西アフリカ発信の“流浪の音達”——マリ共和国のデザート・ブルース・バンド、ソンゴイ・ブルースによる待望のデビュー作

西アフリカはマリ共和国、ここ最近まで紛争や内乱が絶えなかったこの国から1組のブルース・ロック・バンドが生まれた。その名も、ソンゴイ・ブルース。ヴォーカルとギター、ベース、ドラムという至ってシンプルな編成から生み出される音々は、アフロ・ビートにR&Bやロック・イディオムを折衷させた次世代のブルース・ミュージック。14世紀からマリに居住するソンゴイ族である彼らが注目を浴びたのは、なんとイギリスを代表するロック・バンド、ブラーのフロントマンであるデーモン・アルバーンのあるプロジェクトがきっかけ。彼による、西洋の音楽家とアフリカの音楽家のコラボレーション・プロジェクト、〈アフリカ・エクスプレス〉の楽曲に抜擢され、各シーンのミュージシャンに絶賛される。そんな彼らによる、待望のデビュー作『Music in Exile』がついに発売! 近年、アフロ・ポップに接近しているブライアン・イーノも絶賛する、渦を巻くようなブラック・グルーヴが詰まった本作を、ぜひレヴューとともにご体感あれ。
※デザート・ブルース : アフリカのマリ~ニジェール周辺の遊牧民トゥアレグ族が生み出したブルース。
Music in Exile / Songhoy Blues
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC / mp3 : 単曲 205円(税込) まとめ購入 1,543円(税込)
【Track List】
01. Soubour / 02. Irganda / 03. Al Hassidi Terei / 04. Sekou Oumarou / 05. Nick / 06. Ai Tchere Bele / 07. Wayei / 08. Petit Metier / 09. Jolie / 10. Desert Melodie / 11. Mali
ブルースを蹴飛ばし、寄り添いながら歌い続けるのだろう
ブルースは憂いを歌う音楽だ。でも決して敗北を歌っている訳では無い。日々の辛さを歌に変えることで、歌い手にも聴き手にも生きる力を与える音楽であると思う。西アフリカのマリ共和国とニジェール共和国に分断して居住する種族であるソンゴイ族。そして、その国で起こった紛争がこのバンドの結成に大きく関わっている。マリ共和国では1960年の独立以降、遊牧民トゥアレグ族による反政府闘争が続いていた。そんな中で新たな独立を求めた彼らと政府軍の中で紛争が2012年に起こり、それによって民間ラジオ局は世俗音楽(西洋的音楽)の放送を禁止するようになっていった。音楽の演奏自体がタブーになっていく逆境の中、その逆境の中だからこそ立ち上がるべきと組んだのがこのバンド、ソンゴイ・ブルースである。
地元の伝統的な音楽スタイルと、聴いて育ったというヒップホップやR&B、ロックンロールのテイストを上手く取り入れながら作られたこの作品。特徴的なギター・フレーズと、リズム、そしてコーラス・ワークが耳に残る。特に印象的なのは1曲目の「Soubour」と3曲目の「Al Hassidi Terei」だろう。アフリカン・ビートの気持ち良さと、グラッと燃えるようなロックンロールの相乗効果が生むグルーヴは、懐かしくもあり、新鮮に聴こえるだろう。
自らのバンド名に部族の名と“ブルース”を背負った彼ら。ブルーハーツは昔、「ブルースをけとばせ」と歌った。でも、ブルースは一生付いてくるものだ。時に蹴飛ばし、時に寄り添う。遠いアフリカの地からやってきた彼らもまた、ブルースを蹴飛ばし、寄り添いながら歌い続けるのだろう。そんな彼らが奏でるオルタナティブ・アフリカン・ロック、是非一度生でも体感してみたい。(text by 高木理太)
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PROFILE

Songhoy Blues
12年1月に起きたマリ北部紛争を乗り越え、ソンゴイ族であることに誇りを持つ4人の若者、Aliou Touré(Vo)、Oumar Touré(G)、Garba Touré(B)、Nathanael Dembélé(Dr)で結成したブルース・バンド。伝統と現代、国産と外国産、若さと古代がブレンドされたサウンドは聴く者の心を躍らせ、ブライアン・イーノ、デーモン・アルバーン等著名アーティストも大絶賛。