
ソニー創業者・井深大(いぶか まさる)と、アップルを立ち上げたスティーブ・ジョブズ。互いの企業を世界レベルへと押し上げた2人のリーダーは、イノベーションの未来を的確に予測するたぐいまれな思考力を備えていた。本稿では『スティーブ・ジョブズと井深大 二人の“イノベーション”が世界を変えた』(豊島文雄著/ごま書房新社)から、内容の一部を抜粋・再編集。井深、ジョブズの遺訓から、これからの日本で求められるリーダー像に迫る。
互いに世界初の製品開発を主導し、成功に導いてきた井深とジョブズに共通する「ある考え方」とは一体何か?
21世紀のコンピュータの革新について
井深はAI時代の自動運転車を予言し、ジョブズはネットワークテクノロジーを進化させiPhoneで世界を変えた

(1)21世紀、ソニーは「ソニーAI」を設立
井深大は当時、まだコンピュータが「電子計算機」と呼ばれていた時代に、21世紀のAIによるパラダイムシフトを次のように洞察していた。
1961年7月に国際基督教大学(ICU)で「エレクトロニクスの夢」と題された講演の記録。当時は、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が「三種の神器」と呼ばれていた時代。そこで井深は、まだコンピュータが「電子計算機」と呼ばれていた時代に、21世紀のAIによるパラダイムシフトを次のように洞察した。
「これからの自動車はステアリングやブレーキをエレクトロニクスでやれるようになるから、前の車との間もレーダーのようなもので距離を測って、速度の調整を自動的にやれるようになる」「医療でも経営でも教育でも、良いデータばかりを蓄積して、そのデータの中から正しいものを選び出して次の推理をしていくということは、電子頭脳の非常に得意なところだ」
この講演での井深の肉声を直接聞きたければ、ユーチューブ動画のタイトル「1960年からのソニー創業者のAIへの思い」で検索すればだれでも聴くことができる。