土村芳が語る“共感度0.1%”のカンヌ選出作品の魅力「その0.1%があるかもしれない可能性を感じてしまう」<インタビュー>

新型コロナウイルスの影響で今年は通常開催を断念し、部門の区別なく「オフィシャルセレクション2020」として56作品を発表したカンヌ国際映画祭。その中に、深田晃司監督の「本気のしるし 劇場版」(10月9日[金]公開)が選出されている。
同作は星里もちるの漫画を原作に、2019年にメ~テレで放送されたドラマを劇場版として再編集したもの。主人公の会社員・辻一路を森崎ウィンが演じ、青年誌の“典型的な女性観”に対してある種批判的な視点を持つ原作を、映像化に際して改変しながら表現している。
そんな「本気のしるし」には、「アンサング・シンデレラー」(フジテレビ系)最終話に妊婦役で登場した土村芳も出演。平凡な人生を送っていた辻と偶然出会い、彼をトラブルに巻き込み続ける不思議な魅力を持つ女性・葉山浮世を演じた。
今回は土村にインタビューを行い、「私なら選ばない方をとことん選ぶ」という浮世を演じた感想などを語ってもらった。
浮世の最初の印象は「本当に分からないことだらけ」
――映画になった「本気のしるし」がカンヌ国際映画祭の「オフィシャルセレクション2020」に選ばれたと聞いたとき、率直にどう思いましたか?
ドラマの撮影中から「映画化したらいいんじゃないですか!?」って盛り上がっていたら、本当に映画に再編集することが決まって、「楽しみだな」って思ってから、一連の流れが私にとってすごく早かったんです。
ドラマから映画になって、(ドラマ放送地域外の)皆さんにお届けできるなって思っていたのも束の間、「カンヌから選ばれました」という連絡をいただいて、展開の速さと事の大きさに驚き呆けてしまったというか(笑)。
ご連絡をいただいたときもあんまり上手な返答ができず(笑)、あわあわしてしまったんですけど、この作品が海外の人にも楽しんでいただけるチャンスをいただけたっていうのはすごくありがたいです。見てもらえる日が楽しみだなって思っています。
――ドラマ版の放送後に、ご家族やご友人など周りの方から感想を聞いたりはしましたか?
リアルタイムで毎週見てくれていた人からは、「次の話までの1週間ずっとモヤモヤしっ放しだった」っていう感想が多かったです(笑)。
あとは、辻さんと似た名前の友達が、ドラマで「辻さん」って呼ばれるたびに、別にやましいことはないのにドキッとしたっていう話をしていましたね(笑)。
――台本を最初に読んだときに、浮世さんに対して抱いた印象は?
私はオーディションで出演が決まったので、浮世さんとの“はじめまして”はオーディションの前に原作の一部を読ませていただいたのが最初だったんですけど、そのときから浮世さんっていう存在が何ともつかみどころがなくて。この人はどうしてこの顔でこの言葉を言えるんだろうとか、「なぜ?」って思うこと、本当に分からないことだらけでした。
でも、演じさせていただく側としては、とっても興味をそそられるキャラクターだったので、演じられると決まったときは「これからこの人ととことん向き合うことができる」と思って、すごくやりがいを感じました。
オーディションは受かるか受からないか分からないから、あまりのめり込み過ぎていると、ダメだったときのダメージが大きいので(笑)、少し自分の中でそわそわふわふわしていたんですけど、決まってからは「やっと向き合える」という気持ちでしたね。
――そんな浮世さんを実際に演じてみて大変だったことなどはありますか?
とにかく選択すること全てが、私なら選ばない方をとことん選んで、とことん違う方へ行ってしまうキャラクターなので、自分の中ですごく浮世さんを心配してしまうシーンがたくさんあったというか(笑)。
正(宇野祥平)に家に帰ってきてくれと言われて戻っていくときも、「どうして戻るの!?」みたいな。結果は見えているだろうに、そこで戻ってしまう彼女を思うと、とっても心配になるというか。
でも、それも彼女の自己評価の低さとか、そういうところから来ているんだなと思って、本当にちゃんと寄り添ってあげたいという気持ちになりました。