「鉄道×戦闘機エンジン」国鉄がマジで試作した車両とは!? 雪との闘いに“豪快すぎる発想”で対抗した結果
鉄道は雪に強いと言われますが、その運行を支えているのは、除雪車の存在があってのこと。過去には、トンデモない方法で雪を排するアイデアが考案され、実験されました。どのような方法だったのでしょうか。
外見もスゲエ! ジェットエンジン貨車の正体
時は1961(昭和36)年。国鉄のボギー式無蓋車・トキ15000形(トキ17988)に、航空自衛隊の千歳基地から借りたジェットエンジンを載せた“トンデモ除雪車”が、国鉄大宮工場で製作されました。北海道に輸送したのち、札沼線浦臼駅付近などで実験が行われたそうです。

外観もなかなかのキワモノ。トキ15000形に、ダクト込みで長さ3mほどのジェットエンジンを斜め下向きに搭載、反対側には作業員用の小屋も乗せられていたとのことです。貨車のため自力での走行はできず、機関車による推進は必須でした。
載せてあったジェットエンジンは600度の高温、秒速600mというとてつもない爆風を発生するため、その除雪効果は大いに期待されたのですが、実験の結果「まったく使い物にならない」ことがわかりました。
というのも、ジェットエンジンの風が強すぎて、雪だけではなく線路のバラスト(砕石)や、踏切で線路上に敷く板、周辺の設備などもすべて飛ばしてしまったというのですから驚きです。しかもジェットエンジンは囲いもなくむき出しで、騒音も凄まじく、燃料消費量も膨大。このアイデアが実用化されなかったのは、いうまでもありません。
ただ、この「ジェットで除雪」する話には、実は後日譚があります。
積雪量が多いことで知られる東海道新幹線 関ヶ原付近の積雪対策に、ジェットエンジンを搭載した自走可能なアメリカ製車両が用意されたことがあります。「ジェットスノーブロア」と名付けられ、実験が行われました。熱風の効果はそれなりにあったものの、やはり、あまりに大きな騒音が問題となり、こちらもお蔵入りに。その後、同区間には融雪用スプリンクラーが設置され、現在に至っています。
※ ※ ※
風や熱による除雪を実用化した例は、海外では実在するようですが、航空機用のジェットエンジンを貨車へ無造作に積むなんて、ちょっと考えれば実験前、いや作る前にわかるだろうに(笑)……と思ってしまいます。しかし当時はこのような「トンデモ車両」が、日本のみならず海外でも、真剣に、しかも多く考察されていました。
試行錯誤の末、現在の一般的な手順に行き着いたことは、除雪に限らず身の回りにたくさんあります。先達の苦労あっての快適な生活があることを、私たちは忘れてはいけないと思います。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれの自動車・鉄道系イラストレーター/ライター。雑誌、WEB媒体で連載を多く持つ。コピックマーカーで描くアナログイラストを得意とする。クルマは商用車や実用車、鉄道ではナローゲージや貨物、通勤電車、路面電車、地方私鉄などを好む。
コメント