価格は市場が決めるもの。高関税を受けて外国製新車の供給が細れば需給バランスが崩れます。結果、米国製も含めて新車価格の実売価格は上昇するものだと考えます。コロナ禍の時と類似した現象なんですが、新車、中古車、アフターパーツ含め需給タイト化で実売価格が大きく上昇するでしょう。露骨なMSRPの引き上げは日本車メーカーは無いと思います。そもそも輸入車と米国内生産車で二重価格になることはないです。MSRPの6％にも達し、平均で3,000ドル以上支出しているインセンティブ（値引き）は大きく下落すると見ています。数量の減少と価格効果のバランスを見極めていくことが重要です。

個人的に外国人主導で劇的に若返った日産新執行部に期待を寄せています。メディアとのラウンドテーブルでは商品企画で結果を出せなかったことを攻める傾向があったようです。しかし、ベテランぞろいのかつての執行幹部から見れば46歳のイバンはほぼ子供扱いの状態で、ラテン的に明るい彼の意見や声は届かなったと察するところです。e-Powerを中核に据えた決断は別の執行幹部の強い意見の結果です。カーガイと言われる彼が主導するいきの良い日産の新商品は早くても27年度以降になるでしょう。今後2-3年間は過去の経営陣の決めた商品が続きます。厳しい時期を乗り越えなければ未来に向かえないのが現実です。

当然の刷新でしょうね。ECメンバーは殆ど入れ替わり、殆どの日本人経営メンバーが去ります。元CFOがECメンバーに残るという不可解なところもあります。昨年の段階での指名委員会、2月の取締役会の判断を含めて経営は混迷し続けています。ここは流れを変える重要な転機でしょう。エスピノーサ次期CEOは46歳と若くエネルギッシュで親しみやすい人当たりのいい人物だと聞いています。大胆に経営を改革して欲しいものです。親ホンダと見られたパパンCFOではなく、エスピノーサ氏が選ばれました。まずホンダとの再交渉でどういった判断を下すか、大いに注目しています。

2024年の米国市場は、メキシコ・カナダから自動車で1,097億ドル、自動車部品で1,006億ドルの自動車・自動車部品を輸入している。メキシコ・カナダに25％の関税が付加されれば米国販売する車両の平均コストは台あたり2,368ドル上昇する。これは平均取引価格に対して5％を超えており、需要サイドで全て受け止められるものではない。OEMがすべて関税負担すると仮定すれば、総額2.2兆円の関税負担となる。25/3期計画営業利益の32％に達する。トヨタ、SUBARUの影響は20％程度だが、ホンダ、マツダは50％、日産はすべての利益を失う。米国経済を考慮すればいつまでも高関税を続けられる状況にはない。

喧嘩は両成敗と言います。どっちが良い悪いという論調にはしたくありません。危機意思の温度差に加え、構造改革を進めるスピード感においても意見は一致できず、ホンダの「理詰め」と日産の「プライド」が衝突し、最後は感情的な幕切れとなった様子ですね。日産の「プライド」とは関係の無いルノーからの取締役2名も破談に賛成であると聞こえており、その真意にも関心があります。どういう別れ方をするのかにも注目しています。日産は自主再建策の合理性、ホンダはSDV戦略を遂行するための新戦略という重要な説明責任を果たしていかなければならないでしょう。さもなければ2人のCEOの社会的信頼に暗い影を落とすでしょう。

どの様な野望を心に秘めているかは正直わかりませんが、ルノー以外のステークホルダーから肯定的な返答をもらえていない鴻海にすれば、34％程度の資本・業務提携からスタートすることは進めやすい。ルノーは高値で売ることに執着しており、それが実現できないホンダとの経営統合よりも、鴻海と実現することを望んでいる可能性が高いでしょう。ただし、信託している20％の売却目的の日産株式は日産合意がなければ勝手には売却できないものです。日本政府もこれ以上日産を放置していることもできません。合理性の高い支援策を検討する可能性もゼロではないでしょう。統合崩壊後のドラマは悲劇か喜劇か。

記事にある固定費/変動費削減が実現できれば損益分岐点は現在の325万台から290万台に下がり、目標とする350万台を売れば5％のROSを確保、ぎりぎりの将来投資と株主還元が可能です。320万台を前提にすれば2~3%のROSに下落し、再び危機となるでしょう。ブランドの再構築も含めた魅力ある商品・技術が不可欠なのですが、そもそも日産の価値って何なのでしょう？「技術の日産」「モーター制御」「やっちゃえ日産」などなどキャッチはありますが、これらは日産にとってよい車に過ぎず、消費者のいい車は不在です。新興勢力が台頭する現在の市場において、日産の提供価値の再定義は不可欠です。問題は実現可能性ですね。

破談となったわけですが、どういった別れ方をするかは今後も注視が必要です。様々な選択肢が残っています。しかし、誰の目にも日産の再建策は不十分に映り、その甘さと遅さにホンダが統合を不安視し、自らが経営に直接参画できる買収提案を出しましたが、日産の選択は「自主独立再建」の道となりました。国内にビッグ２を構築し、様々な構造改革を推進し世界における産業競争力を確立するというシナリオは泡沫夢幻となったわけです。日産取締役がいかなるロジックで自主独立再建を可能と判断したか、その説明責任は重いと考えます。個人の意見として自主再建の確度は低く、新たな再編・アライアンス劇場の幕開けでもあります。

株価急落はエクスペクテーション・コントロールの失敗。CFOとIRは深く反省すべき。記事内に「合流可否によって左右」とありますが、もう展開は概ね予測できるものだと思います。経営統合はホンダと日産2社で行うもので、三菱自は統合には合流しないと思います。統合会社へは深く関与を続け、最大の関心事は、①現在日産自が保有する議決権27％の株式を誰がどう所有するか、②アライアンスシナジーがホンダ、日産の経営戦略一元化でどこまで拡大するかです。ホンダ、日産の協議がどう進展するかを前に三菱自サイドが先走る蓋然性は無く、まあ様子見というところでしょう。

写真のモデルは2026年に第一弾で投入される0シリーズのC-SUVですので、5万ドルはするモデルですので混同しない方が良いです。ホンダの従来計画では2026年に0シリーズを3モデル投入します。デザインが凄いサルーンとインド生産で始まる廉価版エースが続きます。現在の第3世代で3万ドルを切るEVモデルを「北米市場」へ投入することは非常に困難だと思いますので、スクープの信憑性は慎重に考えたほうがいいかもしれません。もし、エースを北米投入する話ならちょっとした驚きですね。GMのエキノックスは3.1万ドルのMSRPからありますが、実際にはオプションがつけば5万ドル近くです。

この記事は正しく整理されていると思いますが、多くのメディアが統合への関与の意味を少し取り違え混乱した報道内容が目立ちます。三菱自リリースには、「経営統合への参画、関与、シナジーの享受などを含めて検討する」とされており、統合参画はお付き合い程度のお話で、本音では関与とシナジーの享受が主題に合ったと考えています。従って、図にある②（持ち株会社が出資）に資本関係を修正し如何に統合会社とシナジーを生み出すかが論点であったと思います。そもそもホンダ・日産の経営統合への判断を1月内に下せるような状況には無いようです。また、日産側はそう簡単に三菱株放出に合意するようでもなく決着にはもう少し時間が必要です。

『米国のEV比率「30年でも10%以下」か』という小見出しが目立ちますが、個人的にはそこまでEVシフトを悲観的には考えていません。むしろ、自動運転技術やAIの普及を支援する政策が技術革新を加速化させ、結果としてEVシフトは確実に進行するだろうと考えます。USMCAの枠ぐみを超えたメキシコ、カナダへの関税は重大な不確定要素です。そうはいっても、実際にいつどれだけ関税が賦課されるのかは正直現段階では何もわかっていません。目先の混乱に動揺せず、トランプ2.0の次元をはるかに超えた重大な産業の構造転換で生き残れる自己改革をしっかりと実施することが大切だと考えます。

CESの帰りに1月開催に再ぶ日程変更したデトロイトショーに寄りました。その時にこの記事の川上記者とすれ違ったのですが、もう記事になっているのですね。『政治ショー』たるものが過去のデトロイトショーでした。何人かのメーカー説明員へヒアリングしましたが、EVの需要は足元は非常に厳しく、ICE車への説明機会を増やしているとのことです。EVは申し訳程度にフロアに配置され真ん中を陣取るのはエンジンのピックアップとSUVです。米国メーカー経営からは全く情報発信が無く、記事の通り沈黙を保っています。「何も言わない」という意味で一見政治離れしたように見えますが、それ自体がとても政治的な姿勢とも言えるでしょう。

現地で発表を拝見しました。45分のカンファレンスは章男会長の15分のプレゼンテーションだけで幕を閉じます。「ウーブンシティへ正式に招待します」の一言でプレゼンが締めくくられ、招待状がもらえるかと期待しましたが出口には何もありませんでした。テスラのロボタクシーディのド派手さとは対極的でロボットと一緒にダンスするシーンはありません。ドローン、見守りロボット、eVTOLなどの5年前のコンセプトに加え、レーシングクルマ椅子、ドリフト走行する自動運転車などウイットに富む提案もありました。ここはあくまで実証実験、如何に新しいモビリティを我々の町に拡張するかが鍵です。マネタイズ方法も議論が欲しいところです。

ROE20%が正式な経営KPIとなったわけではありません。山本経理本部長がリードする未来のトヨタのあるべき姿を示す目線で、正式決定しているものではないでしょう。これまでの売り切り型のビジネスはROE10～15％が限界。そのビジネスにしがみ付いても企業の発展はありません。保有台数をベースにアセットライトでも稼げる継続課金型のモビリティ産業への発展を支えるために、ROE20%を一つの基準として社員が働き方を変えようという掛け声です。ROEには分母と分子の２つの議論がありますが、今のトヨタは分母の議論には入れていません。分子の議論は2025年のCESでウーブンシティとSDV戦略が語られ始めます。

「スズキはメダカより小さな蚊」などの名言を多く残した鈴木修の経営者人生を振り返る良記事が以下にあります。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC07C0W0X00C21A6000000/ 美学に拘り自身の経営哲学を貫いた人物でした。小さな小さな存在で常に強者から潰されそうな憂き目を味わいながら、しかし蚊のように舞い上がって今の軽とインドの巨人の地位を築きました。トヨタの奥田・張・渡辺元社長が3代に渡ってスズキをたたきのめそうとしても修氏は引くことはありませんでした。万事休すと思われたＶＷとの死闘から奇跡の生還をした時、トヨタの経営は豊田家に戻っていました。その時、トヨタとスズキはドラマチックな運命で絆を取り戻したのです。ご冥福をお祈り申し上げます。

言葉足らずなスクープニュースが先行してしまったため、思わぬ「株安」の不利益を被ったのはホンダの株主でしょう。昨日の会見では三部社長は「日産のターンアラウンドは経営統合の絶対条件」と厳しいくぎを刺しました。日産は本気で再生を実現できるプランと変革を示せなけばホンダという命綱を失いかねません。ホンダは、過剰手元資金はホンダの株主のものであり、日産の株主のものではない、ということでしょうか、1.1兆円（発行済み株式23％）をドーンと統合前にホンダの株主に還元します。規律高い財務方針に株式市場は「あっぱれ」の反応です。

「あらゆる選択肢を検討する」といっても、個人的に売却目的で信託している株はもちろん、15％の日産との相互持合いも含めて基本的にルノーは解消を進めるのがメインシナリオだと考えることが自然だと思います。持ち合いの株をスワップすれば、事実上自社株買いと同じ効果が生まれ、ルノーの株主はそれを望んでいると考えます。株を持ち合わなくてもビジネスアライアンスは進められます。というよりも、現状の両社の関係性で15％を持ち合う合理性は低いと感じます。日産、ルノー共に過去を清算して、自らの生き残りをかけた取り組みに集中することになるでしょう。

様々な企業価値試算のどれをとっても経営統合はホンダ主導になることは自明です。その結果、社長、取締役構成ともホンダがリードします。持株会社は会社の経営最高意思決定と統治の仕組みです。当面、実際の経営はホンダ、日産とも独立性が保たれる可能性が高いでしょう。ホンダが日産を支配するのではなく、ホンダが主導するガバナンス構造の中で日産が自ら再生するという構造と理解します。日産はいい要素をいっぱい持ってます。しかし、現在のカバナンスがその力を引き出せなかったことは明らか。ホンダ主導のカバナンスが日産を再び輝かせることを期待します。