2025-02-26

なぜフェミニストロックスターになれなかったのか

ロックミュージックは反骨精神象徴だった。

社会の抑圧に抗い、既存の秩序に反発し、ルールを破ることで「自由」を叫んだ。

エルヴィス・プレスリーが腰を振れば、それは性的解放メッセージになり、ジョン・レノンが「Imagine」を歌えば、世界平和象徴となった。

ロックスターは常に”支配者”に向けて中指を立てる存在であり、だからこそカウンターカルチャー旗手として崇められた。

フェミニズムもまた、既存価値観に対するカウンターであり、社会構造に挑戦し、女性自由を求めてきた運動である

それならばロックスターと同じく、フェミニスト社会英雄になってしかるべきだったのではないか

だが、実際にはそうならなかった。

ロックスターはカリスマとして崇められ、一方のフェミニストは”面倒くさい人”、”怒りっぽい人”、”被害者意識の塊”と揶揄されることも多い。

なぜ、このような違いが生じたのか?

なぜフェミニズムロックのようにカウンターカルチャーとして熱狂的に支持されることがなかったのか?

その理由について、これから述べていく。

権力に対する反抗か、それとも要求

ロックスターの反骨精神は、端的に言えば「Fuck you!」の精神である

彼らは体制に反発するが、何かを要求するわけではない。

しろ、「俺は俺の好きなように生きる、お前もそうすればいいじゃないか」と突き放す。

からこそ、多くの人が共感できた。

ロック自由音楽であり、全ての人に向けられたメッセージだった。

対してフェミニズム運動は、社会要求を突きつける。

女性にも平等権利を」

性差別をなくせ」

ミソジニーをやめろ」と訴える。

これは極めて正当な要求であり、当然の権利の主張である

だが、残念ながら”要求する”という行為のものが、しばしば”鬱陶しい”と受け取られてしまう。

カウンターカルチャーとして機能するためには、「俺たちの好きにやらせろ」というノリのほうが支持されやすい。

しかし、フェミニズムは「社会を変えろ」という主張を含むため、「他人の行動を制限するもの」として捉えられやすい。

この構造の違いが、ロックスターのようなカリスマ性を獲得できなかった一因である

フェミニズムの敵は、社会全体

ロックの敵は、基本的権力だった。

国家であり、学校であり、親であり、警察であり、宗教だった。

まり、明確な「敵」がいたのだ。これは共感を生みやすい。人は、共通の敵がいると団結する。

しかし、フェミニズムが戦っているのは「社会全体」だ。

性差別国家特定組織問題ではなく、社会のあらゆる場に根付いている。

まり男性だけでなく、女性自身もその価値観の一部になっている場合がある。

敵が明確でない戦いは、支持を得にくい。

たとえば、パンクロッカーが「腐敗した政府をぶっ潰せ!」と叫べば、それは分かりやすく、共感を呼びやすい。

しかし、フェミニズムの主張は「社会のあり方を根本から変えなければならない」という構造的な批判になるため、「今の社会適応している人々」から抵抗が生まれしまっているのだ。

”楽しさ”か”道徳”か

ロック純粋楽しい

音楽を聴いて、踊って、叫んで、解放される。それがロックの魅力だ。

しかフェミニズム議論基本的に「道徳的」な話になりがちである

「これは間違っている」

「これを正さなければならない」

等といった倫理的な話になりやすく、どうしても説教くさいと思われてしまう。

人々は”楽しさ”には簡単に乗れるが、”道徳”にはなかなか従おうとしない。

環境問題がそうであるように、「正しいことをしよう」と言われると、人は逆に抵抗したくなる。

フェミニズムが求めているのは社会進歩であり、それは間違いなく正しいのだが、”楽しい”という要素が欠けていたために、カウンターカルチャーになりにくかったのではないかと考えらえる。

カリスマの不在

ロックスターには象徴的な人物がいた。

エルヴィス・プレスリージョン・レノンカート・コバーンパティ・スミス……彼らは「個」でありながら、「運動」の象徴になった。彼らが歌うだけで、何かが変わるように思えた。

一方、フェミニズム組織的な運動として発展し、多くの優れた論者や活動家を生み出してきたが、ロックスター的なカリスマには乏しかった。

個人の魅力で人々を熱狂させる存在が少なかったため、ムーブメントとしての盛り上がりに欠けた。

カリスマ的なアイコンの不在は、フェミニスト宗教的な尊大さを抱かせるための教示としての、大きな魅力の欠損へとつながったと言えるだろう。

  • 長いこと書いてるけど 共感の差だろ 男社会であろうと政府による抑圧は嫌だ、自由が欲しい でも男社会に女を入れて女を男と同じに扱えと言われたらNO。それは男にとって不自由だか...

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