救急車が来ない!をなくす 「官民連携システム」に挑む救命士の覚悟

有料記事

聞き手・吉田貴文
[PR]

 急病や大けがの時に頼りになる救急車。しかし近年、出動状況が逼迫(ひっぱく)し、迅速な現場到着に支障をきたしています。

 救えるはずの命が救えない社会になりかねない――。

 救急救命士として病院の救急車で働いた経験もある病院前救急医療研究者の匂坂量さんは今春、沖縄県名護市で消防の救急車と民間の搬送車が連携する仕組みづくりを始めます。日本初の「官民連携型救急搬送システム」に挑む理由と、その背景について聞きました。

救急救命士・匂坂量さんインタビュー

 ――救急搬送の逼迫が問題となっています。

 救急出動の件数は年々増加の一途です。

 2023年には前年より40万多い約764万1千件、搬送人数も42万多い約664万3千人と、過去最多を更新しました。救急車が現場に到着する時間も延び、全国平均では20年間で約4分延長、22年には10分を超えました。到着の遅延は重症傷病者の命にもかかわりかねない。由々しき事態です。

 消防の救急隊員の労働環境も厳しさを増しています。多忙で休憩や食事の時間を満足にとれず、体を痛めたり過度な緊張を感じたりする人も多いといいます。

 そのせいか、消防職員の退職者が急増しており、なかでも35歳未満の普通退職者の増加が目立ちます。やや古いデータですが、12年度に600人弱だった普通退職者が、21年度には1300人以上と10年で2倍以上になっています。応募者も減少しています。

 ――救急医療の現場で働いた経験は。

 高校生の時、後の大学の恩師から救急救命士という仕事があると聞き、現場で医療に従事できるのが魅力で、救急救命士の国家資格をとりました。

 大学3年から病院で医療事務のアルバイトをはじめ、夜勤の当直で救急隊や患者さんから電話で相談を受けて医師につないだり、国家資格取得後の大学院生時代には、病院の救急車に乗って運転や患者の処置をしたりしました。救命救急センターで働いたこともあります。

勉強する時間がない救急救命士

 ――現在は病院前救急医療における疫学、心理学行動科学、医療人類学などの研究をされています。

 道端で突然倒れた人に対して救助や救命がどのようにおこなわれるのか、人はなぜ人を助けるのか、に興味があります。消防庁から研究費をいただきで、XRデバイスを使った救急隊員用の教育コンテンツも作成しています。

 ――「教育」コンテンツ?

 救急隊員用のEラーニングア…

この記事は有料記事です。残り3647文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら