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 中国自動車メーカーのエンジン開発の勢いが止まらない。中国・比亜迪(BYD)がドイツPorsche(ポルシェ)とSUBARU(スバル)の「聖域」とされてきた水平対向エンジンを実用化した。BYD傘下の高級車ブランド「仰望(ヤンワン)」の新型セダン「U7」に採用する。水平対向エンジンを搭載する中国車は、U7が初めてとなる。BYDは、2021年に水平対向エンジンに関する特許を相次いで申請。これまでに取得していたことがわかった。

仰望の新型セダン「U7」
仰望の新型セダン「U7」
プラグインハイブリッド車(PHEV)に水平対向エンジンを採用する。(写真:BYD)
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 水平対向エンジンはその名の通り、水平で左右対称に配置するピストン(気筒)が、互いの慣性力を打ち消し合って逆相に動くエンジンである。近年、四輪車で同エンジンを採用し続けているのはポルシェとスバルのみだった。両ブランドはそれぞれの象徴的な技術として水平対向エンジンを重要視してきた。

 そんな水平対向エンジンを今回、BYDが実用化した。U7は、電気自動車(EV)版とプラグインハイブリッド車(PHEV)版を設定する。水平対向エンジンを採用するのはPHEV版だ。基本的には発電機として用いるとみられる。排気量は2.0Lでターボチャージャーを備える。エンジンの最高出力は180kW、最大トルクは380N・mだ。

「全高低減」思想はトヨタと同じ

 BYDは水平対向エンジンの利点として、全高の低さを挙げる。気筒を直立させず、地面と水平に寝かせられる分、一般的な直列・V型エンジンよりも全高を低くできる。ポルシェとスバルでは、車体の低い位置に配置することでエンジン重心を低くし、走行安定性を確保していた。

 BYDは今回、水平対向エンジンをフロントフード内の電動アクスルの上に配置した。フロントフード内の構造物が少ないEVや、電動関連部品が小柄な簡易ハイブリッド車(MHEV)と比べ、プラグイン・ハイブリッド・システムはフロントフード下の搭載容積を大きくとらなければならない。併せて、U7のような高級車には体格の大きなモーターを採用することが多い。その分、エンジンの搭載可能な容積は絞られる。

 一般的な直列・V型のエンジンと比べ、全高の低い水平対向エンジンであれば、フロントフードを低く保てる。同エンジンを積んだプラグイン・ハイブリッド・システムの全高は、直列4気筒の2.0Lエンジンを採用したプラグイン・ハイブリッド・システムよりも200mm以上低減できるとBYDは説明する。これによりフロントフードの高さも869mmと低くし、Cd値(空気抵抗係数)0.195を実現した。

水平対向エンジン採用の効果
水平対向エンジン採用の効果
直列4気筒エンジンを搭載した場合、電動ユニットの全高は954mmとなるが、水平対向を採用した場合は733mmに低減できる。(出所:発表会の画面を日経Automotiveがキャプチャー)
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 エンジンの全高を低くして燃費を改善する考え方は、トヨタ自動車やマツダ、スバルも取り組んでいる。「今はモーターやエンジンのみでの効率競争が難しくなってきた。これからの燃費・電費競争はCd値を下げていかないと勝てない」とトヨタのエンジン開発者は語る。エンジン自体の燃焼効率を若干犠牲にしてでも、クルマ全体で燃費・電費を稼いだ方が、効率が良いとの考え方だ。