一条ゆかりヒストリー&絵を上手に描くコツは?(イベントレポート/前編)

OurAge

画業60周年、新刊2冊同時発売を記念して行われたトークイベント「一条ゆかり 絵と人生に彩りを!」の様子を前後編2回に渡ってレポートします。「一条塾」というコンセプトのもとに行われた今回のイベント。前編では、「漫画家・一条ゆかりヒストリー」と「絵をうまく描く・塗るコツ」をお伝えします。


2025年に画業60周年を迎えた漫画家の一条ゆかり先生。

先生自らが選んだ美麗なカラー原画20枚と、それを丁寧に再現した塗り絵20枚、計40枚のポストカードがセットになった『一条ゆかりポストカードBOOK 塗り絵倶楽部』と、OurAgeで連載中のエッセイを電子書籍化した『男で受けた傷を食で癒すとデブだけが残る たるんだ心に喝! 一条ゆかりの金言集2』を2冊同時に発売しました。

自らの写真の前で同じポーズをとる一条ゆかり先生

この新刊発売を記念して3月8日に行われたスペシャル トークイベント「一条ゆかり 絵と人生に彩りを!」の様子をレポートします。

岩手から岡山まで全国各地からファンが集結!

タイトで真っ赤な花柄ドレスに黒のヒール靴というスタイリッシュな姿で、客席の後ろ側から登場した一条先生。「皆さん、今日は来てくれてありがとう」「どこからいらしてくれたの?」と、参加者のすぐ近くを通って、やりとりしながらステージへと歩みます。

定員65名、発売早々に売り切れたこのイベントには、なんと北は岩手県から、西は一条先生の故郷・岡山県玉野市からの参加者も!

先生の絵の原点は「極貧だった子ども時代に描いた憧れ」

「あっという間に60年! 75歳です」と、会場中に驚きを与えたあと、過去の名作の絵を見ながら振り返る「一条ゆかりヒストリー」がスタート。

一条ゆかり先生トークイベントにて、MCとのツーショット

MCを務めるのは、OurAge連載でも腕をふるうライターの佐藤裕美さん。普段のインタビューと同じように、実になごやかなムードで話は進んでいきます。

最初のテーマは「漫画家・一条ゆかりができるまで」

「実家があまりにも貧乏すぎて、物心ついた時にはヨーロッパの貴族やお城など華やかなものに憧れてました」と、一条先生。

小学生の頃は男子並みの運動神経の良さを誇る一方で、自分が憧れている世界を絵に描くのが好きだったとか。卒業アルバムの将来の夢には、すでに「漫画家」と書いていたそう。

中学生から本格的に漫画家を志し、高校在学中に貸本漫画の作家としてデビュー。その後、『りぼん』に投稿した作品『雪のセレナーデ』が、第1回りぼん新人漫画賞に準入選。主戦場となる少女漫画界へと足を踏み入れたいきさつを語ります。

「昔の絵を見るのは恥ずかしい‼」と言いながら、受賞作『雪のセレナーデ』の思い出も振り返り…。

「私の中では『りぼん』は、少しお子様なイメージだったのよね。自分の理想とは真逆のメルヘンチックな作品を『描いてみるか』と挑戦したら、入選してしまった」

「そんな感じで少女漫画の世界へ入ったものだから、作品のストックがなくて焦ったの。編集者に『今の私の感性を、今の絵や話で表現したい』と言い訳をして乗り切った」といったエピソードが語られました。

『デザイナー』と『砂の城』に込めた思い

そして『一条ゆかりポストカードBOOK 塗り絵倶楽部』にも収録されている、『デザイナー』と『砂の城』への言及も。

特に『デザイナー』は、先生曰く「当時主流だったロマンチックコメディとは違う、自分が好きだったドロドロのピカレスクロマンが描きたかった」。絵もストーリーも、その頃の自分が出したいものを思いきり表現したそうです。

一条ゆかり ハピアカトークイベント ワンショット写真

「『デザイナー』を好きと言ってくれる人は、私の中では大人っぽい感性の持ち主。

『砂の城』のファンは…夢見がちな人が多い気がする(笑)。主人公のナタリーは、私が嫌いな、努力せずにグズグズ言う甘っちょろい女。そんな彼女の美学や生涯を、私はプロとして飽きずに描き切ることができるのか? 『砂の城』は、漫画家として“匠”になりたくて挑んだ作品でした」

塗り絵初心者は“パステルカラー”でまとめるべし

次のテーマは「一条ゆかり直伝 絵をうまく描く・塗るコツ」。

『塗り絵俱楽部』に収録された絵などを「上手に塗るにはどうすればいいのか?」 という質問には、「私、誰かがが作った塗り絵ってやったことないのよ。子どものころからオリジナルの絵を描き、自分で塗ってたから(笑)」

そう言いながらも「まずはパステル系の同系色でまとめると、初心者も失敗しづらいし、色の感覚をつかみやすいと思う」とのアドバイスが!

さらに一条先生が愛用してきた画材道具の実物も見せつつ、水彩、カラーインク、日本画のための絵具など、作品や時代によって巧みに画材を使い分けてきた楽しさとコツを披露。

ちなみに先生自身は、デビューから30年ほど経った『天使のツラノカワ』あたりから、「絵が急にうまくなった」と感じられるようになったそう。初めてデジタル作画に挑戦した『プライド』では「あえてアナログっぽい線と着色を意識した」のだとか。

上手に色を塗る極意はコレ!

●まずは「お手本」をしっかり見る

光源がどこにあるか考えて影をきちんと描くと、絵に立体感が出る。

人物の顔は、実際にメイクする感覚で塗ってみる。例えば鼻にはノーズシャドウを入れるといい。

●画材道具のほかには綿棒があると便利。にじみにくい色鉛筆では使えないテクだけど、綺麗なグラデーションが作りやすい。なければティッシュでも、色をぼかすことができる。

…と、画業60年の匠らしい技もたくさん伝授してくれました!

参加者の作品から先生が選んだ塗り絵ベスト3は?

実はこのイベント、「あなたが塗った絵を先生に見てもらえます!」ということで、希望者には『塗り絵俱楽部』から1枚好きな絵を選んで事前に応募してもらい、当日、先生が実物を見て優秀作を選ぶという企画がありました。

そして選ばれたのは、この3枚。

一条ゆかりトークイベント参加者からの「塗り絵」応募作品。優秀作3点

「(応募作全体から)悩みながら塗ってくれている感じが伝わってきた。ムラなく塗るって難しいわよね!」「どこが一番大変だった?」「(優秀作に選ばれた人に)もしかして自分でもイラストを描いてる?」といった講評が。

また優秀作3名の方には、先生が熊本県人吉市から取り寄せているというお気に入りのお茶(立山商店の田舎番茶)と、同じく立山商店の高級煎茶をセットにしたプレゼントが先生から手渡しされました。

(“人生に喝を入れてくれる”先生の金言が次々に飛び出したイベントレポート後編はコチラ

オンデマンドで動画配信中!

一条ゆかり ハピアカトークイベント オンデマンド配信告知バナー

このイベントの様子は、HAPPY PLUS ACADEMIAより、オンデマンド配信中です。一条先生の最新トークを、ぜひ動画にてご覧ください。(イベントの様子を一部再編集したオンデマンド版のため、先生の登場シーンや塗り絵審査の様子は含まれていません)

詳しくはコチラ

※販売期間:2025年4月3日~10月2日 購入者の動画視聴期限:180日間(6カ月間)

2冊同時に大好評発売中!

『一条ゆかりポストカードBOOK 塗り絵俱楽部』書影

『一条ゆかりポストカードBOOK 塗り絵倶楽部』(1.980円)

一条ゆかりエッセイ「男で受けた傷を食で癒すとデブだけが残る」

『男で受けた傷を食で癒すとデブだけが残る  たるんだ心に喝! 一条ゆかりの金言集2』(電子書籍限定 1.760円)

【プロフィール】

いちじょう・ゆかり●1949年9月19日、岡山県生まれ。1967年第1回りぼん新人漫画賞準入選、1968年『雪のセレナーデ』でデビュー。代表作に『デザイナー』『砂の城』『有閑倶楽部』『プライド』など。1986年『有閑倶楽部』で第10回講談社漫画賞少女部門受賞。2007年『プライド』で第11回文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞受賞。

取材・文/石井絵里

RECOMMEND
April 19 Sat