓄米21万トンを放出しても、コメ価格の高騰が止まらない。スーパーでの小売価格は右肩上がりを続け、3月上旬には5キロ4000円を超し、わずか1年で2倍になった(農水省調べ)。

高騰するコメ ©時事通信社

異常に減少していたコメの在庫量

 その原因について、江藤拓農相は2月にこう説明していた。

「流通がスタック(停滞)していて、消費者の方々に高いお値段でしか提供できていない。流通に問題があるということです」

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 だが、『農協の闇』や『対馬の海に沈む』で知られるノンフィクション作家の窪田新之助氏の調査取材によって、コメが高騰する本当の原因が明らかになった。そもそもコメの在庫量が異常に減少していたのだ。

窪田新之助氏(本人提供)

農水省の主張

 2024年6月末時点でコメの民間在庫量は153万トンだった。コメ価格の高騰で世間を騒がせた2011年と2012年で、それぞれ181万トンと180万トンだったことを考えると、昨年の在庫量があまりにも少なかったことがわかる。にもかかわらず、2024年の秋、農水省は高らかにこう宣言していた。

「新米が出回るころには、価格は落ち着きます」

備蓄米放出を発表する江藤農水相 ©時事通信社

 結果は見ての通り。在庫不足によって、新米収穫直後から卸売業者が争うように買い求め、価格が高騰。前年同期比で284%もの価格で取引された。コメ価格の高騰は投機的な動きではなく、単なる供給量不足が原因だったのだ。

 3月末になって、農水省はようやく価格高騰の原因が投機的なものではないと認めたのだが、新たに別の原因を主張しはじめた。混乱する市場を前にして、流通業者や消費者が在庫を少しずつ増やしたからなのだと――。

「先々を心配してお米を確保しようと、それぞれが少しずつ在庫を積み上げた結果だ」(江藤農相)

コメ不足の“根本的な原因”

 だが、真の要因は違う、と窪田氏は言う。自民党農林族、農水省、JAの“農業ムラ”が長年続けてきた、ある政策にコメ不足の根本的な原因がある。我が国の農業従事者の大半を占める、零細兼業農家を救うために続けられてきた政策によって、我々の主食であるコメが脆弱な供給基盤を強いられているのだ。

 ほかにも、窪田新之助氏のレポート「コメの値段はこの秋も上がる」では、近年続く猛暑によるイネの障害や、「中食」と呼ばれる惣菜産業、さらにはインバウンドによるコメ価格への影響についても言及されている。

 同レポートは「文藝春秋」5月号(4月10日発売)、および月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」(4月9日配信)に掲載されている。

文藝春秋

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コメの値段はこの秋も上がる