池井戸潤が語る…「半沢直樹」への思いと新作『アルルカンと道化師』構想

ドラマ「半沢直樹」本日スタート!

大谷 道子

バブル崩壊以降、不況にあえぐ経済と社会の歪みを背負ったサラリーマンの悲哀と、それでも消えることのない闘志を描いた小説『半沢直樹』シリーズは、2013年のドラマのヒットとともに大ベストセラー化。2014年の第4作『銀翼のイカロス』以降、6年間にわたって続編は発表されなかったが、今年9月、ついに沈黙を破って新作『半沢直樹 アルルカンと道化師』が刊行される。

その間、時代は平成から令和へ。シリーズが描いてきた銀行員像は、日本のサラリーマンの姿は、どう変わったのか。そして、気になる半沢直樹のその後は……。本日夜9時よりスタートするドラマ第2弾『半沢直樹』放送開始を前に、原作者・池井戸潤氏に尋ねた。

撮影/加藤貴史

ドラマ続編は「正直、ないだろうと思っていた」

《半沢直樹次長、営業企画部部長職として、東京セントラル証券への出向を命じる》

厳かに言い渡された辞令を聞いた男は一瞬、目を見開き、眉根を寄せたーー。

2013年に放送されたドラマ『半沢直樹』の衝撃のラストシーン、タイトルロールを演じた堺雅人の表情に、思わず息を飲んだ。銀行内にはびこる不正を暴き、首謀者である常務・大和田暁(香川照之・演)をついに土下座させた正義の男への、まさかの出向通達。何のフォローもなく放送は終了し、当時、オンタイムで最終回を見守っていた原作者・池井戸潤氏も一瞬、首を傾げたという。

「すぐに次のドラマの予告が始まったので、『あれっ、これで終わりだっけ?』と(笑)。でも、原作どおりでしたね」

驚異的な視聴率を叩き出したこともあり、すぐに半沢の逆襲が始まるに違いないと考えた人は少なくなかったはずだ。ドラマの原作となった『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』『半沢直樹2 オレたち花のバブル組』に続くシリーズ『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』はすでにベストセラーとなっており、当時、池井戸氏は『半沢直樹4 銀翼のイカロス』を経済誌で連載中。すでに十分な物語のストックは、あった。

しかし、何度となく噂は囁かれたものの、半沢直樹復活の報が届くことはなかった。その間、7年間。池井戸氏自身も「正直、次はないだろうなと思っていました」と振り返る。

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「いろいろな条件が整わないうちに時間はどんどん経って、僕も次の作品に取りかかっていた。でも去年か一昨年かに、ついに取りかかれそうだということを聞いて……。もともと、監督の福澤克雄さんが最初に映像化したいとおっしゃっていたのは、実は第3作の『ロスジェネの逆襲』だったんです」

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