住宅ローン、変動金利も上昇 固定金利とどちらを選ぶ?
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住宅ローンを借りるとき、必ず考えるのが「金利タイプ」です。大きく分けて変動金利型と固定金利型という2つのタイプがあります。さらに固定型には借入時の金利が完済まで変わらない全期間固定型と、当初10年など一定期間の金利を固定にした後、変動金利になる固定期間選択型に分かれます。「年○○%」という金利の数字を比較するだけでなく、それぞれの特徴をよく理解し、自分の家計に合った選択をすることが大切です。
住宅ローン利用者の約8割が変動金利を選択
住宅金融支援機構の調査によると、新たに住宅ローンを借りる人のうち約8割が変動型を選んでいます。変動型の方が固定型より金利が低いため、同じ額を借り入れる場合、当初の月々の返済額を固定型に比べて抑えることができるからです。
長期固定ローンの代表格である住宅金融支援機構の「フラット35」の金利は年1%台後半ですが、変動型は大手銀行やネット銀行で年0.4%前後となっています。変動型と固定型は、それぞれ異なる金利をベースに決まります。
変動型は政策金利が影響
一般に、住宅ローンの変動型の金利は短期プライムレート(短プラ)がベースとなります。短プラは、各金融機関が返済能力を高く評価する企業に、1年未満の期間でお金を貸す時の金利です。日銀の政策金利の影響を受けやすく、2009年以降は都市銀行の最頻値で年1.475%でした。日銀の政策金利の引き上げを受け、2024年9月以降は年1.625%となっています。
多くの銀行は、短プラに1%程度を上乗せして変動型の「店頭金利(基準金利)」を決めます。ここから「優遇幅」としてサービスで金利を引き下げ、わたしたちが借り入れる金利(適用金利)が決まります。優遇幅を巡る競争が近年、銀行間で激化し、結果として変動金利は0%台前半にまで下がっています。
変動型の金利は、多くは半年ごとに見直されます。短プラが上がれば連動して適用金利も上がり、住宅ローンを借りている人にとっては利息の支払い負担が増すことになります。

固定型は長期金利が影響
一方、新規向けの固定型の金利は、長期の国債利回りが目安となります。おおむね長期金利が上がれば新規向けの固定型の金利も上がり、長期金利が下がれば下がります。ただ、いったん住宅ローンを借りれば、全期間固定型の場合、返済期間が35年であっても借りたときの金利がずっと続き、返済中に金利が上がったり下がったりしません。
金利の上昇局面では、長期金利は短期金利に先行して上がる傾向があります。「最初は変動型で借りて、金利が上がり始めたら固定型に借り換えよう」と思っても間に合わない可能性があることに注意しましょう。
変動型に「5年ルール」
足元では日銀が追加利上げに動くとの見方が強まっています。住宅ローン金利への影響はどうなるのか気になるところです。
変動型では金利が半年ごとに見直されます。ただ、メガバンクや地方銀行などで住宅ローンを借りた場合、毎月の返済額の見直しは原則5年ごととする「5年ルール」が設定されているのが一般的です。このルールがある金融機関では、年に1度の基準日を5回迎えるまで、金利が変わっても毎月の返済額は変わりません。
毎月の返済額を見直す際は、新しい利率とローン残高、残期間で再計算します。毎月の返済額が増える場合にそれまでの返済額の25%増を上限とする「125%ルール」という仕組みもあります。

5年ルールと125%ルールは、金利上昇時にローン返済額が大幅に増えて直ちに家計が圧迫されるのを防ぐ効果がありますが、デメリットもあります。金利が上昇しているのに毎月の返済額が変わらないと、返済額に占める利払いの割合が大きくなり、元金の返済が遅れます。結果として返済期間を通じた利息の負担額が増え、総返済額が膨らむことになります。
一部のネット銀行では5年ルールや125%ルールを設定していません。金融機関を選ぶ際にはルールの有無を確認しましょう。
繰り上げ返済できる備えを
多くのファイナンシャルプランナーは「変動型で借りる場合は、手元の貯蓄を厚めにしておくこと」と助言します。将来、金利が上昇したとき、利払いが増える可能性があるからです。「固定型より安いから」というだけで飛びつかないよう気をつけましょう。
固定期間選択型は返済開始から一定期間は固定金利、その後は変動金利になる「固定特約型」の金利プランです。こちらも変動型と同様、将来の金利上昇リスクに備える必要があります。
■住宅ローンについて詳しく知りたい方はこちら わかりやすく基本を解説

住宅ローンとは、自宅購入やリフォーム、借り換えの際に利用できるローンで、購入物件を担保に金融機関から資金を借り入れ、長期間にわたって返済します。住宅ローンの基本をわかりやすく解説し、最新ニュースをお届けします。
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