「死ねないなら、退任しなよ」
「なぜ、命を絶たない??」
2023年12月から24年7月にかけて、東証グロース市場に上場するバイオベンチャー、カルナバイオサイエンスの投資家向け広報(IR)窓口に、こうした脅迫メールが毎日届いた。反社会的勢力やアクティビスト(物言う株主)を名乗るものもあった。
カルナバイオは警察に被害を相談。24年11月、同社に対して誹謗(ひぼう)中傷や脅迫をしたなどとして、神戸地検は三菱UFJ銀行の元行員を強要未遂罪で起訴した。被告は50代の男性で、起訴後に懲戒解雇となった。
掲示板に数百件の書き込み
元行員が標的にしたのはカルナバイオの吉野公一郎社長らで、金融情報サイト「Yahoo!ファイナンス」の匿名掲示板でも脅迫などの書き込みを数百件にわたって繰り返した。メールの中には、元行員が業務上で知り得た社長の個人資産情報なども含まれていたという。

吉野氏は「万が一のことがあるかもしれないと思って心に重荷を背負っていた。三菱の人の犯行だと知って非常に驚いた」と語る。
三菱UFJ銀行はカルナバイオのメインバンクの一つで、15年以上の取引がある。吉野氏によると、元行員は直接の担当ではなかったが、約10年前に複数回面会していた。
■「ハラスメントが会社を滅ぼす」のラインアップ
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・フジテレビ、人権軽視の風土あらわ 第三者委「言語道断の内部統制」
・フジテレビ問題、まるで日本版#MeToo 法整備進んだ米エンタメ業界の今
・フジテレビだけじゃない セクハラで5割超が泣き寝入り、2次被害も
・商社で「接待は平気?」と聞かれて涙した就活生 圧迫面接は人権侵害
・三菱UFJ元行員、ネットで脅迫など数百件 「カスハラ加害」の防止急務(今回)
など10回を予定
警察が捜査を進める中で、カルナバイオは元行員が同社の株式を保有していた事実を24年6月時点の株主名簿で確認した。三菱UFJ銀行は元行員が内規違反に該当する株取引を行っていたことを認めている。カルナバイオ株はここ2年ほど下落基調で、株価低迷に腹を立てて脅迫に及んだと見られる。
インターネット上での誹謗中傷や脅迫は、企業が頭を悩ませるカスタマーハラスメント(カスハラ)の一つだ。カスハラは接客業などBtoC(消費者向け)の現場で起きるイメージが強いが、実はBtoB(法人向け)企業でも被害が深刻だ。IRに関連するケースも多い。厚生労働省は22年2月に発表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の中で、「対応しなければ株主総会で糾弾する」といった顧客からの脅しにも毅然とした対応を求めている。
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