活動休止、レーベル移籍を経たbronbabaが、誰も知らない東京を描く

ポストロック的なサウンドを軸に、ミニマルかつリリカルな音楽を奏でる3ピース・バンド、bronbaba。そんな彼らが、2年におよぶ活動休止、そしてVirgin Babylon Recordsへの移籍を経て、新作『neo tokyo』をリリースした。ときに過激に、ときに美しく、誰も知らない東京の姿を描き出す本作には、彼ら独自の哲学が反映されている。フロントマン、西方龍へのインタヴューとともにお楽しみください。
bronbaba / neo tokyo
【配信フォーマット / 価格】
WAV : 1,500円 (単曲は各150円)
mp3 : 1,400円 (単曲は各150円)
【収録曲】
01. ラジオ
02. 手を繋ぐ
03. ふざけた人
04. 雨の日
05. ギター+ミー
06. 優柔不断妄想中
07. リアルデス
08. ただ淋しい
09. 深く沈む
10. 重なる声
11. 音を歩く
INTERVIEW : 西方龍(bronbaba)
西方龍という人物は、かなり灰汁の強い人物だ。論理的で哲学的で、どこか人を寄せつけないような雰囲気を持っている。筆者はこれまでに、対談などを含めて3回ほど取材をしたことがあるが、どうしても彼のペースに飲まれてしまうようなところがあった。また、こちらからどのような角度で質問を投げかけようとも、器用に打ち返されてしまうようなところがあった。どこか客観的で、記事になることを想定して答えているような、そんなところが。だから、1年以上ぶりとなる今回の取材では、自分が思っていることを遠慮することなくそのまま質問することにした。そこから生まれた答えは、以前よりも非常にシンプルですっきりしたものとなった。言葉で埋められた論理には、bronbabaの音楽の答えは眠っていない。それを強く実感する取材となった。
インタヴュー & 文 : 西澤裕郎
とにかく現実味のあるものが作りたかった
――前作をリリースしたときのインタヴューで、龍くんは「世界を変えるチャンスだ」って言っていたじゃないですか。でも、世界は変わらなかった。本作は、それを受け入れることから始まったんじゃないかと思うんですけど、その意見はどう思いますか?
西方龍(以下、西方) : 僕は変わったんじゃないかなと思いますけどね。
――どういうふうに変わったと思いますか?
西方 : 今までになかった歯車のひとつを作ったんじゃないかなと思っています。
――前回も「歯車」という言葉が出たと思うんですけど、bronbabaの作品が社会を構成する要素のひとつになったということですか。
西方 : そうですね。なにかの歯車と俺らの歯車が入れ替わったんじゃないですかね。
――それじゃあ今作は、世界をどういうふうに変えていこうと考えて制作したんですか。
西方 : ただ単にあるものを見せるということをしました。音楽は目に見えないものなんだけど目に見える。そんなものを作ろうと思った結果、出来上がった作品なんじゃないかなと思ってます。
――龍くんとbronbabaのやってることが、音から見えるってことですか。
西方 : 西澤さんには、なにか見えませんでしたか?
――東京のなかでも汚くてドロドロしててゴミみたいなものが溢れている場所が描かれていて、そこから生まれるちょっとした愛おしさみたいなイメージを感じました。
西方 : そういう場所は別に怖くはないし、ドロドロしてるわけでもなくて、どの町にもあることだと思うんですね。彼ら(そういう場所にいる人たち)は怖くないし、ただただ着ている服や考えてることが違う。彼らのルールがあって、美徳があって、彼らからしてみたら俺らこそすごくかっこ悪い存在かもしれない。それって、普通のことで、どこにでもあることなんです。それを見たくない人が多いのかもしれないですけど、彼らを見ないと狙い撃ちにされますよ。
――狙い撃ち?
西方 : だって見てないんだもん。向こうから見られ放題ですよ。目を合わせられないと始まらないというかね。
――そこに対して龍くんは直視している?
西方 : 直視もしてないです。注目もしてない。そこに10人いて、10人の個性があって、その中のひとつなだけですから。
――今回は、東京っていうわかりやすい言葉が入ってるわけじゃないですか。はじめから東京をテーマにしようとしているところはあったんですか?
西方 : 結果、そうまとまってしまったというか。とにかく現実味のあるものが作りたかったんです。いまのいままで現実味がなくてね。未来の街をうろうろしてる感じ。「すっげーな未来、見てるか俺?」って、過去と交信しているようなね。
――過去の自分から見た未来の東京みたいな感じなんですか。
西方 : それはすごくあります。
嫌われてもいいじゃないですか
――龍くんは、ちっちゃいころから植えつけられてる価値観とか当たり前のものを、一回取り払おうとしている意志が強いように感じるんですけど、それに関してはあってますか?
西方 : あってます。だから今回とにかく音にこだわりました。自分が出したものだって言いきれないものはひとつも使わなかった。
――自分らしい音って、どういうものなんですか。
西方 : そればっかりは感覚としか言いようがないけど。
――感覚だからこそ、自分らしい音を見つけるのって難しくないですか。
西方 : 難しいですよ。音っていうのはなんとなくの世界で、なんとなくだめだったらだめで、なんとなくよかったらそれでいいんですよ。なんとなくいい音だな、むしろすっげーいい音だなっていう音を探してく作業をしました。
――そうして、bronbabaもしくは龍くんにしか出せない音を追及したと。
西方 : それって絵を描く作業にすごく近いんじゃないかなって。

――絵を描くという意味では、かなりデフォルメされた東京が描かれていますよね。
西方 : それは、全体像をみたときに、すっげーバランスだなってことなんですよ。
――龍くんって、ほんと素直だなというか、気持ちを思い切り鋭い形で出すことのできる人だと思うんですね。それに慣れていない人は、エグいと思ったり、狂気的だと思って、少し遠くから様子見してしまうところもあるのかなって。
西方 : いい意味でも悪い意味でも、俺たちはどうでもいいし、関係ない。
――そこで関係ないと思えるのはなんでなんですか。
西方 : 逆に返しちゃうと、なんでそんな怯えるんですか?
――好かれたいからですよ。誰も嫌われたくないからですよ。
西方 : じゃあ、簡単ですね。嫌われてもいいじゃないですか。なんか最近思うのが、優しさの種類が全然違うんですよね。みんなが思ってるような優しさと、俺らが思ってる優しさ。
――優しさですか。
西方 : その人にとって、なにが優しさなのかっていうのが合わないと、あんまりその人とは仲良くなれないと思うんですよ。
――そういう意味では、龍くんとかbronbabaが考えてる優しさと、受け取り側の優しさが違うってところはひとつあると思いますけど。
西方 : それを考えてもしょうがないから。だけど、優しいものを作ったつもりです。なにかを壊したり、壊す要因があるものは作っていない。
――それだけに、今作がちゃんと伝わって、いろんな人に聴いてほしいなって思いますよ。
西方 : いろんな意見が出たら嬉しいなあって思います。
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bronbaba / world wide wonderful world
2012年、5年ぶりにリリースされたbronbabaのフル・アルバム。グランジ、シューゲイザー、ポストロック、エレクトロ、エモ、コア、すべてのジャンルをリスペクトした欠陥だらけの不良品。
3nd / world tour
bronbabaとも交流が深い、3ndの処女作。ツイン・ギターとベースのメロディーが絡み合い、ストーリー性豊かな音風景を展開。加速する轟音に潜むメロディーに導かれ、リスナーは3ndとともに旅(=world tour)に出る。
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LIVE INFORMATION
〈吉祥寺 WARP presents 音人の休日 ~bronbaba『neo tokyo』レコ発編~〉
2014年3月23日(日) @ 吉祥寺 WARP
開場 / 開演 : 18:00 / 18:30
料金 : 1,800円(前売) / 2,400円(当日)
出演 : bronbaba / camellia / 裸体(from大阪) / パプリカン
〈WATERDISH ~bronbaba new album release show〉
2014年4月13日(日) @ 小岩 BUSHBASH
開場 / 開演 : 未定
料金 : 1,300円(前売) / 1,500円(当日)
出演 : bronbaba / MARCH / 翌日 / ダンカンバカヤロー! / 所在ない / 病気くん / SOX
〈Virgin Babylon Night 2〉
2014年5月4日(日) @ 渋谷 WWW
開場 / 開演 : 16:30 / 17:30
料金 : 3,800円(特別チケット) / 4,000円(一般チケット) / 4,500円(当日)
出演 : world's end girlfriend & POLTERGEIST ensemble / Go-qualia / Vampillia / bronbaba / BOOL
PROFILE
bronbaba
茨城県古河市にて結成された、西方龍(Gt)、丸山大裕(Ba)、鳥羽信吾(Dr)の3ピース・バンド。デビュー以前からデモCD『loop&loop』を1,000枚売り上げ、東京だけで年60本、月に30件以上ライヴのオファーが殺到するなど、新しい世代の新しいタイプの音楽として人気を集める。2007年10月、ミニ・アルバム『LOOP&LOOP』で自主レーベル「NMK5 records(西方マジギレ五秒過ぎ)」からデビュー。同年12月、1stアルバム『kinder book』を発表。直前、あまりにストイックな活動についていけず、メンバーの1人が行方不明になって脱落している。その後、自主レーベルを凍結、活動も休止。1人はニート、引きこもり。1人は失踪、宮古島で見つかる。1人は就職、歪む。2012年、本格的に活動を再開し、2ndアルバム『world wide wonderful world』をリリース。ライヴには定評があり、高い評価を得ている。