ツイッター社による記者アカウント凍結、国連やEUも批判 大多数のアカウント復活

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ツイッター社が15日、最高経営者イーロン・マスク氏を取材していた複数の著名記者のアカウントを唐突に凍結した件について、欧州連合(EU)や国連も非難の声を上げた。この後、米東部時間17日未明、大多数の記者のアカウントは復活した。
国連の報道担当はツイッターで、メディアの自由は「おもちゃではない」と指摘。EUの担当も、同社に制裁を加える可能性があるとツイートしていた。
米紙ニューヨーク・タイムズや同ワシントン・ポスト、CNN、複数のネットメディアの記者などが、アカウントをいきなり凍結された。
マスク氏はその後、自分のツイッターアカウントで、「これらのアカウントの凍結をいつ解除すべきか」と尋ねるアンケートを2回にわたり行ったが、どちらも記者アカウントを「今」復活させるべきという回答が多数だった。「リアルタイムで私の位置情報をさらしたアカウントの凍結をいつ解除すべきか」という質問に、選択肢を「今」と「7日後」と設定した2回目のアンケートには、360万人が答え、そのうち59%が「今」と答えた。
マスク氏は17日、「人々が選んだ。私の位置情報をさらしたアカウントについて、ただいま凍結を解除する」とツイート。その後、米ニューヨーク・タイムズや同ワシントン・ポスト、CNN各社の記者たちなど、記者たちのアカウントは復活した。

ただし、公開情報を使ってマスク氏の自家用飛行機を追跡していたアカウントの凍結は続いている。アカウントの持ち主ジャック・スウィーニー氏(20)は、公開されている飛行機追跡情報をもとに、マスク氏の自家用機の発着をそのつどツイートしていた。著名ジャーナリスト、キース・オルバーマン氏さんのアカウントも凍結されたまま。
記者アカウントの凍結後、ツイッター社の広報担当者は、アカウント凍結は個人の位置情報をリアルタイムで実況することに関連していると述べていた。また、個人情報をツイッターでさらした者は「ジャーナリストでも」、他のユーザーと同様に利用が禁止されると話した。
ツイッター社はその後、利用規約も変更。プライバシーポリシーに、利用者は「他のユーザーの個人情報を、明確な許可を受けずに公開または投稿することは禁止されています」という内容が付け加えられた。
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記者アカウントの凍結を受けて、国連のグローバル・コミュニケ―ション局長を務めるメリッサ・フレミング氏は、ツイッターがジャーナリストのアカウントを「突然」凍結したことを「非常に憂慮」しているとツイートしていた。
「メディアの自由はおもちゃではない(中略)自由な報道は民主主義社会の礎であり、有害な偽情報との戦いにおける重要なツールだ」
欧州委員会のヴェラ・ヨウロヴァー委員は、「メディアの自由と基本的権利への尊重」が必要だと定めるEUのデジタル・サービス法に基づいて、ツイッターを制裁する可能性があると述ていた。
今年初めに制定されたこの法律では、欧州委員会はこの法律に違反した企業に対し、最大で世界での総売り上げの6%に相当する罰金を科すことができる。
極端な事案の場合、EUはサービスの停止を裁判所に求めることもできるが、これは企業が「重要な義務の順守を拒否した結果、人々の生命と安全を危険にさらしている」場合に限られるという。
ヨウロヴァー委員はツイッターで、「ツイッター上でジャーナリストが気まぐれに凍結されているという知らせは、心配だ。EUのデジタル・サービス法は、メディアの自由と基本的権利の尊重を求めている」と書き、「マスク氏はこれを承知しておくべきだ。越えてはならない一線がある。制裁もそうだ、近いうちに」と強調した。
このほか、ドイツ外務省もツイッター社に対し、「報道の自由は気まぐれでオンオフして良いものではない」と警告していた。
主張の食い違いも
マスク氏は記者アカウント凍結後、「僕のことを1日中批判するのは何の問題もないが、僕のリアルタイムの位置をさらして、家族を危険な目に合わせるのは問題だ」とツイーした。「狂ったストーカー」が位置情報を使い、ロサンゼルスで自分の子供たちを乗せていた車を制止し、威圧したのだと主張し、アカウントの持ち主を訴えるつもりだとしている。
複数の記者アカウントが凍結されて間もない16日には、米バズフィードのテクノロジー担当記者が、ツイッターの音声交流機能「スペース」を使って、凍結された記者たちを集め、マスク氏に凍結の理由を質問した。マスク氏は、個人情報をツイッターでさらした者はだれでも利用が禁止されるとだけ答えた。記者たちは、自分はそのようなことはしていないと反論したが、マスク氏はそれには答えずこのやりとりから離れた。さらにその直後、スペース機能自体が停止された。マスク氏は「レガシー・バグを直している」と説明していた。スペース機能は後に復旧している。
アカウント凍結を受けた記者の1人、ネットメディア「マッシャブル」のマット・ビンダー記者は、なぜ自分のアカウントが凍結されたのか理由が分からないと話した。
ビンダー氏は、「自分の報道はマスク氏に対してとても批判的だった」が、アカウントを凍結されたのは全員「ジェット機追跡で位置情報を公開していた」というマスク氏の主張は事実と異なると指摘する。
ビンダー氏は、ジェット機を追跡していたアカウントへのリンクを投稿したことはないという。一方で、このアカウントが凍結された後に、ツイートで言及したと述べた。
「アカウントを凍結された人は明らかに厳選されている。(該当アカウントへの)リンクをツイートしたユーザーは文字通り、毎分数百人もいたので」
2008年からツイッターを利用し、その動向を報じてきたビンダー氏は、今回のジャーナリストのアカウント凍結に驚いているという。
「可能性はあったが、マスク氏が本当にやるとは思っていなかった。自由な言論プラットフォームだという建前を、完全に壊してしまうからだ」
モデレーションの「根本的な欠陥」
ツイッターはさらに、記者アカウントの凍結と併せ、ツイッターの代わりになり得るソーシャルメディアとして注目されている「マストドン」のツイッター・アカウントも凍結した。ニューヨーク・タイムズによると、マストドンのアカウントは15日、マスク氏の飛行機追跡情報をツイートしていたアカウントの持ち主による、新しいアカウントをツイートしていた。
さらにツイッターでは、マストドン上のアカウントのリンクを新たにツイートしようとすると、「このリンクは安全でない可能性があります」という警告が表示され、投稿できなくなった。すでに投稿されていたマストドン上のリンクを開こうとしても、同様の警告が表示される。


BBCのゾーイ・クラインマン・テクノロジー編集長は、自分の意に沿わないアカウントの凍結は、コンテンツ・モデレーション(管理・監視)の方針に根本的な欠陥があることを意味すると解説
マスク氏がモデレーションに個人的な意向を持ち込むのはこれが初めてではない上、今回の同氏は自ら掲げてきた「言論の自由」という大義名分を撃ち落としたと指摘した。
その上で、自分を怒らせない限りは言論の自由を認めるというのが、マスク氏の言いたいことのようだと、同編集長は書いている。