抄録
2型糖尿病の治療のみならず,メタボリックシンドロームから2型糖尿病への進行を止めることは,大小両血管障害を抑制することにつながる.わが国では食習慣の変化,とりわけ高脂肪食によってメタボリックシンドロームを抱えた肥満者が急増しつつあるが,その背景には消化管ホルモン,とりわけ脂肪摂取に対してインスリン分泌促進作用を発揮するGIPやGLP-1などのインクレチンの分泌あるいは作用異常の介在が疑われる.従来の薬剤とは全く異なる機序をもったGLP-1関連製剤の臨床応用は,前述の代表的生活習慣病の予後改善に貢献するのみならず,これらの成立機構や病態基盤の解明にも役立つ可能性が期待される.