米最高裁、リベラル派判事が退任へ 後任は黒人女性か

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米最高裁のスティーヴン・ブライヤー判事(83)が年内に退任することが、26日明らかになった。複数のメディアが報じた。リベラル派のブライヤー氏は30年近くにわたり、その職責を務めてきた。
同判事の退任により、ジョー・バイデン大統領は、今後数十年にわたって判事を務める人物を指名する。
しかし、現在は保守派6人、リベラル派3人で構成されているため、新たな判事が保守派の優位を変えることにはならない。
最高裁は現在、いくつかの議論を巻き起こしている問題について審理を行っている。
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ブライヤー判事は最高裁の今期が終わる6月に退任するとみられている。
民主党はかねて、民主党が政権と上院を握っている間に若いリベラル派の判事を送り込むため、ブライヤー判事に退任を促していた。
アレクサンドラ・オカシオ=コルテス議員など先進派の議員は、公に同判事の退任を求めていた。またワシントンでは、ロビー団体「ディマンド・ジャスティス(正義を求める)」が、「ブライヤーは辞任を」と書かれた車で宣伝する様子も見られた。
関係者によると、ブライヤー判事は退任について「きょう発表する予定はなかった」ことから、このニュースが漏洩(ろうえい)したことに「動揺」しているという。
現在の構成
アメリカでは最高裁が国民生活について重要な最終決定を下すことが多い。物議をかもしている法律や、州政府と連邦政府間の紛争、刑の執行猶予をめぐる上告などだ。
最高裁判事は終身職で、大統領が指名し、上院議員が承認する形で決まる。
前回、最高裁判事の席が空いたのは、リベラル派のルース・ベイダー・ギンズバーグ氏が87歳で亡くなった2020年。共和党のドナルド・トランプ前大統領は大統領選の2カ月前に、保守派のエイミー・コーニー・バレット判事を任命することに成功した。
現在の最高裁判事は、保守派がジョン・ロバーツ判事、サミュエル・アリート判事、クラレンス・トーマス判事、ニール・ゴーサッチ判事、ブレット・キャヴァノー判事、バレット判事の6人。リベラル派はブレイヤー判事、エレナ・ケイガン判事、ソニア・ソトメイヤー判事の3人。
「後任は黒人女性に」
バイデン大統領は先に、次に最高裁判事の席が空いた時には、黒人女性を指名すると約束していた。
これまでに最高裁判事となったアフリカ系アメリカ人は、1967~1991年に判事を務めたサーグッド・マーシャル氏と、後任として指名されたトーマス判事の2人で、どちらも男性。トーマス判事は現在73歳で、ブライヤー判事の退任に伴い、最高齢の最高裁判事となる。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は26日、バイデン大統領は公約を尊重するだろうと話した。
最有力候補とされているのは、以前ブライヤー判事の司法事務官を務めていたケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏(51)。ジャクソン氏は昨年6月に、コロンビア特別区(ワシントン)の巡回控訴裁判所の判事になることが決まった。

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また、カリフォルニア州最高裁のリオンドラ・クルーガー判事(45)や、サウスカロライナ州の連邦裁判所のJ・ミシェル・チャイルズ判事の名前も挙がっている。
民主党のチャック・シューマー上院院内総務は声明で、ブライヤー判事は「法律家の模範」だと評した。
また、「バイデン大統領が指名した候補者はただちに上院司法委員会の聴取を受けた上で、上院全体で慎重に検討・承認する」と述べた。
ブライヤー判事とは
ブライヤー判事はサンフランシスコに生まれ、ハーヴァード大学の法学院を卒業。1994年に民主党のビル・クリントン大統領によって最高裁判事に任命された。
それから27年の間に、ブライヤー判事は500件以上の意見書を発表するなど、リベラル派として一貫した声を上げてきた。また、同性婚や保健システム、参政権、死刑などにまつわる重要な法律の決定に関わった。
近年では裁判所の政治化に懸念を示しており、2021年には「裁判所を政治機関のひとつだと思うのは間違っている」と述べている。
1967年に、ジョアンナ・ヘアーさんと結婚した。ヘアーさんは、英保守党の元幹事長で初代ブレイクナム子爵のジョン・ヒュー・ヘアーの娘。