結成当初から振り返る、泥だらけの道を駆け抜けた日々──BiSH解散直前ロング・インタヴュー!

結成当初から、BiSHの取材を行ってきたOTOTOY。そんなインタヴューも今回が最後ということで、特別にメンバー全員を招集。活動をはじめた初期の頃から現在までのことを振り返ってもらいました。彼女たちはどれだけ泥だらけの道のりを駆け抜けてきたのか。たっぷり語ってもらいました!
BiSH、解散前ラストシングル
INTERVIEW : BiSH

いつもと違って全員インタビューだし、ラスト・インタビューだし、正直気負ってしまってたのだけど、そのことを察してか、いつも以上にフランクに喋ってくれて、終始笑いが溢れ、聞きたいあの頃の話もできて、「あーなんてこの人たちは成長したんだろう!」と改めて感激してしまった。107回の想いは(「BiSH~Rock’n Roll Swindle~を終えて…」)に書き下ろしたけれど、とにかくこの人たちに出会えて良かったな... ほんとそう思う。彼女たちがBiSHを語りに来なくなったOTOTOYの会議室は、少しぽっかり穴が空いたように今は感じています。
インタヴュー : 飯田仁一郎
文 : 西田健
写真 : 大橋祐希
公園で自分たちの影を見て練習してた
──ラストインタヴューになりました。本当に今までありがとうございました。BiSHの最初のオーディションは、ここOTOTOYの会議室を使って行われました。初期メンバーのみなさんはどういう気持ちで面接を受けにきたのかを覚えていますか?
モモコグミカンパニー(以下、モモコ):当時は、アイドルのオーディションを受けている子を見たいと思っていたんです。そこで、新宿の書店でBiSHの文字が目に入って、ここならいけるかなと。当時は旧BiSのことも渡辺さんや松隈さんのことも全然知らなかったんです。予備知識なしで受けにきたのを覚えています。
──かなりフラッと面接を受けに来た印象がありますよ。
モモコ:本当にそのときはフラッときたんですが、渡辺さんに出会ってから調べまくったんです。そして加入するときは腹を決めていました。
──当初は「握手会はちょっと…」とか言っていた気がします。
モモコ:あれはふざけて言っていたんですよ。あまのじゃくな気質をキャラとして全面に出したいと思っていたんです。
──アイナさんはオーディションを受けるときにどんなことを思っていましたか?
アイナ・ジ・エンド(以下、アイナ):私はここに落ちたら大阪に帰ろうと思っていたので、頑張りすぎちゃった記憶があります。長めに歌っちゃいましたし、自分が踊ったこともあまり覚えてない…。
セントチヒロ・チッチ(以下、チッチ):渡辺さんが「ブレイクダンスみたいなやつを踊っていた」って言っていた気がする。
ハシヤスメ・アツコ (以下、ハシヤスメ):それ映像に残っていないの?
──ゾンビのようなダンスだった記憶があります(笑)。アイナさんは「ビッグになるぞ」みたいな思いはあったんですか?
アイナ:BiSHに入る前にやっていた音楽活動では、自分たちのPCで曲をCD-Rに焼いて手売りしたり、チラシを一ヶ月配り続けて箱を埋めていたりしていたんです。だからショップに自分たちのCDが並ぶことやワンマンライヴをすること自体、ひとつの夢だったんですよ。デヴューしてすぐに夢は叶っちゃったんですけど、すごく大変でした。ついていくのに必死だったので、当時はあまり深く考えていなかったです。
──チッチさんは受かってから皆と顔合わせをしたとき、どう思いましたか?
チッチ:初期の頃の事務所は、すごく小さなワンルームだったんですよ。部屋の真ん中に全員座っていたんですけど、アイナがすごく短いデニムにフード付きのパーカーを着て、モコモコのリュックを背負っていたんです。そのとき「この子はギャルだ!」と思いました。でもアイナはいまと同じように明るかったです。
アイナ:ダンサーだったので…。
チッチ:あとはよく目が合うちっちゃい人(モモコ)もいるし。当時は他にもハグ・ミィとユカコ(ラブデラックス)もいましたし、いろんな子がいるなと思っていました。
──初期メンバーのユカコさんはどんな人でしたか?
チッチ:不思議な人だったと思います。
モモコ:私が小説を出したときに、初回限定の購入者特典でハガキを送ってくれた方に返信を出すという企画があって。そのなかにユカコからのハガキもあったんですよ。近況が書いてあって嬉しかったですね。
チッチ:モモコは唯一、ユカコが辞めるのを止めようとしていたんですよ。だから2人の関係は特別だなと思います。
──良い話ですね。ハグ・ミィさんとは、脱退したあと連絡をとったりしているんですか?
チッチ:そういえば、ハグ・ミィが辞めたあとに1回集まって鍋に行ったよね。
アイナ:行った行った!
モモコ:アユニが入る前はチッチが妹担当で、ハグ・ミィはお姉ちゃんだったので、いつも一緒にいた覚えがあります。

──そして2015年にはハシヤスメさんとリンリンさんが加入します。加入当時の初期メンバーの印象はどうでしたか?
リンリン:オーディションで初めて初期メンバーを見たんですよ。モモコさんとハグ・ミィが怖かったです。
──メンバーとはすぐ打ち解けられたんですか?
リンリン:しばらくは怖かったですね。でもチッチは優しかったです。アイナ象は、2回目くらいの練習後に信号待ちをしていたとき、「練習のときは怖いかもしれへんけど、本当は優しいねん」と言ってくれて。そこから練習以外では喋れるようになりました。
チッチ:当時はやることがいっぱいあったから大変だったんだよね。
アイナ:本当はやりたくなかったけど、メンバーを半分に分けてダンスを見せ合いっこしていたんですよ。私も振り付けを考えて人に教えるということに慣れていないし。みんなも振りを覚えるのに必死だったので、練習自体が試行錯誤の日々でした。
チッチ:私、BiSHに入る前にやっていたグループでも練習ばかりさせられてきたんですけど、メニューや時間帯が違ったのでBiSHの方が大変でしたし、忙しさが桁違いでした。でもアイナは私たちの意見も取り入れてくれるので、楽しかったし良かったと思います。
ハシヤスメ:当時は深夜練も結構したんですよね。それが大変でした。
アイナ:スタジオを借りて練習してたんですけど、夜中0時から朝6時の時間帯が1番安かったんですよね。あ、いま思い出したんですけど、あっちゃんは「脳細胞が死ぬからヘドバンは禁止」って誰かに言われたみたいで、初期の頃はあまりやっていなかったです(笑)。
ハシヤスメ:「ヘドバンは危険」っていうじゃないですか。はじめてヘドバンをしたとき、頭がフワフワして「これは危ない!」と思ったんですよ。メガネもあったので、ヘドバンの習得までに時間がかかりましたね。
アイナ:いまはWACKにスタジオがあるからまだいいんですけど、私たちは公園で練習をすることもあったんですよ。
チッチ:ハシヤスメとリンリンが入る前は、公園で鏡じゃなくて自分たちの影を見て練習してたよね。
アイナ:“MONSTERS”とかは、確か公園で振り入れしてた気がする。
モモコ:当時は練習がきつくて、「本当に勘弁してくれ」と思っていました。私は、アイナとは先生と生徒の関係みたいな感じだったんですよ。初期の頃は、練習中アイナのことが怖くて、心から打ち解けられていなかったです。
アイナ:当時は怖かったと思いますね。でも2015年あたりは、「みんなみたいに普通の会話がしたかったけど、ここでワイワイしたら説得力がなくなる」と思っていたりして、寂しかったです。嫌われ役に回りきれていなかったですね。
チッチ:私はアイナと同じ時期に入ったので、すごくやってくれているなと思っていました。怖いという感情はなかったですよ。
ハシヤスメ:私も怖いというより、先生としての厳しさを感じました。そのくらいの厳しさがあった方が個人的にはよかったですね。
