歌舞伎「文七元結」「芝浜」、歳末の生活感 上村以和於
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暮れも押し詰まったこの回、『文七元結(もっとい)』に『芝浜の革財布』を選んだのは、かつての日本人の歳末の生活感をこれほど切実に描いた芝居はないだろうと思うからである。それほど遠い過去ではない。「掛取り」という、私たちの日常生活がコンビニとスーパーマーケットに覆い尽くされるようになるまでは、ごく普通に行われていた商習慣がもたらす、悲喜劇の種でもあった。
『掛取り』というそのものずばりの題の落語があ...
長年にわたって歌舞伎の舞台を見続けている演劇評論家の上村以和於氏が、名作・名場面に隠されたエピソードや登場人物の横顔を詳しく紹介します。