日本経済新聞
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中央大学法学部 教授
パナソニックは、30年間、株価が横ばいだし、積極的に買いたいと思う商品があまり見当たりません。家電は基本的にパナソニックと決めている我が家からすると、歯がゆい限り。昔ながらの高品質で、安心のブランドですが、それを超える何かがない。いずれ韓国や中国のメーカーに駆逐されてしまうのではないかと、心配しています。 言及されているのは、まずはトヨタ。全社にトヨタ流の「改善」マインドを浸透させていけるか。それから、ソニーと日立製作所。パナソニックの素晴らしい部分は継承しつつも、企業体として筋肉質になって、力強く発展していただきたい。たとえ一部の家電製品を切り捨てることになっても。心から応援しています。
赤沢氏は、石破首相との関係が近く、経済再生担当大臣を務めているので、その意味で順当です。しかし、赤沢氏は、経済再生担当大臣以外にも、新しい資本主義担当、賃金向上担当、スタートアップ担当、全世代型社会保障改革担当、感染症危機管理担当、防災庁設置準備担当、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)を務めています。こんなに兼務していて、極めて困難で日本経済の運命を左右しかねないアメリカとの関税交渉に本腰を入れて取り組めるのか。さすがに政敵の茂木氏の起用は難しいとしても、石破政権の中核を担う人材の薄さを露呈しているとしか思えません。この政権が続くことが果たして日本にとっていいことなのか、いよいよ疑問です。
自由貿易主義―保護主義という2項対立で、前者を擁護する議論が広がりを見せていますが、違和感があります。 比較政治経済学では、第2次世界大戦後、ブレトンウッズ体制(IMF-GATT体制)ができた際、国内での労働者の包摂のための経済介入と両立する形で、開放的な国際経済秩序が成立したと理解されています。ジョン・ラギーのいう「埋め込まれた自由主義」です。それは1970年代以降、変動為替相場制への移行、新自由主義の席巻などを背景にグローバル化が進展し、崩れました。 今、必要なのは、過度のグローバル化を排した、国内での平等と両立する形での自由貿易主義、つまり「埋め込まれた自由主義」の復権でしょう。
女性が活躍できない社会であり続けると、日本は衰退するばかり。選択的夫婦別姓制度の導入にせよ、女性議員の増加にせよ、なりふり構わず積極的に推進すべきです。保守派と名乗る右派の人々は、国益に反する主張をしています。本来であれば、2018年に成立した候補者男女均等法の努力義務規定を強化して、各政党に一定割合の女性候補の擁立を義務づけるクオータ制の導入が望ましいと思います。それが難しいとすれば、政党助成制度を改革し、政党交付金を女性議員数割で配分する仕組みを導入するのが有効です。
自民党内で石破おろしをしようにも、総理が粘れば、実現することは困難です。麻生元総理は自身がおろしを仕掛けられた苦い経験を持ち、そう動くとは思えないし、高市氏にしても先の総裁選で敗れてから時間が経ってない以上、退陣を迫りにくい。しかし、石破総理自身、説明に窮し、参院選前に責任をとるという可能性もあります。だから、様子見ということなのでしょう。おそらく最も切実なのは改選を控えた参議院議員。しかし、党内がガタガタすれば、選挙にも悪影響が及びかねません。
野党が言うように、首相公邸での懇親会、面識がほとんどない15人もの一年生議員、議員会館で秘書が渡したという状況から、政治活動ではないと言い張るのは厳しい。しかも、鳥取のカニでも送ったのならまだしも、商品券、かつ10万円も。ポケットマネーというなら、総額百数十万円という金額を考えると、現金で商品券を購入したとは考えにくく、口座の振り込み記録を出せと野党から追及されるでしょう。それを示せないようなら、官房機密費から出したのではないかと疑われます。立件されるかは分かりませんが、支持率をはじめダメージは少なくないでしょう。
法に触れるかどうかは別とし、石破政権には大きな打撃になるでしょう。石破総理はクリーンさや誠実さについての支持が多く、内閣支持率が下がる恐れがあります。政局的にも、高額療養費制度の見直しをめぐるブレ、西田議員の退陣要求などの直後の今回の発覚で、特に参院選に戦えないという声が自民党内で高まってきそうです。野党からも批判が高まるのは必至。早ければ、予算の成立と引き換えに退陣という可能性もあるかもしれません。しかし、石破総理はそう簡単に政権を明け渡さないでしょう。石破官邸がどの程度、危機管理能力があるかが試されます。
記事に書かれている構図でキャスティングボートを握っているのは、衆議院が国民民主党、参議院は公明党です。前国会と同じく、この両党が一致すれば、そこに落ち着く可能性が高いと思います。今回の事案は政治資金収支報告書の不記載であって、企業団体献金そのものの問題ではありません。可能な範囲での徹底的な透明化というのは、内容的にも妥当な線でしょう。
私立大学叩きのコメントが目につくので、書かせていただきます。国立大学のガバナンスは、大手の私立大学に比べて決して良好とはいえません。例えば、最近の早稲田大学の改革は、文科省の顔色ばかりうかがっている旧帝大などに比べて優れているように思われます。国立大学の自主性をもっと高めて私立大学に近づけ、国立と私立を同一の土俵で競わせた方がよいでしょう。中教審の部会で慶応義塾の伊藤塾長が「国公私立大の設置形態にかかわらず、教育の質を上げていくためには公平な競争環境を整えることが必要」と述べ、奨学金の整備を行った上で「国立大の授業料を年間150万円程度に設定すべき」と発言しましたが、一案だと思います。
自民党が「令和版政治改革大綱」を策定していくとのことですが、時宜を得たことだと思います。例えば、「政権交代可能な民主主義」という目標が十分に機能する形で達成されなかったこと、政治主導・官邸主導は進んだけれども官僚制が脆弱になりすぎて日本政治の強靭さが失われたこと、SNSの発達などでポピュリズムの台頭がみられることなど、課題は山積しています。もちろん、55年体制下の「古き良き時代」に戻ることはできません。その一方で「平成の政治改革」を金科玉条のように崇め奉るのも誤りです。 「平成の政治改革」の主導権は自民党が握りました。野党も受け身になるのではなく、積極的にアイディアを出して欲しいと思います。
石破総理が「今の時点では決めていない」としつつも「患者団体の意見を聞いたうえで政府として判断する」と述べている以上、高額療養費の負担限度額の引き上げは凍結されるはず。同時に、高額療養費制度の持続可能性を確保する仕組みについて検討していくことになるでしょう。参議院自民党や公明党が公然と批判していることを考えると、政治的にも凍結以外の選択肢はありません。 年収の壁や氷河期世代の低年金など、様々な社会保障上の課題が浮上していることを踏まえ、包括的に社会保障制度のあり方を考える会議体を作ってはどうでしょうか。維新や国民民主の個別的な政策実現路線に対して、自民党や公明党は大きな構えで対抗すべきです。
この問題については、石破総理は一度、患者負担の引き上げを凍結した方がよいと思います。患者団体の意見を十分に聞いていなかったということに加え、現役世代を含めて最後のセーフティネットである以上、国民の間でも懸念が強いからです。高額療養費制度の持続可能性を考えると、凍結することへの懸念を持つことは理解できますが、持続可能性については立憲民主党も問題を共有しています。自民・立憲両党を中心に合意文書を作り、どういう見直しを行うべきか検討する協議体を立ち上げるのがベストです。参議院自民党の内部からも、このままだと参院選が戦えないという懸念の声が出ています。
ドイツ社会民主党(SPD)が第三党に転落するならば、第二次世界大戦後、初めてのことで、歴史的なことです。ドイツは長年「穏健な多党制」とみなされてきましたが、主要政党が3党から6党に増えるとともに、今回、CDU /CSUとSPDの2大政党という地位も崩れてきていることが露呈しました。小選挙区をとるイギリスでも、2大政党の得票率は低下しており、かつて強固な社会構造に支えられていた西欧諸国の政党システムは、揺らぎが顕著です。特に社会民主主義政党は苦しい。
前原共同代表は先週、2025年度予算案への賛否を来週中ごろに決定すると述べていましたが、その期日を越えてしまう情勢です。維新が慎重にならざるを得ないのは、①昨年、政治資金規正法改正案をめぐって、条文案の丁寧な調整を怠ったため混乱を来たしたこと、②前執行部と現執行部の間の対立が党内にあり、安易な妥協ができないこと、の二つの事情があると思われます。ただ、ここまで来ると、合意は時間の問題でしょう。
通称使用の拡大であっても、婚姻の前後で名前(姓・氏)が変わること、婚姻中に本名と通称の2つの名前を使い分けなければならないことは、煩雑であり、本人の同一性を外部から確認することを難しくします。仕事などの面で社会的な不利益を受けかねず、実際、そうなっています。また、本人のアイデンティティ(自己同一性の認識)も傷つけかねません。 現実に名前を変えているのは、約95%が女性です。これは日本社会で女性活躍が実質的に妨げられていることを意味します。日本の国力を損なっています。「選択的」な夫婦別姓制度にすら反対する保守派は、日本の前向きな変化を妨げ、国力を落とそうとしているのでしょうか。愚かなことです。
国民民主党が党大会で参院選の1人区でも「できる限り候補者の擁立を図る」と決めたことで、いよいよ野党の1人区の候補者調整は難しくなりました。れいわ新選組・共産党に加え、国民民主党も候補者調整に参加しないことになり、立憲民主党と維新の予備選に関する協議も難航しています。 野党の足並みの乱れから利益を得るのは、与党の自民党と公明党です。このままの状況だと、非改選を合わせた参議院での自公の過半数割れはなさそうです。それに対して打撃を受けるのは、立憲民主党と国民民主党の支持団体である連合(特に地方連合会)でしょう。連合は今後、どれだけ調整力を発揮できるか。
財源を無視した歳出の膨張が起きそうなのは、野党の与党への向き合い方に原因があります。閣僚を送り込む「閣内協力(連立)」、閣僚を送らないものの首相指名や予算などでの恒常的な賛成を通じて政権を支持する「閣外協力」であれば、予算全体への責任を共有することになります。しかし、現在の状況は、法案ごとに野党の支持を取り付けて多数派を形成する「パーシャル(部分)連合」です。そのもとでは、財政再建を考慮することなく、自らの政策を実現しようとすることになります。日本の財政状況を考えると、こうした状況が続くことは望ましくなく、参院選を経ても状況が変わらないようなら、与党は連立の枠を広げることを目指すべきでしょう。
就職氷河期世代の低年金問題は先送りできない課題です。国民民主党は氷河期世代対策を打ち出していますし、立憲民主党の長妻代表代行は、私が知る限り、誰よりもこの問題の重要性を理解しています。納付期間の延長案であれ、消費税増税であれ、厚生年金の積立金の流用であれ、政局に絡めず、国民的合意を形成する必要があります。大連立を作るとすれば、掲げるべき旗の一つは、年金制度改革ではないかと思います。
選択的夫婦別姓制度の導入に否定的な保守系の主張で、納得できる理由に出会ったことがありません。子どもの姓については、婚姻時に一つに定めさせるようにすればよいし、家族の一体性が損なわれるという主張も、私の経験からいって全くの的外れ。そもそも、日本の離婚率は同姓制度でありながら高まっているし、著名な保守派の論客でも離婚経験者が散見される。海外は別姓が通例だけれども、それでも家族は成立しています。通称使用の拡大でよいという主張もあるが、それで不都合があるから、経団連は選択的夫婦別姓制度の導入を提言したのではないか。自民党は友党である公明党と歩調を合わせ、導入賛成で党議拘束をかけるべきです。
NHK日曜討論のやり取りにみられるように、自公―国民民主、自公―維新の予算修正協議は、2月中旬にはまとまる方向に進んでいます。立憲民主党については、いくつかの修正を条件に予算を通すのを容認するけれども、賛成することは、まずない。結局、先の臨時国会での補正予算と同じような決まり方になりそうです。ただし、今朝の本紙が総合2面で強調したように、財政規律が過度に緩む形での決着になると、国債格下げリスクや、それに伴う日本企業の調達コスト上昇リスクが高まるかもしれません。大連立を含めて、安定政権を求める声が高まる可能性もありそうです。
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中北浩爾
中央大学法学部 教授
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【注目するニュース分野】現代日本政治、日本の外交
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