2025-03-12

蛇足:妻に養われている増田の馴れ初め編

anond:20250310180429 の続き。

蛇足になるけれど、妻との馴れ初めが気になるという方を数名観測したので、その方たちに向けて書いてみる(届くと嬉しい)。

以下、分かりやすいように、妻のことを仮名で「Kさん」と表記する。

※もちろん、Kは「かわいい」の頭文字である

出会い

Kさんとの出会いきっかけは至って普通であり、エピソードとして別段興味深いものではないと思う。

いわゆる理系男子だった私は、大学院を修了した頃から漠然と「人生パートナー」を求めていた。一人暮らしは気楽だけれど寂しいし、前記事に書いた通り、その家はしばしばゴミ屋敷様相を呈していた。

それに、家庭環境円満だったこともあってか、親しい他者との共同生活は穏やかで心地良いものであるというイメージを私は持っていた。

では、「人生パートナー」とはどういう人物だろうか。私はほんの少しだけ自問した。私の性愛傾向に基づくと、共同生活を送るパートナー女性であることが望ましい。年もあまり離れていないほうが好都合だろうという感覚もあった。それってつまりは「結婚」だろう、というのが、特に深く考えもせずに出た結論だった。

それでは、結婚相手を見つけるにはどうすれば良いのだろう。こんなとき頭でっかち理系男子がすることは一つだ。

そう。私は、「婚活」に関する書籍を読み漁った。ただし、男性向けの書籍全然楽しくなさそうだったので、女性向けのエッセイ漫画とかをあれこれ買って読んだ。面白かった。

実際、読書によって私は様々な知見を得ることができた:

 1. デートの際、食事をするお店は必ず予約すること。お店探しならびに予約は、男性が行うべし。

 2. 食事をともにした場合会計男性が全額出すことが好まれる。女性トイレに行ったタイミングで、スマート会計を済ませるべし。

 3. 女性のおしゃれ靴は、長時間ウォーキングに向いていない。女性を長距離歩かせてはならない。

 4. 初回のデートは、短時間で済ませるべし。カフェお茶をするだけ、あるいはランチだけなどが無難

 5. 女性と話すとき男性積極的に話を振って、女性を楽しませなければならない。

……無理では? 

3とか4は楽勝だが、他は難易度が高すぎるというのが当時の私の正直な気持ちだった。当時の感情を思い起こしてみると、次のような感じである

そもそも外食なんてチェーン店しか行ったことがない。というか、家で食事をするほうが落ち着く(人目がある場所は落ち着かない)ので、チェーン店へ行くことすら億劫であるもっと正直に言うと、私は電話がとても苦手なので、飲食店の予約をするのに恐怖感すら覚える。上記の2が嫌なのも、お金を出したくないとかではなく、なんというか単純に、普通じゃないタイミングで席を立って店員さんに話しかけるのが怖いみたいな感情である。話を振るといっても、話題なんて何も思いつかない。そもそも私は、全然社交的じゃないのに……。

※なお、38歳の既婚おじさん(子持ち)になった今では、もはや何とも思わないので、当時の私の気持ち理解できない人が居ても不思議ではない。もちろん、デートする相手なんて妻しかいないけれど。

さて、上記のような予習を経て実践に備えていた私。お相手探しは極めて受動的だった。

当時はまだ平成だったので、仕事がらみで知り合った人とかに恋人の有無をカジュアルに聞かれたりするのが普通だったのだと思う。なので私は、恋人の有無を聞かれる度に、「結婚相手を探しているので、良い人がいたら紹介してください」と正直に伝えていた。

そうこうするうちに、仕事関係の知人である(年の近い)既婚女性から紹介してもらったのがKさんである

後で聞いた話によると、Kさんはこの知人女性から、「増田くんを傷つけないように」と厳命されていたらしく、内心では(どれだけ過保護やねん)と思っていたそうだ。

顔合わせ&初デート

紹介してくれた知人女性を交えて、仕事帰りに一度、一緒に食事へ行った。このときのことはあまり覚えていないけれど、ともあれKさんと連絡先を交換したことは確かだ。

さて、前述の「婚活5箇条」を覚えておられるだろうか? 1番目を見てほしい。Kさんデートをするなら、私がお店を探して予約しなければならない。うわあ、どうしよう。

……なんてことを考えていると、Kさんからメッセージが。

増田さんは、おすすめのお店とかありますか? なければ、私の知っているお店へ行きましょう(顔文字)」

これにてノックアウトです。ありがとうございました。

というのは半分冗談にしても、前述のように身構えていた私にとって、良い意味で不意を突かれた形となった。Kさんはお店の候補をいくつか挙げてくれて、そこから私が希望したお店を予約してくれた。

というわけで初デート当日。お店の最寄り駅で待ち合わせした。

しかしここで、大変困ったことがある。実は私には軽い相貌失認があり、つまり、人の顔を見分けるのがとても苦手である

私は常識人なので、デート相手の顔を思い出せないことがとても失礼であるのは重々承知している。そのため、駅の改札付近オロオロと周りを見回していた。何だか似たような背格好の女性がたくさん居て、どうすれば良いのかがわからない。

すると突然、後ろから声を掛けられる。振り返ると、にっこりと微笑んだKさんが明るい声で「こんにちは」と言った。本人を目の前にすると、ちゃんと顔が認識できる。(なので、「軽い」相貌失認である)。そうだった、Kさんはこんな感じで、笑顔チャーミングな人だった。

お店に入り、ランチセットを注文。「何か話題を振らなければ」と考える暇もなく、Kさんニコニコしながら話をしてくれる。

今日は晴れて良かったですね」とか、「このお店は〇〇が美味しいんですよ」とか、「近くには△△屋さんとか□□屋さんがあって、見て回るのも楽しいですよ」とか、「少し歩いた先には神社とか広い公園もあるので、この時期はお散歩にぴったりなんです」とか、次から次へと、淀みなく話題が展開していく。私は楽しい気分になって、Kさんが振ってくれた話題に相槌を打ったり質問したりするだけで会話がスムーズ流れることに安心した。

話題さらに、Kさん仕事のこととか、家族のことにまで及んでいく。ちょっとややこしい人間関係に関する話題も、Kさんは明るく楽しげに話をするのが印象的だった。それに、ともすれば愚痴になりそうな内容でも、Kさんの手にかかれば笑い話として昇華されていることに素直に感服した。

(後に判明したのは、Kさんがこれだけ自由に喋りまくれる男性は私が初めてだったらしい。きっと、相性が良かったのだろう)

そうこうするうちに、デザートコーヒーが運ばれてくる。

私は前述の5箇条を忘れていないので、伝票の位置に目を光らせていた。しかし、Kさんトイレへ行こうとはしない。

どうしようと思っていると、コーヒーを飲み終えたKさんが「そろそろ出ましょうか」と言った。私が同意すると、Kさんは颯爽と立ち上がってカバンを手に取り、さっさと伝票をつかんでレジへ向かった。モタモタと後を追う私。

Kさんは、レジに立った店員さんに、「会計別々で!」と元気良く言った。……私は粛々と自分ランチセット代だけを支払った。

お店の外に出て、Kさんと向かい合う。

いや今度こそ、前述の5箇条を思い出す必要がある。彼女との関係を続けるためにも今日デートはこれで解散にしたほうが良いだろう。

……みたいなことを考えているとKさんが、

「お時間あれば、この後ちょっと散歩しませんか?」

と可愛らしい笑顔で言ったので、喜んで同意した。

ランチときと変わらぬ調子で、Kさんのお喋りの勢いはとどまることなく、私たちはあちこちを歩き回りながらたくさん話をした。

昼食時に話題に出た場所は全部まわりきってしまい、結局、3時間くらい歩き続けていた気がする。

その後また、カフェに入って、日が暮れるまでお喋りをして、次に会う予定を決めて解散した。

打ち切りエンド(?)

とまあそんな感じで、Kさんと親しくなって、交際して、結婚しました。

海外出張の合間の暇つぶしに書いていたけれど、そろそろ時間切れになりそうなので、ここまでということで。(期待されていた「馴れ初め」に到達できているだろうか?)

お分かりのとおり、Kさんは、私が学習した婚活5箇条を清々しいほどにぶっ壊していった魅力的な女性でした。いや、魅力的なのは過去形ではなく現在進行系なのですが。

記事への反応 -
  • やっぱ結婚できてるのは、婚活でグチ垂れ流してるような人達ではないんだな。

  • Kさんの素晴らしい行動、この前デートした人にそっくりだ。 増田は学もないから恋愛5箇条なんてものを漠然としか知らなかったけど、ちんたらしてたらお店の予約してくれたし奢ろう...

  • やしな・う〔やしなふ〕【養う】1 自分の収入で家族などが生活できるようにする。扶養する。「妻子を—・う」2 衣食などのめんどうを見ながら育てる。養育する。「孫を大切に—・...

    • いやいや、あんさんめっちゃええ奥さん捕まえたやん!なんでそんなにうまいこと「養育」されとんねん。そら、生活能力は確かにアレやけど、仕事の過集中でハイスコア叩き出してる...

    • ブクマカは喜ぶが増田は喜ばないタイプの話だ

    • いいご夫婦だな 妻さんの言うことをよく聞いてこれからもいい子でな

    • ぼくも飼われたいです

    • 昔臭くてスーツも破れてるぐらいの人(仕事もそんなにできない)居て、かつては通用したんだろうけど(教授、匂いますよ。最後に風呂入ったのいつだったっけ?)、いつの間にか居...

    • いいね、こうなりたい人生だった…。 お幸せに。

      • こうなりたかった人生の創作日記で憂さ晴らしするのが匿名ネットの正しい使い方なんだけど

    • 家事代行のがコスパいいぞ

    • 自分の事夫って言うか?寄生してるだけの女が書いてそう

    • エエヤンエエヤン 奥さんにも言葉でいっぱい伝えろ

    • 能力あるADHD持ちには理解のある奥さんがいてええなあという話

    • うちも似たようなものだった 独身時代は部屋は汚いし顔は整っていないし清潔感は無いし服には気を使わないし生活リズムも食生活も無茶苦茶 話す内容もひねくれた皮肉的な内容や後...

    • うちは夫年収1200万円、私年収500万円で夫のほうが仕事忙しい&生活力ある。 私はADHDで仕事はかろうじてできてるけど、仕事してるだけで疲れるから家帰って家事できないし、もし専業...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん