センセーショナルなデビューから3年、ついにウェット・レッグが還ってくる! 既報のとおり、彼女たちのセカンドアルバム『モイスチャライザー』のリリースは7月11日。先行シングル “キャッチ・ジーズ・フィスツ”を含む同作のプロデュースは、引き続きダン・キャリーが務めているようだ。まさに超待望の新作だが、そこには不確定要素がないわけでもなかった。あまりにも完璧なデビューアルバムは、時にバンドにとって凄まじいプレッシャーとなる。ウェット・レッグのようなインディの純潔主義を前提としてきたバンドの場合は、とりわけそうだろう。
『ウェット・レッグ』は「2020年代最高のデビューアルバム」として圧倒的な賞賛を集め、グラミー賞のオルタナ部門を筆頭に同年のあらゆるアワードを総なめにした。バンドのサクセスストーリーはリアンとへスターの心の準備が出来る間もなく加速し続け、気づいた時にはハリー・スタイルズのサポートでスタジアムに立っていた。かつて、本誌のインタビューで当時の状況について「現実味がなかった」と言っていたふたり。そんな現実味のない場所からウェット・レッグは、果たしてどこへ向かおうとするのか?
しかし、そんな懸念は“キャッチ・ジーズ・フィスツ”を聴けば、まったくの杞憂だったことがわかる。杞憂どころか「こんなにも胸躍る新章が待っていたとは!」と小躍りしたくなるような快曲なのだ。元来のセンスと勘の良さに支えられたポストパンクは健在だが、そこにねちっこいダンスパンクのグルーヴや分厚いラウドギターを躊躇なく掛け合わせた音は、思いっきりタフでカラフル。同曲を聴くと、彼女たちが現実味のなかった場所でとっくに堅固な土台を固めていたこと、そこからさらに高みへと登り始めていたことがわかるはず。「今のわたしたちは大きなパレットを手にして、たくさんの色についてよくわかっている」とリアンが語ったように、『モイスチャライザー』はウェット・レッグにとってまさに、初めて自覚的かつ確信的に向き合った入魂の一作なのではないか。スプーキーな新ビジュアルも話題沸騰、全貌が明らかになる日を心して待つべし! (粉川しの)
ウェット・レッグの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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