ステイホーム「全集中」 成果あれこれ【NEXT特捜隊】
新型コロナウイルスの感染拡大から約1年。「ステイホーム」の推奨で在宅時間が長くなる中、新しい趣味や活動に「全集中」で取り組む人がいる。静岡新聞NEXT特捜隊(N特)の呼び掛けに応じた4人のエピソードを通じて、不自由な日常を前向きに、彩り豊かに変える方策を考えた。

■孫へ本気のダンス動画 掛川市 深田譲さん(69) 幸子さん(67)
関東に住む子どもと孫に、全く会えなくなりました。「こんなご時世でも思いきり笑ってほしい」と思い、夫婦で本気のダンス動画をつくりました。
動画は約1分半で4種類。誕生日祝いや受験の応援など、テーマに合わせて選曲し、動画投稿サイトをお手本にして振り付けを練習しました。着ぐるみ、親戚から借りた学ラン、たんすに眠っていた着物…。衣装も毎回変えました。
一番苦労した曲は、高校野球の大会歌「栄冠は君に輝く」。テンポが速かったのでお手本を何百回も見返し、冬でも体が温まるくらい全集中で繰り返し練習しました。おかげで持病で上がりにくかった肩が上がるようになり、キレのあるダンスを撮影できました。
お手本が高校生の振り付けを習得するのは大変でしたが、今思い返すと製作過程も楽しかったです。動画を見た子と孫からは「感涙」「最高に幸せ」との感想をもらいました。ことしこそ動画でなく、本当に会いたいです。
■悔しさ糧に腹筋育てる 静岡市駿河区 大高彩さん(18)
昨冬、黒蜜タピオカミルクティーにハマり太ってしまいました。参加する演劇プロジェクト「ラウドヒル計画」の稽古がコロナ禍で休止、高校も休校に。その後、私の「自担(じたん=応援するタレント)」が活動を自粛しました。
八方ふさがりの悔しさを筋トレにぶつけました。目標は、自担のように腹筋をバキバキに割ること。「足パカ」「プランク」「クランチ」など筋トレのメニューを毎日2時間頑張りました。でも一向に効果が出ず、くじけそうになりました。
心の支えになったのは自担。「会えるわけでも見せるわけでもないけれど、自担に褒められる体をつくりたい」。頭を持ち上げないと見えないおなかの上にスマホを置き、自担の動画を見ながら全集中で腹筋運動しました。
トレーニングを1カ月半続けたら、腹筋が六つに割れました。自担も活動再開しました。今でも「筋肉痛は筋肉からのプレゼント」と思い、筋肉を育てています。

自担の動画を見ながら筋トレに励む大高彩さん=静岡市駿河区
■手芸に没頭 作品次々と 静岡市清水区 山口芳枝さん(68)
私にとってステイホームは苦しくもありますが、新たな発見もありました。一番の趣味の歌を歌うことができないのが残念。2番目の韓国語の勉強より、自宅で一人、全集中できたのが手芸でした。
以前から子どもの洋服を縫ったり、ボランティアのバザー用品を作ったりして我流で楽しんでいました。コロナが流行する直前、毎年一つ作ろうと思っていた干支(えと)の飾りが自粛期間中に十二支そろい、孫のために作ったひらがなとアルファベット文字のサイコロ70個、バザー用の花のリース、毛糸のケープやセーター、帽子など次々と出来上がりました。
コロナ禍で一番感じているのは閉塞(へいそく)感。かといってその気持ちは長続きせず。家の中でできる趣味があることが救いです。SNS(会員制交流サイト)で全国にいる歌仲間と近況を伝え合うことも。今では生地はほぼなくなってしまい、レース糸と毛糸が少し。また作りたいものを見つけたいと思っています。

ステイホームの1年間で、山口芳枝さんが創作した手芸作品。「閉塞感を和らげてくれた」と話す=静岡市清水区
■読書習慣 時代小説70冊 磐田市 永島厚志さん(65)
北海道の礼文島や利尻島、鹿児島の屋久島など、夫婦で旅をする計画がありましたが、すっかり白紙に。残念ですが、仕方がありません。ひたすら自宅周辺で過ごした2020年でした。
4月下旬、ふと手に取ったのが叔母から譲られた佐伯泰英さんの時代小説「交代寄合伊那衆異聞」シリーズ全23巻。幕末を生きる侍の、スケールの大きな冒険譚(たん)です。こんなに面白い小説があったのか-。夢中で読みました。現代小説しか読まなかった私にとって新しい世界が開かれた思いでした。
時代小説を積み上げて、気が付けば70冊以上。葉室麟さんの小説には何度も泣かされました。主人公に自分を重ねてしまうんです。
これほど読書に打ち込んだ年もないでしょう。読む時はテレビはもちろん、換気扇の電源も落として全集中。静けさをつくり、小説の世界に身を沈めます。読んだ本はスマートフォンのアプリ「ビブリア」に登録。自分の読書史を振り返る楽しみも覚えました。

時代小説を熟読する永島厚志さん=磐田市
N特がLINEなどを通じて募った「在宅時間増による成果」には21件の情報が寄せられた。取材した4人以外にも、こんな有意義な“活動”が。
■洋裁に挑戦 静岡市清水区 会社員 Mamiさん(55)
コロナ前はたまぁ~にやっていた洋裁を昨年は全集中でやっていました。布地はネット購入し、ワンピース、ブラウス、キャスケット、エプロン等。本当に毎週、ミシンに触っていました。今年のステイホームは和裁にチャレンジしてみます。和裁も本を購入し、独学でまずは浴衣を作り始めました。まだまだ下準備の段階ではありますが。

■孫とビデオ通話 清水町 主婦 太原唱子さん(72)
私たちはシニア夫婦で、子ども3人は首都圏に住んでいます。昨夏から毎日、小学1年と3年の孫からビデオ通話が発信されて来るようになりました。孫が先生で、私たち夫婦は生徒。パタカラ体操、アイウエオ体操、あいうべ~体操に取り組み、挨拶の後はお互いの今日の出来事を報告し合います。そして1番の楽しみが、孫とじいじが同じ本を使っての間違い探しです。息子にとっては私たち2人の安否確認であり、私たちにとっては孫たちと楽しい会話が元気の素になっています。

■おうちイベント満喫 伊東市 団体職員 山本芳明さん(38)
ステイホームする中で、子どもと過ごす時間も以前より多くなりました。そのような中、ちょっとした工夫で家の中でできるイベントを一緒に考える楽しみもできました。
キャンプ、イチゴ狩り、七夕飾り、節分…。節分はリアリティを追求しました。子どもと嫁の反応は言うまでもなく、強烈な印象を残した感じです。

■干し芋おすそ分け 袋井市 主婦 中山典子さん(50代)
在宅時間を利用して自家製の干し芋を作りました。作っている時は、蒸したサツマイモの端っこをつまみ食いしたり、また乾燥していく様子も毎日楽しんだり。何より出来上がった干し芋が美味しくて大満足でした。何回もチャレンジし、おすそ分けしてもなかなか好評だったんですよ。

■和傘作り楽しむ 静岡市駿河区 会社員 はもんさん(55)
おうち時間にはマスクを作ったりしましたが、久しぶりに折り紙遊び。
作るのは和傘ばかり。そこそこ楽しんでいます。

■量産カラフル折り紙 長泉町 主婦 鈴木真澄さん(53)
ユニット折り紙にどっぷりはまった私。友人とLINE中に「毎日何して過ごしてる?」の問いに「毎日折り紙をしてるよ」と話すと、「折り紙の行き先は?」と尋ねられ、「ほんと!それな笑笑」と答える。「行き先がないのに折ってるって凄っ!」と言われ、「今やテーブルに山盛り状態」と返す。目的がないわけじゃない…。「コロナが鎮まりますように」と切実に祈りを込めながら手を動かす。おかげで右腕が名誉の腱鞘炎。まん丸い形にするには30ピースを組み上げ、一つのユニットを作る。その仕上がりは何とも美しく太陽の輝きのように希望に満ち、キラキラして見えるのは私だけかっ笑 行き場のない彩り、鮮やかな折り紙たち。「嫁入り先」が見つかると嬉しいです。

■屋根裏をジム化 静岡市葵区 CHI→さん(53)
健康器具を通販で買ってプライベートジム状態でした!でも今はオブジェ化して、多分数年後は「メモリー オブ ライフ」博物館になっていると思います。屋根裏部屋で狭いですが、漫画がたくさんあるので読みながら自転車、ワンダーコア、骨盤矯正。体幹を鍛えます。

■美味しいものを食べるために走る 御殿場市 リサーチャー望月英史さん(44)
ステイホームで、体重70㎏を超えた翌日から走り始めました。モットーは「美味しいものを食べるために走る!」。始めは走ってすぐに膝が痛くなり、歩いたり走ったりの繰り返し。家族や友人と一緒に走りました。2カ月目から足腰が痛くなくなってきて、晩酌も減りました。半年経つと筋トレも加え、10㎞走れるように。今年の1月までに、体重70.0㎏→56.7㎏、腹囲86.3㎝→76.5㎝、距離30㎞/月→110㎞/月。今でも毎晩ストレッチ。走れない日は筋トレをしています。美味しい食事を食べて、走った記録と一緒にSNSに投稿。遠くにいる友達が走り出したり、お互い応援し合ったりしてこれもまた楽しいです。新しい友達もできました!

食事内容とランニング写真をSNSに上げるのが日課
■こつこつリモートヨガ 静岡市駿河区 主婦 山本恵子さん(77)
地域のヨガ教室が開催されず、私の身体がゴワゴワに! 昨年9月頃からリモートでお試しヨガが開催されるとのことで、参加させて頂きました。リモートも問題発生でなかなか繋がらず、先生は苦労されたと思います。喜寿の私にはやはりトラブル発生で音無し、画面無しの時もあってなかなか大変! 少しの努力も無駄にならないのではと、4~5人で参加しています。早く皆で顔を合わせながら、お喋りしながらのヨガ教室が開催されることを願っています!!

■ウクレレに挑戦 浜松市中区 パート トミーさん(50代)
ウクレレを始めました。教則本と首っ引きで弾き方を覚え、YouTubeの動画にも助けてもらい、だんだん欲が出て、グループレッスンに月2で通うようになりました。少しでも上達することが喜びで、何より音に癒されます。この先、歩くのが不自由になったり、お金がなくなったりしてもずっと続けられると思うと、ウクレレとともに年をとっていくのが楽しみです。
