(写真:代表撮影/picture alliance/アフロ)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

「貿易戦争に勝者はいない」

[ロンドン発]ドナルド・トランプ米大統領が「相互関税」を口実に仕掛けた貿易戦争に対し、キア・スターマー英首相は4月3日、ロンドンの首相官邸で英国のビジネスリーダーに「英国の利益のために行動する。働く人々の懐にお金が入るようにする」と約束した。

4月3日、ビジネスリーダーとの会合に参加した英国のスターマー首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 トランプ氏が地球規模で発動した「相互関税」により米国を含めた世界経済に深刻な影響が出るのは必至。スターマー氏は「貿易戦争に勝者はいない。既存の貿易関係を強化する協定の交渉は継続しており、英国にとって最善の協定を勝ち取るために全力で戦う」と宣言した。

 英国への関税率は「最低基本関税」の10%。スターマー氏は「ニューレイバー」(新しい労働党)のブレア政権を支えた元外交官ジョナサン・パウエル氏を首相の国家安全保障顧問に、ピーター・マンデルソン氏を駐米大使に据え、“第2次トランプ台風”に備えてきた。

 ウクライナ和平交渉で露わになったトランプ氏の脱欧州戦略を念頭にスターマー氏は「国防や安全保障と同様に経済や貿易においても世界が変化していることを理解する必要がある。新たな時代を迎えつつある。現実主義を貫き、冷静沈着に焦点を絞り、国益に専念する」と誓った。