2019年、最初の衝撃がここに! ──鬼才集団・King Gnuによって突きつけられる革命的J-POP

左から常田大希(Gt&Vo)、勢喜遊(Drs&Sampler)、井口理(Vo&Key)、新井和輝(Ba)
ロック・シーン、そしてJ-POPのフィールドにおけるブライテスト・ホープ、King Gnuがメジャー・デビュー作となるセカンド・アルバム『Sympa』をリリース。2017年にリリースしたファースト・アルバム『Tokyo Rendez-Vous』でシーンに衝撃を与え、始動から1年あまりで急速にさまざまなフィールドでその名を轟かせることになった彼ら。ネオソウル / R&B、ベース・ミュージック、さらにストリングスまでをも飲み込んだ独自のサウンドをJ-POPとして落とし込むKing Gnuのクリエイティヴィティに、メンバー・インタヴューで迫る。2019年最初の大注目作、お聞き逃しのないように。
セカンド・アルバムをハイレゾ・リリース
INTERVIEW : King Gnu

インタヴュー : 飯田仁一郎
文&構成 : 鈴木雄希
編集補助 : 千田祥子
写真 :鳥居洋介
この1年の活動の歩み『Sympa』
──今回リリースされる『Sympa』を作る上で軸となった曲はありますか?
常田大希(Gt&Vo / 以下、常田) : 「Flash!!!」がベースにありますね。今回はアルバムを通して、姿勢としても音楽としても「普通の邦楽ではないけどJ-POPではある」というバランスを見定めて作っていきました。
──「Flash!!!」が出来上がって以降、どのように楽曲ができていったのでしょうか。
常田 : ファースト・アルバム(『Tokyo Rendez-Vous』)をリリースしたあと、ワンマン・ライヴもどんどん増えていったんだけど、ワンマン・ライヴをするほどの曲数がないという状況になってしまって。そのなかで徐々にできていったのが、今作の曲たちですね。なので、この1年の活動の歩みという面が大きいですね。
──自分たちでは「King GnuはJ-POPである」と思っているんですか?
常田 : めっちゃ思っていますね。

──なるほど。でも、King Gnuが思っているJ-POPって、歌謡曲というワケではないですよね?
常田 : ん〜。でも売れている曲を見てみると、まぁ歌謡曲ですよね。King Gnuにおいては、歌謡曲ともしっかりと向き合っていくことが大事だと感じていて。でもただ歌謡曲と向き合うだけだとおもしろくないので、歌謡曲と他のジャンルを接続させていきたいという思いもありますね。
──かっこいい音楽として歌謡曲を昇華させるのって、とても難しいことだと思うんです。ただ、King Gnuの場合はJ-POPではありつつも、すごくかっこよくサウンドを落とし込んでいると思っていて。その部分で、King Gnuなりのキー・ポイントはどこでしょうか。
常田 : J-POPのアレンジがいちばん難しいんですよ。逆にJ-POPっぽくないものは案外ストレートにできるんですよね。J-POPって、普通にやってしまえば普通にやれてしまうんですけど、その部分をバックボーンと繋げていくのがすごい難しい。King Gnuは、そのバランスの探り方という部分ですごい独特だなと思うし、そのバランス感においてはしっかりトライしていきたいと思っています。
──そのトライというのは、どういった部分でできていますか。
常田 : 各々のプレイヤーシップからできている曲もあるし、「The hole」のように音響で魅せるようにトライした曲もあるので、本当に曲によってバラバラですね。
メンバーのプレイヤーシップによって生まれるサウンドとは
──なるほど。このバンドではどのように曲を作り上げていくのでしょうか。
常田 : 基本的には曲と詞を俺が作って持っていきます。それをバンド・メンバーが各々で考えながら曲を調理していく感じですね。
──ベースやキーボードのアレンジなどは、それそれのメンバーが考えている?
常田 : 曲を渡した段階で、曲に直結するようなリフを俺から提示することもあるけど、基本的にはメンバーに任せていますね。なのでかなりメンバーの自由度は高いと思います。
──新井さんは、常田さんが持ってきた曲をさらにKing Gnuっぽくするためにどんなことをしていますか?
新井和輝(Ba / 以下、新井) : ベースでいうと、よほど意図がない限り生のベースの音は使わないですね。King Gnuの音楽として“いいところ”を突き詰めていった結果、自然とそのようなアレンジになる感じがあって。

常田 : King Gnuは、いわゆるバンド・ミュージックとは違った音色を求めているので、生のベースというよりもシンセベース寄りになるんですね。打ち込みものにローの音が負けないようにしたいから、ドラムでもベースでも基本的に生音をそのまま出すことはないですね。
勢喜遊(Drs&Sampler / 以下、勢喜) : ドラムもサンプルをつかったりと、サウンド面で細工をしています。
新井 : ライヴでも基本的にワウやオクターバーをかけつつ、たまに歪ませる感じですね。
──新井さんはもともとジャズ・プレイヤーですよね。ジャズというと生音で演奏することがプレイヤーシップのひとつでもあるのかなと思っていて。その部分で、生音の演奏があまりないKing Gnuでのプレイにストレスはありませんか?
新井 : ジャズをやっているときは、弦を弾く右手を使って、いかにいい音でニュアンスを出すことができるか、というフィールドにいたんです。このバンドに入ってエフェクティヴなサウンドを使いはじめたときにも、いままでやってきたことは絶対に生かされていると感じていますね。フレーズやニュアンス、グルーヴなども、もともとやっていたフィールドから持ってきているものもあるので。なので、ストレスや違和感というよりも、そのフィールドにあったものをどこまでKing Gnuに落とし込めるか楽しんでいる感じです。
常田 : そもそもKing Gnuは、バンド編成ではあるけど、バンドの音色にこだわらないはじまり方をしていて。ファースト・アルバムでも、(新井)和輝がベースを弾かずに、シンセベースを使うこともあったし。それは、なんとなくエレキ・ベースがかっこいいと思えない時代があったことが影響しているかもしれないですね。和輝もそう思っている感じはあったと思う。
──なんでエレキ・ベースをかっこいいと思えなかったんですか?
常田 : 音源で聴いたときのエレキ・ベースの音ってすごく弱いんですよ。あとは、ロバート・グラスパーのバンドのベーシスト、デリック・ホッジなんかは、完全にハイを切ったベースを弾いていて。ヒップホップの影響でそういった音色が流行ってきた中でおれたちも育ってきたので、自然とそういう音を求める感じはあるのかなと。
──ロバート・グラスパーなどの“新しいジャズ”から受けた影響は大きい?
常田 : サウンド面ではめちゃめちゃでかいですね。
新井 : ロバート・グラスパーは高校1年のときから聴いているし、僕らはその“新しいジャズ”を聴いて育ったので、やっぱりそこがルーツになっていますね。
──なるほど、おもしろい! 勢喜さんは、ドラマーとしてKing Gnuのサウンドに落とし込むときに意識していることはありますか?
勢喜 : 意外とそんなに考えていないですね。
常田 : サンプルで出せる音にしてほしいので、(勢喜)遊に注文することは、手グセを減らすことだったりゴーストノートをやめることだったりですね。肉体的でデカイ叩き方というか、デカイ会場でもしっかりとやれるような叩き方をしてほしくて。このバンドとしてはそういうビートを目指しています。
──勢喜さんはどんな音楽に影響を受けたんですか?
勢喜 : 高校のときはレッド・ホット・チリ・ペッパーズがめちゃくちゃ好きでしたね。
──それこそ肉体派のドラムだ。King Gnuに入ってからは、よりサンプラー的なドラムを意識しているんですか?
勢喜 : どうなんですかねぇ(笑)。僕はセッション上がりなので、その場の流れに身を任せてあまり何も考えず叩くことが多くて。ただ、そればっかりやっていると、フレーズにならずに音楽っぽくなくなってしまうので、そうならないように気をつけていますね。

──井口さんはヴォーカリストとして、King Gnuのサウンドをどのように表現しているのでしょう。
常田 : 基本的には俺がメインの歌を仮で入れて、(井口)理に投げつつ擦り合わせていきますね。「Slumberland」なんかは、声のバラエティを出すために理の声を指定しましたけど。
井口理(Vo&Key / 以下、井口) : リズム隊とは違う要求の仕方というか、「ちょっと暑苦しいな」とか「ちょっと抜いたほうがいいな」みたいな感じで、ニュアンスでディレクションが入ることが多いですね。
常田 : 今作は1枚目よりも歌謡曲っぽい曲が増えているんですが、理はそういうところにストロング・ポイントを持っているシンガーなので、今回は割とスムーズに進むことが多かったですね。昔よりも、理のなかで自然な歌い回しができているのかな、と。
──その“自然な歌い回し”とはどういうもの?
常田 : 個人的に、理は歌謡曲のシンガーだと思っていて。そういう強みをもっと出してもいいのかなと。
King Gnuがつくりだす1対1の世界観
──常田さんが思う“歌謡曲”のシンガーとは?
常田 : 井上陽水とか玉置浩二かな。俺も理も共通してあの世代の歌謡曲が好きですね。個人的に、あの世代の歌謡曲は、歌詞や声などそれぞれが表現として強いと思っていて。
──なるほど。井口さんはどのような音楽を聴いてきたんですか?
井口 : 僕は洋楽とかをぜんぜん聴いてこなくて、本当に一般的なものしか聴いてこなかったんですよね。ただ、(常田)大希が作る曲は個人的にも馴染みがある気がして、J-POPだなあとすごく思います。
常田 : 理のバックボーンがJ-POPなので、洋楽的な歌い回しよりも、日本の歌謡曲的な歌い方の方が腑に落ちるんですよね。
井口 : そもそも「King GnuとしてJ-POPを表現したい」というところで、僕はこのバンドに誘ってもらったんです。なので僕の役目としては、King Gnuの音楽をJ-POPとして聴かせることだと思っています。

──King GnuはJ-POPをするために結成されたんですね。
常田 : そうですね。まずこのバンドの基本のコンセプトとして「日本でデカくなること」があって。どうしてもオルタナティヴなものや海外のインディー・シーン的なものをやっていると、日本の音楽シーンで大きくなることが難しい。それを考えたときに、一般のリスナーにも届き得るポテンシャルを持っている理のような歌声が必要だったんですよね。
──なるほど。King Gnuって、レコーディングはどのようにしているんですか?
常田 : 基本的にオーバー・ダブ・スタイルです。先に録ったドラムのうえに、ギターやベースを重ねていきますね。
──King Gnuの楽曲だとトラック数もかなり多くなりそう……。
常田 : どの曲も70トラック以下になることはないですね。
勢喜 : えげつないですね(笑)。
──エンジニアさんは大変だ(笑)。レコーディング期間はどれくらいだったんですか?
常田 : 楽曲制作はだいぶ前からやっていたけど、レコーディングは1ヶ月くらいかな。

──今作には「Sympa」と名付けられたインタールードが4曲収録されていますよね。こういったものも含めて、アルバムとしてどのような世界観のもと作られたのでしょうか。
常田 : “シンパシー”を意識して作りました。インタールードでも、人と人が繋がる波形を表現するために電子ノイズを取り入れてみたりして、その世界観を作りあげていきましたね。アルバムの曲が出揃ったときに、インタールードを含めて、どのようにきれいに繋げていくかを意識しました。
──常田さんが思う「かっこいいアルバム」の定義ってあるんですか?
常田 : 今作で言うと、シングル・カットの寄せ集めとしてのアルバムという側面もありつつ、トータルでみたときにひとつ共通しているものも感じられるようなアルバムだと思っていて。シングルとしてではなくてアルバムとしてリリースしているので、単曲だけの楽しみ方だけでなく、アルバムとしての楽しみ方も提示する姿勢は見せていきたいと常々思っています。
──なるほど。では、今作のタイトルでもある『Sympa』がそのキーワードでもある?
常田 : そうですね。この『Sympa』は、“シンパシー”を意味するものでもあり、同調者や支持者を意味する“シンパ”でもあって。
──それは、King Gnuのシンパが増えていってほしいという考えから?
常田 : そうですね。ただ、あくまでもKing Gnuの楽曲では「あなたとわたし」という1対1の世界観を大事にしていて。そこからできた“ひとりひとりとの結びつき”をどんどん増やしていくことで、動物のヌーのように群れを作って、バンドが大きくなっていけたらいいですね。

──実際King Gnuはすごい勢いで盛り上がっています。自分たち的にはその状況をどう捉えているんですか?
常田 : 赤坂(東京マイナビBLITZ赤坂)でのワンマン・ライヴのとき、理は感動して泣いてたよね。
井口 : あれは嘘泣きです(笑)。エンターテインメントです(笑)。
──(笑) つまり、いまの状況も「こんなもんでしょ」という感じですか?
常田 : そうですね。やっぱりこのグループは、デカくなってなんぼみたいなところがあるので、いまの状況に対して特に驚きはないですね。
──結成した時から「デカくなる」ということを意識的に考えていた?
常田 : そうですね。伝えたいことをわかりやすく伝えようとする意識は強いです。バンドを大きくするために人と理解し合って、人を巻き込んでいってなんぼって感じはありますね。それは意図的にやっている感じもあります。
──デカくなることによって、どんな状況になればいいと思っていますか?
常田 : 単純に金を稼ぎたいということはまちがいなくあって。いまの現状として、基本的にJ-POP以外で金を稼いでいるミュージシャンがほぼいないじゃないですか。ただ、個人的にはそこを変えたいし、もっと文化的なものを発信できたらなと思っていて。それを自由にやっていくために俺らがデカくなっていく必要がある。そういう意味で、King Gnuは最重要プロジェクトですね。
──King GnuはJ-POPでありつつも、かなり音楽的にもおもしろいことをしています。
常田 : 活動をはじめたときから、周りを気にせずに、タブーであることをやる度胸が必要だと思っていて。周りが敬遠しがちな価値観やサウンドなども、もっと広いところでアートにすればいいと思っていたんです。King Gnuとしても、個人のアーティストとしても振り切って自由にやっていけば、活動全体を見たときにもっと楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。

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ファースト・アルバム『Tokyo Rendez-Vous』も絶賛配信中!
LIVE SCHEDULE
King Gnu One-Man Live Tour 2019 “Sympa”
2019年3月03日(日)東京都 新木場STUDIO COAST
2019年3月07日(木)愛知県 DIAMOND HALL
2019年3月09日(土)福岡県 DRUM LOGOS
2019年3月17日(日)大阪府 BIGCAT
2019年3月18日(月)大阪府 BIGCAT
2019年3月21日(木・祝)香川県 高松MONSTER
2019年3月22日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
2019年3月30日(土)北海道 cube garden
2019年3月31日(日)北海道 cube garden
2019年4月05日(金)宮城県 Rensa
2019年4月12日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
【詳しいライヴ情報はこちら】
http://kinggnu.jp/live
PROFILE
King Gnu (キングヌー)

東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。
その後、メンバー・チェンジを経て、常田大希(Gt.Vo.)、勢喜遊(Drs.Sampler)、新井和輝(Ba.)、井口理(Vo.Key.)の4名体制へ。 〈SXSW2017〉の《Japan Nite US Tour 2017》出演。
2017年4月26日、バンド名をKing Gnuに改名し新たなスタートをきった。
【公式HP】
http://kinggnu.jp
【公式ツイッター】
https://twitter.com/KingGnu_JP