仕事で会議資料を作成するなど、3人以上からレビューされるドキュメントを書くのは大変だ。複数の引力が相互作用し、三体問題のようだ。ここでレビュアーごとに、どういう観点で資料の修正を求めてくるかを大雑把に類型化したい。
例えば「大聖堂を建ててます(=レンガを作ってます)」というケースがあったとする。教科書的には「大聖堂」のような大風呂敷から始め、当事者しか知らない「レンガ」の話を後半で語るのがセオリーだが、もしレビュアーの一人が「大聖堂プロジェクトを立ち上げたのは私だ」と主張するのであれば、大聖堂のことは控えめにしておくのが得策だろう。面倒なのは、大聖堂を立ち上げた本人ではなく、部下が忖度して匙加減するところだ。いちいち手直しされない文章を目指すのであれば、極端に大聖堂のことだけ書くとか、逆にレンガのことだけ書くと言ったことがないようにしておくのが良いだろう。
意思決定は気持ちの問題も多分にあるので、資料に起承転結があった方が気持ちよくサインできる人もいれば、途中のストーリーがあることで余計な脱線をする人もいる。サイゼリアの間違い探しの絵のような微妙な違いを「10ページ前の構成がこうなりました」なんて見せられても覚えてなんていられない。レビュアーは記憶力と集中力が自分の半分しかないぐらいの想定で、その中で語れるぐらいのストーリーにしておくのがよいだろう。
例えば桃太郎が鬼退治に行くことを、お爺さんとお婆さんから説明を求められたとする。そのとき「鬼が村人を困らせているから」と言う答えは、お爺さんが求めている情報なのだろうか。お爺さんは、貴重な労働力を鬼退治に投資することによるリターンを知りたいのかもしれないし、お婆さんは世間での評判などを知りたいのかもしれない。もし会議でテンプレが用意されていれば、そのテンプレの通り書くべきだ。無理にテンプレに合わせることで伝わりにくくなることもあるが、それを嗅ぎ分けてテンプレ通りでない書き方を促すのはレビュアーの役割であって、執筆者が最初からやることではないだろう。