2019年12月、ベンチャーキャピタル(VC)大手のジャフコグループの忘年会。帰ろうとした契約社員の女性を幹部と社員の男性2人が引き留め、マフラーで首を絞めて胸を触るなどした。場所はオフィスのエレベーターホール。女性は、これ以前も男性2人からセクハラを受けており、会社に被害を告発。2人は懲戒処分を受けた。女性と2人は和解している。

 だが、問題はこれで終わらなかった。被害者の代理人である指宿昭一弁護士らによると、女性は会社側に「大ごとにしたくない」と伝えたが、当時役員だった三好啓介社長が加害者の男性を全社員の前で謝罪させ、社内で被害者が特定されてしまった。

 その後、女性は退職勧奨を受けるが、賃金が半分になる条件をのんで契約を更新した。しかし、20年12月に体調を崩して路上で倒れ、そのまま休職した後、22年10月末に雇い止めになった。雇い止めは不当であることと、会社の安全配慮義務違反などを理由に損害賠償を求めているが、話し合いは平行線のままだ。

 セクハラ被害者が会社や周囲の不適切な対応で再び傷つくことを「セカンドセクハラ(2次被害)」という。

 フジテレビと親会社が設置した第三者委員会が3月31日に公開した報告書も、被害女性に対するフジテレビの「2次加害行為」に言及している。

 セクハラ被害の相談があった場合、会社に求められる措置は大きく5つ。①迅速かつ正確な事実確認②相談者への配慮③行為者に対する措置 ④再発防止策の制定と周知⑤相談者と行為者のプライバシー保護――だ。しかし「セカンドセクハラを防ぎながら、当事者のプライバシー保護と再発防止を両立させることに各社が苦慮している」と労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員は指摘する。

 相談者は被害後に体調を崩し、休職している場合も多い。こうした状況下で行為者の降格や異動などを公表して双方の当事者がばれた例もある。担当部署には、行為者の処分を定期異動のタイミングに合わせるなど、唐突感をなくす配慮が求められる。

 また、降格や異動ではなく、周りにばれにくい方法で行為者を処罰する方法もある。減給や更生を行う専門機関に行為者を通わせるなどだ。セカンドセクハラを防ぐには「相談者に意思確認をしながら事後対応をすることが望ましい」(内藤氏)。

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