
トランプ米大統領による「関税」が世界を揺るがせています。各国を相手に高い税率の関税を導入したかと思えば、一転して90日間の一時停止を決定しました。トランプ政権の関税政策は目まぐるしい展開を見せていますが、そもそも関税とはどのような役割と仕組みを持っているのでしょうか。知っているようで知らない、関税の「そもそも」をやさしく解説します。
「トランプ関税」の経緯を整理
トランプ氏は今年1月に正式就任した後、「米国の産業を守る」として、関税を武器にして矢継ぎ早に政策を決定してきました。わずか3カ月足らずながら変化が激しく、経緯を追いかけるだけでも大変ですが、まずは主な動きを整理しておきましょう。

トランプ政権は、米国の巨額の貿易赤字を減らし、国内産業を保護・育成することに最大の狙いを置いています。そのためには経済のグローバル化を支えた自由貿易体制の変革にも手を付け、関税を引き上げていくというわけです。
同時に、トランプ氏は「ディール(取引)」という語句を盛んに使いながら、米国に協力し続ける国に対しては良い扱いを続けるとの意図も示してきました。そして、矢継ぎ早の関税政策の行方として見えてきたのが「中国の孤立化」です。
相互関税第2弾が発動されると、直後に「相互関税第2弾の90日間停止」を表明。一方では、報復関税を打ち出した中国を標的として、さらなる関税の引き上げを決定したのです。
友好国も含めて全世界を対象に「関税を引き上げる」と宣言する一方、ただちに報復措置を講じなかった国々には「第2弾」を延期。そのプロセスのなかで中国を孤立させているのです。
中国が国際社会での影響力を急速に増す中、トランプ政権は各国に踏み絵を迫り、「中国に付くのか、米国に付くのか」を判断させているのかもしれません。